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想像超えたデザインの力 おカネの教室ができるまで㉑

「できるまで」シリーズ3商業出版編の第6回です。総集編その1その2のリンクはこちらから。面倒な方は文末の超ダイジェストをご覧下さい。前回、編集アライとのバトルを予告しましたが、その前にビジュアル面の話をまとめておきます。

想像を超える「ええ感じ」

「おカネの教室」のブックデザインを担当したのは佐藤亜沙美さんだ。リンクをみてもらえば分かるが、超売れっ子デザイナーなうえ、「これからさらにブイブイ言わせまっせ」感がすごい。(なぜか「おカネの教室」はWORKSに入っていない…悲しい…)
編集アライから、「デザインは佐藤さんにお願いする」と連絡をもらい、ウエブで仕事を拝見して、デビュー作でこんな素敵な装丁家に「衣装」を着せてもらえるのに感激したのを覚えている。

実際、出来上がった「おカネの教室」は、黒板をイメージした濃緑のカラーにイラストを配し、書棚で映えるものに仕上がった。「お金の手に入れる6つ方法」も目立つ形で興味を引く。さらに、カバーを取ると、右に福沢諭吉、左の「透かし」部分に三人が並ぶといった遊び心もあちこちにある。この素晴らしい装丁で「ジャケ買い」してもらえるのがヒットの一因だろうと感謝している。

佐藤さんがイラストレーターにウルバノヴィチかなさん(以下、かなさん)を採用してくれたことも、特筆したい大ヒットだった。

サッチョウさんの「寝ぐせ」秘話

かなさんはあれこれ面白いことをやっているクリエーターだ(我が家で一番人気は「ひたすらラーメンを食べる学生」と「ひたすらカレーを食べる女」。短いアニメなので是非ご覧になってください)
ちなみに、旦那さんのマテウシュ・ウルバノヴィチさんもポーランド出身のイラストレーター。映画「君の名は」の背景で有名。「東京店構え」というイラスト集がベストセラーになっているのをご存知の方も多いかもしれない。

(ウルバノヴィチご夫妻のアトリエにお邪魔した時の一枚。マテウシュさんにサインしてもらった「東京店構え」は家宝です)

かなさんにとって、書籍のイラストを手掛けるのは「おカネの教室」が初めてだったという。原稿を読んでとても気に入ってくださったと編集アライ経由で聞いていたのだが、キャラクターのデザイン画がメールで届いたとき、私はそれが社交辞令ではないと確信した

(かなさんの最初期のキャラクター画)

私が驚いたのは、サッチョウさんの寝ぐせだった。
見た瞬間、「これだ! こいつが、サッチョウさんだ!」とイメージが一気に固まった。

実は、サッチョウさんについては、「ちょっとさえないフツーの中学生」というくらいで、作者のなかでも外見の明確なイメージはなかった。「無味・無色」であることが語り手として重要で、あえて色がつかないようにしていた面もあった。
ちなみにカイシュウさんには米バスケ黎明期の名選手ジョージ・マイカンというモデルがいると伝えてあり、ビャッコさんもある程度のイメージはあった。

繰り返すが、この「寝ぐせ」には感服した。スティーブン・キングのフレーズを借りれば、これは「人生に女の子が入ってくる前」の男子だ。私自身、小学校のときはもちろん、中学に入ってもしばらくは寝ぐせも直さず学校に行っていたのを思い出してしまった。
この絵を見た後はもう、サッチョウさんは「こいつしかいない」というほどイメージが固定された。現在書きかけている続編のイメージを膨らませる助けにもなっている。
イラストレーターの洞察力には恐れ入るしかない。

世界を広げてくれるイラストたち

キャラ絵のあとも、佐藤さんとかなさんからは、作中に挿入する扉絵などのラフなどの案が次つぎに届いた。見ているだけで「おカネの教室」の世界が広がっていくようだった。どれも素晴らしくて、選ぶのが大変だった。

(各章扉絵のラフ。数カットの候補から最終案を詰めていった)

(採用から漏れたカット。全部載せたいくらいの出来)

そして最終盤には、ご覧のように各章にワクワクするような扉絵がついた。


佐藤さんのアイデアで扉絵に吹き出しをつけることになり、この宿題にはかなり苦労した。特に悩まされたのが6月と8月だったが、最終的には8月の扉絵は作品のヤマ場を象徴する完璧な出来になったと自負している。
なお、ここではエピローグの扉絵は割愛する。
是非、物語を読み進めてから、ご覧になっていただきたい。特に、ビャッコさんの表情を。

デザイナーの佐藤さんには最後に「これは、やられた」と思わされた。
この、内扉と同じ3人のイラストにつけられたセリフが、それだ。

「またどこかで会いましょう!」

この言葉には「この物語は、まだ語りつくされていないでしょ?」という問いを突き付けられた思いがした。
続編か、マンガ化か、実写化か、どんな形かは分からないけれど、いつか、どこかで3人組に再会できる場を作りたいとは思っている。

最後におまけ。かなさんと私の、世界で1冊のダブルサイン本!
私の吹き出しには「恋は恋でもカネもって来い」という地口が書いてあります(笑)

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「おカネの教室」ができるまでシリーズ、ご愛読ありがとうございます。
最終編のシリーズ3の商業出版編、ボチボチと書いていきますので、ごゆるりとお付き合いください。
次回こそ、前回予告した本づくりを巡る熱いバトル(笑)をお送りする予定です。

乞うご期待!

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