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【連載】 第1期生の卒業生が語るOISTのこと: 2012~2019

初めまして, 沖縄科学技術大学院大学(OIST)に2012年第1期生として入学し, 2019年に卒業した濱田太陽(ひろあき)です.  私は, 沖縄の近くの奄美大島で生まれ育ち, 早稲田大学を卒業したのちにOISTに進学しました. 2019年に卒業し, 現在は株式会社アラヤ(CEO金井良太)で好奇心や意識に関する研究をしています.

OISTがどのようなものか下の動画で確認してください.

1:20あたりにいる二人の学生のうち一人が私で, もう一人は友人です. 実は, 二人とも卒業のインタビューに出ています (OIST Graduate Story: Hiroaki & OIST Graduate Story: Lena).

OISTの特色は目の前にある青い海のほか充実した研究環境, 優秀な教授陣や, 授業料相当額及び年間約240万円程度(課税対象)を全ての学生にリサーチ・アシスタントシップとして返還不要で少なくとも5年間支給しているところでしょうか. また, そのほか多くの充実したサポートの他 (ジム無料使用可能, 保育施設, 保健施設, メンタルのサポート等), 住居のサポートもあり, 月額2万円程度で寮の部屋を借りることができます (ほとんどの場合, 複数人での同居).

複数人での同居は, 色々な文化や個々人の違いを知る絶好の機会になります. 私は, パレスチナ人, アメリカ人, オランダ人, 最後はエジプト人の学生と一緒に過ごしました. また, 友人たちと過ごした時間(語り合ったり, 一緒に馬鹿騒ぎしたり, 喧嘩したり)はお互いがそれぞれ離れ離れになっても, かけがえのない私の思い出です.

OISTは沖縄振興の一環として計画され, シドニーブレナー初代理事長(2002年にノーベル生理学・医学賞受賞)のもと2005年に独立行政法人沖縄科学技術基盤整備機構が整備されました. そして, 2011年から初代学長ジョナサン・ドーファン学長(元スタンフォード線形加速器センター所長)のもと沖縄科学技術大学院大学として創設されました. ジョナサンと彼のお兄さんデイヴィッドはよく学生に声をかけてくれました. スカイウォークや寮の近くで何度も話したのを覚えています. 

現在は, ピーター・グルース(@gruss_peter, 元Max Plank学術振興協会の会長)のもと, さらなる沖縄への貢献と科学の発展を目指した挑戦をしています.

ピータグルース学長は, OISTの長期的成長と安定を目的として計画を実行しています. 1つは寄付金集めを含めた外部資金の獲得, 2つ目は起業支援でしょうか. ドイツの研究機関にいた時は, 2年間で約400億の寄付金を得たと下の記事には書いてあったりします. 最近では, iTunesの開設に大きく寄与したとされる, 沖縄出身のジェームス比嘉理事の参入も一部の人たちを驚かせました. 

さらに, 2019年には世界の研究機関ランキングで, 論文の成果を機関の規模で正規化した基準で世界第9位になりました. これによってメディアでの露出やSNS上での注目度が高まった気がします. 

もちろん素晴らしいことですが, 大学院のランキングというのは簡単に数値化できるものではなく, 分野によって変わりますし, 大学院生にとって大事なのは研究室ごとの文化であることは明記しておきます.

2012年から入学した友人たちもこの業績に貢献し, 就職していきました. ある友人(悪友)は, 論文を第一著者の一人としてNatureに掲載され, 卒業していきました. 他にもハーバード大学や中国の大学で助教している同級生や, 東京大学や理研, Max PlankやSalk研究所でポスドクしている人, 学術雑誌のエディターになったり, 起業したり, 外資の大企業で働いている友人もいます.

国内外の研究者が集まり活発に共同研究がなされることで, 多くのインパクトのある研究がなされてきました. 例えば, 同期が著者のオヒニトデに関する遺伝的解析や生態研究は, 私がとても好きな研究のうちの一つです. 

毎週のように著名な研究者が訪問し, セミナーが開かれていますし, ワークショップなども活発です. 一流の研究者たちと議論したり, 自分の研究について話すことはとても不安になるようなできごとでしたが, 研究者のトレーニングとして必須だったと思います.

ワークショップとして一番最初期からあるのが, 計算論的神経科学のサマースクールであるOIST Computational Neuroscience Course(OCNC; 元はOkinawa Computational Neuroscience Course) です. 私の指導教員でもある銅谷賢治教授(神経計算ユニット)が, 主催者として最初期から関わっています. 日本の計算論的神経科学の進展に尽力してきた銅谷教授が, OCNSを世界的なサマースクールにしたのも, OISTへの大きな貢献となったと思っています.

OISTの成長を中から眺めてきた人間としては, この成長は一筋縄ではいかなかったと思います. 多くの方々の悩みや苦闘, そういったものを目にしてきました. 

もちろんOISTも変わるべきところがあると思います. しかし, 私たちが入学した時とは比べ物にならないぐらい教育やシステムも変わったように思います. また, 学生たちも積極的に試行錯誤していたと思います. 良い方向に変わるための努力を推奨する環境になっていると思います. 一方で, 日本国内にあるのに日本的でない文化なので, 戸惑う人もいるかもしれません.

ここで, あまり過去のことを語りすぎるのは, 気がひける一方で, 私が受けた恩恵は多分誰よりもたくさんあり, 語らなければならないと思います.

英語も辿々しく多くの点で未熟でしたが, 学生支援セクションの方々, 指導教授, 研究室の人たち, スタッフの方々, 友人たち, 沖縄の方々にもたくさんサポートをいただきました.

その感謝を込めて, この連載を順次更新していきます.

最初は、入試の準備についてです.

なお直接OISTの情報がほしい方はこちらから.

1. 入試の準備のこと: 2020年7月1日(水) 公開

2. 大学院での生活: (準備中)

3. 大学院の最後期: (準備中)

4. 卒業後の生き方: (準備中)

5. 番外編: OISTの初期の頃の話 (準備中)

補助資料:

1. OISTのインスタ. 卒業生の写真が観れる

2. Sydney Brenner初代理事長とJonathan Dorfan元学長のムービー.

3. ピーターグルース学長の経歴まとめ

4. ジェームス比嘉のinterview

5. スタートアップ支援

OISTのEntrepreneur In Residence (客員起業家)である, 仲津氏はOISTのことについてシリコンバレーでの経験などを語りながら分析している.

6. OISTの誕生関連の話.

尾身幸次 名誉博士の功績は大きい.

7. OCNC参加者の記事など.

8. 昔のOISTについて書いた私の記事

9. 有名海外SFドラマのスタートレック(スタートレック ピカード)で沖縄の研究所が出てきたとのOISTのツイート

10. 2000年代に, OISTの他にも世界各国でユニークな大学院や研究所が作られました.

その例として, KAUSTやThe Champalimaud Centre for the Unknownがありますでしょうか.



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