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メンバーの才能を開花させるリーダーシップとは⑤(「議論の推進者」としての技法)

前回までは、メンバーの能力を最大限引き出すリーダーの特徴と、人材を惹きつけその才能を最大限に発揮させるためには、アイデアを引き出すには、挑戦するチームを作るには、ということを書きました。

リーダーシップに関してはこの本がすごく分かりやすかったので、こちらを参考にしております。

ちなみに、私にとっての理想のリーダーの1人がワクセル主宰の嶋村吉洋さんです。

増幅型リーダーの5つの習慣
①才能のマグネット:人材を惹きつけ、その才能を最大限に発揮させる
②解放者:最高のアイデアを求める
③挑戦者:難しい課題に挑戦させる
④議論の推進者:議論を通して決定する
⑤投資家:責任を明確にする

今回はその中でも、「議論の推進者:議論を通して決定する」について書いていきます。

●「議論の推進者」としての技法

議論しないで結論を決めるより、結論が出なくても議論するほうがいい。

ジョセフ・ジュベール(フランスのモラリスト)

消耗型リーダーは自分と少人数の側近で意見を固めます。
彼らにはまだ眠っている能力があることや、貢献や挑戦によって能力があがっていくことが理解できていません。
増幅型リーダーはメンバーを議論に巻き込みます。

●あなたは「意思決定者」か「議論の推進者」か

消耗型リーダーは意見を聞く価値のある人は数名しかいないと思い込みます。
しかし増幅型リーダーは全員の頭脳を総動員します。
意思決定者になろうとするのではなく議論を推し進め、誰の意見かではなくどのような意見かに耳を傾けます。

議論を盛り上げるときは、時にはある意見を出した人が、それに反対する立場で今度は発言してみてほしいと伝えてみたり、自分が所属する部門とは別部門の立場で発言することを求めてみるのもありかもしれません。

●議論の推進者の三つの実践

増幅型リーダーは三つの意思決定方法を実践しています。
それは下記の通りです。
①問題の枠組みを示す
②議論を盛り上げる
③「開かれた決定」を徹底する

①問題の枠組みを示す

議論の推進者は、議論の盛り上がりには、始まる前の「お膳立て」が必要であることを心得ています。
その「お膳立て」を下記の様なプロセスで行います。

・質問を定義する
多くの人は目の前にある問題を処理することに追われてしまいがちです。
しかし、リーダーとして大切なことは、正しい課題を認識し、正しい問いをメンバーに投げかけることです。

・「正しいメンバー」でチームを作る
増幅型リーダーは「正しいメンバー」でチームを構成することで質の高い議論を生み出しています。
「正しいメンバー」とは下記のようなメンバーのことです
- 課題に関する情報を提供できる知識や洞察を持った人
- 決定に影響を受ける利害関係者
- 決定の結果を左右するような責任を担う人

・データを求める
増幅型リーダーは、議論のために必要なデータを事前に特定しています。
そして、議論に参加するメンバーには、そのデータを持参するよう事前に周知をします。
なんとなくの意見ではなく、データによる裏付けからくる意見を求めるのです。

・決定方法を示す
議論の推進者はミーティングの前に、なにを論じるべきか、なぜそれが大切なのか、どのように最終決定がなされるかをはっきりと示しています。
- なにを:どの質問に答える必要があるかを明確に示す
- なぜ:議論を必要とする背景に何が起きているかを明らかにし、その重要性もはっきりさせる
- どのように:最初に時間をとって意思決定のプロセスを説明し、自分を含めて役割を決める。そして次の問いに答える
 L 決定までの期間は?
 L 提案をあげるのは誰?
 L 最終的に決定をくだすのは誰?

このように枠組みを定義することで、メンバーは何に取り組む必要があって、自分の役割が何かを認識します。
そのようにすることで議論が推進されるのです。

②議論を盛り上げる

増幅型リーダーは議論を盛り上げます。
議論が盛り上がるポイントは下記の4つです。
・全員参加:質問に説得力と重要性があれば、全員が参加する
・包括的:正しい情報が共有されれば、問題への包括的で集合的な理解が生まれる
・事実に基づく:議論が単なる意見ではなく、事実に深く根付いている
・学び:議論の勝ち負けよりも、そこで学んだことにメンバーが注目する

こうした議論を実現するためには、陰(安全を確保すること)、陽(厳しく突き詰めること)のどちらも大事となります。

陰=安全を確保する
議論が推進されるためには、恐れを取り除く必要があります。
増幅型リーダーは、メンバー自身やメンバーが出してくるアイデアに疑いを抱きません。
全員の意見に耳を傾けることに努力をし、自分の意見は最後に言います。

陽=厳しく突き詰める
増幅型リーダーはなんとなくの意見を元に決断を下しません。
事実を元に意見を交換し合い、できる限り深掘りをします。
すべてに意見が出尽くしたというところで、全員で決断を行うということをします。

メンバーの才能を開花させる技法

③「開かれた決定」を徹底する

増幅型リーダーは健全な意思決定を目指します。
それは次の3つの方法によってなされます。

・意思決定プロセスを改めて明確にする
増幅型リーダーは誰がいつ最終決定をくだすかを明確にチームに示します。
そのためメンバーは自分たちのアイデアや努力が最終的にどこに帰結するかが分かるので、疑心暗鬼になることがありません。

・恐れず決断をくだす
増幅型リーダーは全員から得たアイデアを活用はしますが、合意を得ることが目的ではありません。
最終的に責任を持って決断をくだすのがリーダーの役割です。

・決定内容とその方法を知らせる
徹底的に議論することの利点は、行動に移す際にメンバーからの支援と情熱が生まれることにあります。
議論を通して理解を深め、自分たちが決めた決断だと思えることで、解決に向けてのエネルギーレベルが高くなるのです。

●消耗型リーダーは議論を避ける

消耗型リーダーは、メンバーの能力を引き出すよりも、自分の主観的な考えによって決定をくだしがちです。
消耗型リーダーの議論には以下の3つの特徴があります。

・あら探しをする
消耗型リーダーはメンバーが解決するために問題を整理するのではなく、あら探しをします。
そのため、メンバーから意見が上がってくることはなくなります。

・議論を支配する
消耗型リーダーは議論の際に自分の考えばかりを話します。

・決定を押し付ける
消耗型リーダーは決定を促すのではなく、自分で決めた意見を押し付けます。

消耗型リーダーのやり方は一見スピーディーに見えますが、その意見に賛同できない優秀な人材が離れていってしまうのです。

●議論を盛り上げることの真意

増幅型リーダーが議論を推進するのはメンバーを良い気持ちにしたい訳ではありません。
全員の知識や能力を引き出し、より良い決定をするために議論を推進します。
では、議論の推進者になるためにはどうすればよいのでしょうか?

メンバーの才能を開花させる技法

●議論の推進者になるために

議論の推進者になるためには、リーダーが自分の役割を別の視点で見るようになることが必要です。
そのために効果的な「共通の質問」というテクニックがあります。
それは下記のようなものです。
①議論のリーダーに許されるのは質問だけ。答えを与えるのも、自分の解釈を述べるのもダメ。生徒がリーダーの答えに頼らないようにするためだ。
②生徒は自分の意見を裏付ける根拠を示すこと。たとえば、ジャックが三度目に豆の木に登ったのは負けず嫌いだったからと言いたいなら、本のなかからその意見の根拠となる文章を見つける必要がある。
③全員が参加しなければならない。リーダーは、全員に話す時間が与えられるよう気を配る。押しの強い人を抑えたり、臆病な人に積極的に発言をさせるのもリーダーの役割だ。

効果的な議論を生み出すには方程式があります。

●まとめ

「意思決定者」から「議論の推進者」へ

意思決定者は少人数の内側の人間で効率よく結論を出すが、組織の大部分を置き去りにするため、決定の健全性が疑われ、実行にいたらない。
議論の推進者は人々を議論に引き入れ、それがよりよい決定につながり、理解と実行が進む。

議論の推進者の三つの実践

①問題の枠組みを示す
 ・質問を定義する
 ・「正しいメンバー」でチームを作る
 ・決定の方法を示す
②議論を盛り上げる
 ・安全を確保する
 ・厳しく突きつめる
③「開かれた決定」を徹底する
 ・意思決定プロセスを改めて明確にする
 ・恐れず決定をくだす
 ・決定内容とその理由を知らせる

議論の推進者になるために
①厳しい問いを投げかける
②根拠を示させる
③全員を参加させる

意外な発見

①リーダー自身に強い意見があってもいいが、メンバーの意見を受け入れるような議論を促さなければならない。データがカギになる。
②議論の推進者は最後に自分で決定をくだすこともある。彼らは全員の合意にこだわるわけではない。
③徹底的な議論がチームを引き裂くことはない。むしろチームの構築につながり、チームをより強くする。

参考文献:『メンバーの才能を開花させる技法』

吉村先外

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