マガジンのカバー画像

詩の穴

9
歌詞にならなかった詩をのせています。 「王さまの耳はロバの耳」の穴のような詩の墓場。供養して下さい。
運営しているクリエイター

記事一覧

無題

無題

昼過ぎに降り出したひどい雨は夕方前にやんだ
晴れた空の中にぽっかりと拳を突き刺して
穴を開けてみたら虹になった

七色のひかりに乗っかって
吹き飛ばされて煽られて
降り立つ知らないどこかの街で
誰かと握手をしたい

名前を呼ばれた気がして
振り向いてみたら黒い野良猫が
大きなあくびをして丸まって
陽だまりを呼んでいた

せまい世界に生きるわたしたちに
きっと今日も降りそそぐ太陽のような優しさ

もっとみる
無題

無題

くちびるにピンク色をのせた
春風がすこしだけ背中を押して
あなたのとなりまでわたしを走らせた

日が暮れるまでにきっとキスをするふたりは
まだ青い空の下
視線が合う瞬間を避けながら
手探りで恋をしてる

詩の墓場

無題

無題

透き通った冷たい風が
金色の月の上を瞬いて
遠い遠い思い出の
涙のような雪を運んでくるのです

私たちは透明のエレベーターに乗って
上空へと舞い上がり
遥か頭上から
水色の街を見下ろすでしょう

小兎のように揺れる灯りを見て
胸の中にほんのすこしの後悔や
ため息のような安堵
手の届かない憧れを抱くのでしょう

もう誰も訪れることの無い
物語の中の風景を
優しく儚く抱きしめて
私たちは今夜
夢の中で

もっとみる
無題

無題

三月の甘い雪
みちしるべのようにそっと落ちる
眠りからさめた仔うさぎは
あたたかいベッドでまだ夢を見てる

消えないでぬくもり
ささやかな欲望

三日月のようなあなたのくちびる
冷たい雪 ふれてとけた

歌にならない詩がたまってきたのですこしずつ吐き出していこうかと思っています。

無題

無題

びしょぬれの靴底から
冷え冷えと夜が沁み出した
冷たいなって思ってるのが
本当に自分なのか分からない

空の星が落っこちても
たぶんだれも驚きはしないだろう
この街は服を着た風船の
旅人達しか歩いていない

野良犬が吠えてる
ひとりきりで吠えてる

錆びた自転車にまたがって
暗い海まで走ろうか
それともいっそ宙上の
月までロケットを飛ばそうか

交通情報センターからのお知らせは
今日も変わらずどこ

もっとみる
無題

無題

たとえば暗闇のなかに
ぽつんとひとつ光があって
それを出口だと思うか
入口だと思うか

判断はシンプルに
明確な基準と
確固たる信念をもって

ニュアンスとフィーリング
感覚を尖らせた先にある、知性
メンタリティ

歌詞にならない詩を載せています。詩の供養。

無題

無題

長い髪を切りたくなったのは
誰かのせいじゃなくて
水たまりの中で揺れる陽炎
飛び越す影はきっと

日差しの切れ間を探して
たどり着いたビルの屋上で
とっくにぬるいサイダーひとつ
君と飲んで 少し笑って

麦わら帽はどこかに飛んでいった
真っ青な空と入道雲
体ごと心ごと
夏に飲み込まれそう

そのままわたし行方不明

少しずつ長くなる夜
君が時計を見る前に
水たまりの中へはねるビーチサンダル
浮かれ

もっとみる
無題

無題

冬の眩暈
冷たい空気に肌が驚いて
脳は動きを止める

一瞬の暗転
のち白い世界への転進
しらしらと雪は降りゆく

積もるもののなかに見える
あの光はなんだ
停止した秒の奥へと
柔らかく延びる白昼夢

通りすぎるカラスに気をとられて
その時は過ぎてしまった
目を凝らしても
視点は拡散して届かない

けれど私は確かに見たのです
彼方から送られた信号を
緩やかな眩暈のなかで

歌詞にならない詩を載せてい

もっとみる
無題

無題

生きてるものはみな
死に向かって行進してる
足並みはバラバラに
でもたしかな道をひたすらに行進してる

死とはどこにあるのだろうか
わたしの死とみなの死は、
どこか違うところにあるのだろうか

道端に咲く花の枯れる様を見て
わたしは細くちいさく嘆く
わたしの人生の枯れる様を見て
心を痛めるものはあるだろうか

せめて夜は死への行進を彩る花束を

歌詞にならない詩をのせています。詩の供養。