いま辛い人へ ー“話す”ことの重要性ー
ー もし、ある苦痛な出来事を意識に浮上させることができれば、その力はほんの少し弱まる。さらに、別の基準枠を使ってその出来事について考えられるようになれば、その力はさらに弱まる。ー〈Hope & Resiliency 161p〉
ミルトン・H・エリクソン(1901-1980)という催眠療法の達人と呼ばれている方を研究した書籍「ミルトン・エリクソン心理療法〈レジリエンス〉を育てる」の中に出てくる一節です。
自分自身が体験したことですが、カウンセリングに通うと辛いことや悩んでいることをカウンセラーに打ち明けます。
すると何が起きるかというと、話した段階でめちゃくちゃラクになるという体験が起こります。
そして次に何が起こるかというと、カウンセラーという自分が抱えている悩みや環境とは一切関係のない人からの知見を受け取ることによって、自分自身の思い込みから解放される上に、新たな視点を得ることができるのです。
そうすることによって、その出来事の意味合いが大きく、いや、まったく違うものへと変わっていくのです。
今回は、自分の体験を誰かに“話す”ということの重要性についてまとめていきますので、悩みを抱えている方は是非ご覧ください。
◆この記事の”まとめ”は【341文字】で1分未満で読むことができます◆
話すことで得られること
先に結論から書いておくと、話すことで得られるものは
◎ストレスから解放される
◎新たな視点を得られる
◎新たな能力の発見
ひとまずこの三つは得られます。特に悩んでいたり困っている方は、一番最初の『ストレスから解放される』が魅力的なのではないでしょうか?自分の体験談をもとに書いていきます。
◎ストレスから解放される
『てっきり自分の問題だと思ってました。』
ボクが一時的に、姉夫婦の家に居候していた時のお話です。
義兄がボクの態度が気に食わない、とモノに当たり散らし毎月のように激怒していました。自分も姉も同居していた母も追い詰められていたころ、もう我々にはどうしようもない。と、まず自分がカウンセリングで話を聞いてもらう機会を作りました。
今起きていることと、その経緯や自分の思いと相手への考察等を一通り話した後に、話を聞いてくれている人から返ってきた言葉は予想外のことでした。
『それはアナタの問題ではなく、彼の問題です。』
そう言われたボクはあまりの驚きに目をひん剥いて「え!そうなんですか!」と驚いた記憶があります。
義兄側の話を聞いていないという前提をお互いに理解したまま話を聞くと、明らかに義兄に問題(当時、精神科に通院中で休職中)がある。そして、アナタ(ボク)の話を聞く限りでは、アナタは何の問題もなく普通に過ごしているだけ。と言われたわけです。
このたった1時間ほどのやり取りでどれほど救われたでしょう。しかも、自分自身の能力にまで言及していただき、このカウンセリング後の生活に大きな変化が生まれました。
自分に問題があるという自責の感情から、実はそうでもないという客観的な意見でストレスから解放されたあの感覚は今でも思い出されます。
◎新たな視点を得られる
『ただ、義兄さんは間違いなく好意的です。』
カウンセリングで話をする中で言われたことです。
義兄はボクに対して好意的であるが、その表現方法がねじれているようです。というカウンセラーにボクは同意をしました。
出来事だけを捉えると、ボク自身が被害者で義兄が加害者になり、悪者として捉えられてもおかしくはなかったでしょう。
ですが、このようにハチャメチャな対応の裏には好意的な思いが隠れていますね。という新たな捉え方を提示してくださいました。
悩んでいる最中って「何がダメなんだろうか?」だったり「どうすればいいのか?」という視点に立ち続けることが多いのかなと思います。
一見すると、解決に前向きに思えますがさらに捉え方を変えると問題の渦中に居続けている状態なんです。頭の中がそれでいっぱいになっているような状態ですね。
これではなかなか突破口が見つからなかったりストレスに縛られるままとなるかもしれません。そこから脱出することを手助けするのが、新たな視点なのです。
ただ、好意的であるとわかっても苦手なんですけどね (笑)
◎新たな能力の発見
『俯瞰できるようになりました。』
能力の発見っていうのは客観的に見てもらうことが一番早いのかなって思います。というのも、能力を発揮している人からすると“それが当たり前”なので、気づかない可能性がとても高いのです。
ボクは、カウンセリングを受ける前に置かれている状況を自分なりに分析していました。そして、カウンセリングで話す際に注意しなければいけないことを知っていたので、それを守りながらありのままを伝えることを意識していたのです。
自分はこう思っている。姉や母はこういう状態で、義兄はこういう状態。そうなると、義兄はこう思うのは自然なことだし理解もできる。がしかし!!!といった具合です。
これらをなるべくボク自身のバイアス(独断や偏見)が、極力少なくなるように伝えていると、カウンセラーの方が「大変な状況にいるにもかかわらずそれだけ分析できるのはすごいことですよ」と言われたんですが、自分にはごく自然なことだったわけです。
そして、そのことについてもう少しフィードバックを受けた結果、なんとまったく関係のない仕事がものすごくやりやすくなったのです。おかげで昇進しました (笑)
このように、第三者に話すことで得られるものはかなり大きなものなんです。
“話す”ことも癒しへのステップ
エリック・クラプトンの『Tears in heaven』
エリック・クラプトンというギタリストがいるんですが、その方の代表曲の一つに「Tears In Heaven」があります。
この曲は、エリック・クラプトンの息子さんが事故死してしまったことを受けて作曲したそうですが、2003年あたりにライブの演奏リストから外すことにしたそうです。
AP通信のインタビューによると「曲のテーマである失った気持ちを感じることができなくなった。作ったときにあった感情が消えた。今はあのときとは違う人生を送っている」と答えたそうです。
これは何を意味するかというと、彼はこの曲を通して悲しい出来事を繰り返し表現し、追体験することで徐々に辛い体験を乗り越えたんだなぁと個人的には思うのです。
ー 人間が生きていく上で必要のことのひとつは、苦痛なことを安全な環境で繰り返し体験することだ ー 〈Milton H Erickson〉
冒頭の書籍のモデルとなったミルトン・H・エリクソンの言葉です。
音楽という安全な環境で、亡き息子さんへの思いやあの日の出来事を繰り返し体験することによって、計り知れない悲しみを乗り越え約11年かけて「もう演奏する必要がない」というところまでたどり着いたわけです。
ボク自身、こうして note に不登校についての体験を表現することで、癒しのプロセスを辿っているんだろうなと感じることがあります。
渦中の自分や、まだ自分に向き合えていなかったころにはできないことですから。
ただし、相手は選びましょう
『信頼のおける人がいいと思います。』
以上で話すことのメリットがお伝え出来たかと思いますが、気を付けなければいけないのは “誰に話すのか” ということです。
カウンセラーに話す場合は守秘義務があるので安心ですが、カウンセラーに抵抗があるよっていう方は身近な人に話すことになると思います。
その場合は、その場で話したことが他に漏れてしまう可能性も考慮しなければなりません。万が一苦手な人の相談をしてそれが本人に伝わってしまったら余計に問題やストレスを抱えることになりかねませんし、相談相手への信頼関係にもつながりますよね。
幸い、今はコロナ禍でオンラインへの対応がとても増えてきました。これを利用してオンラインのカウンセリングを受けることも可能ですから、正直そちらをオススメします。
まとめ
直接不登校のことは書きませんでしたが、不登校で悩んでいるご両親(特に母親)は、世間体の影響からかなかなか悩んでいることや辛いことを話す機会がないようなんです。
ですが、スクールカウンセラーでもいいし不登校の団体にアポを取るでも構いません。一度胸の内を吐き出すってことも大切なのかなって思います。
それではまとめます。
◎話すことで得られるメリット
→誰かに話すことで得られる効果は三つ。
1.ストレスからの解放=問題の渦中から抜け出せる。
2.新たな視点の獲得=自分の思い込みからの解放。
3.新たな能力の発見=自分の“当たり前”が能力かもしれない。
第三者に話すことで、問題が進展するかもしれません。
◎話すことも立派な癒し
→誰かに話すということは、自分の意思や言葉で出来事を体験し表現します。そうすると、少しずつその体験に対して免疫ができるので、つらい体験もちょっとずつ乗り越えられるようになります。
◎話す相手は慎重に
→出来ればオンラインでもいいのでカウンセラーをおすすめします。(守秘義務がある)もし抵抗がある場合は、話した内容が漏れる可能性を踏まえ、慎重に相手を決めるといい結果が生まれるかもしれません。
というわけで今回は以上になります。不登校について母と話す機会を持った時「このこと(不登校)について話せる人や場所が欲しかった」と言っていました。そして「あんたがそういう場所を作ってもいいかもね」とも。
話すことって意外にいい影響を与えるのかもしれませんね。ではまた。
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