見出し画像

良い文章を書く人ってどんな人だろう?


 実家の本棚を整理していたら、高校生の時の日記が出てきた。1ページ目には、「文章は伝えたいと思うことがあって初めて書けるものだと思う。どれだけきれいな言葉を知っていても、伝えたいと思う衝動がなければその文章は空っぽだ。だから私は、伝えたいと思うことを持ち続けたい」と書いてあった。

 中2病のようですこし恥ずかしいけれど、あれから10年以上たった今も私はそう思っている。

  記者1年目の時、いじめで自殺した中学生の女の子のお父さんからお話を聞いたことがある。娘さんの写真を前に、なぜ家族思いの娘が死ななくてはならなかったのか、学校はどうしていじめに気づけなかったのかと、震える声でぽつりぽつりと語ってくれた。言葉は少なかったけれど、悔しさや怒り、やるせなさが痛いほど伝わった。話しを聞いてすぐ、いてもたってもいられなくなって、車の中で原稿をいっきに書き上げた。
デスクに原稿を出すと、ほとんど手をいれられないままの原稿が返ってきた。記者になってはじめて、「良い原稿だ」と言葉をもらった。

 あのときの自分の原稿は、決して上手な文章ではなかった。でも、自分が感じたお父さんの怒りや切なさは伝わる記事だったと思う。どんなに言葉が稚拙でも、伝えたいという気持ちの強さと、事実の積み重ねがあれば、読み手のこころを揺さぶる文章になる。逆に言えば、伝えたいことが何もない人の文章は、いくらきれいな言葉で飾っても空っぽだと読者に見透かされる。

 良い文章を書く人は、心の中に大きな感情の渦を持つ人だと思う。記者になって8年、1年目よりも文章を書く技術は少しだけ身についてきた。だからこそ、技術に甘えず、書きたいと思う衝動と、丁寧に事実を聞き取る姿勢を持ち続ける、そんな記者でありたい。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?