小豆島爆走記① -始まり-
深夜2時。私は独り山を走っていた。
月明りと雨上がりの湿り気だけが
空間を埋める深い深い闇のなかで────。
後方でぶるると車のエンジンが静寂を震わす。
続いてカーライトが私の背を照らし、砂利を弾く発車音。
位置関係はこうだ。
先頭は昼杉。頭にヘッドライト。
駆け足で岩肌を照らしながら闇を裂いて生物を探す。
次点でドライバーのG氏。
私を轢かないように気を付けながら
発車と停止を繰り返す。
最後にS氏。後部座席で眠っている。
賢明な読者の皆様はお気づきだろう。
ヤモリを探しているのだ。
つまり、車を運転しながらヤモリを探すと怒られてしまうので
昼杉が先陣を切り捕まえる。そして専門家G氏に手渡し同定。
種類が分かったら記録に残す。完璧な流れである。
時は遡り、去年の冬。
「オリーブアナアキゾウムシを見に行かないか?」
そう声をかけてきた男はG氏。
\説明しよう!/
オリーブアナアキゾウムシとは!
名前の通りオリーブに穴を開けちゃうゾウムシだ。
害虫として名を馳せているわけだが、
ここまでに壮大な"ドラマ"がある。
前提として彼らオリーブアナアキゾウムシは
日本の固有種である。
でも、オリーブは海外の植物では?
壮大な矛盾を孕んでいるのだ。
彼らは元々、イボタ や ネズミモチ という植物を食べていた
ひっそりと暮らす「名も無きゾウムシ」だった。
そこで海外からオリーブが上陸。
名も無きゾウムシは気付く。
「こんなに美味しいものがあったのか・・・!」と。
彼らの進撃は瞬速だった。
瞬く間にオリーブを食い荒らし、偉い人が言った。
「ヤバい害虫がいる!オリーブアナアキゾウムシって名前にしよう」
「オリーブアナアキゾウムシを見に行かないか?」
G氏の一言で、我々は島に集まったのであった。
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