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おかしなもの作れないでしょー幸福な食卓

「家族のごはんっておかしなもの作れないでしょ」

 瀬尾まいこ著『幸福な食卓」の一節。訳あって一人暮らしをする母と主人公の佐和子の会話である。

 実家にいるときは母が作る料理はいつも似通って、飽き飽きしていた。思春期も重なって高校生の時にこんなことを母に言ってしまった。

「毎日同じようなものばかり食べて飽きる。レパートリーをもっと増やしてよ」

 でも、一人暮らしを始めて自炊をするようになった今、母の気持ちが冒頭のセリフと重なって理解できる。1人で食べる分には失敗しても自分で食べて完結できるからそれでいい。その分、いろんな料理に挑戦できる。

 それが誰かに食べさせるとなると事情は変わる。美味しいものを食べて欲しいから失敗はしたくない。だからできるだけいつも作っている無難なものになってしまう。

 確かに母が作る料理はどれも美味しいものだった。たまに美味しくないと感じることもあったけど、それはいつも私の機嫌が悪くて私の側に問題があった。多分、母の料理のレパートリーが固まっていたのは冒頭のセリフのように「おかしなものを作れない」そんな気持ちがあったのだろうと思う。

 いつか私も家庭を持って本当の意味での「おかしなものを作れない」を理解できる日が来るといいな。 


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