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自分が置かれている環境の異常さに気付いたら、痛みを感じられるようになった。

「こんなに身体がガチガチに張ってたら痛くて立っていられないはずだよ?」

私が身体の硬直具合を指摘されるのは、幼稚園の頃からだが、「立っていられないはずだよ」なんて強く指摘されたのは飲食チェーン勤務をしていた2010年代終わり頃か。

整体師からの言葉だった。

「〇〇さん、ホントに痛くないんですか?」

「ええ、毎日元気に仕事してますよ」

他所へ行っても同じことを言われていた。



飲食チェーンを退職し、子供の頃の骨折を治す手術とリハビリが待っていた頃。

私はスマホで「毒親」について検索して、とある弁護士さんの言葉を見つけた。

「親を大切にしたい、親を助けたい、それは常識的で立派な考えです。
しかし、それは常識的な親を持った場合に限られます。
非常識な親ならば貴方ばかりが譲歩する必要はありません。」

このような旨の文章に涙が出た。

あ…あ………あ…

いいんだ…逃げていいんだ。

このおかしな家から逃げていいんだ。
いや、逃げなくちゃいけないんだ……!!

ボタボタと涙が落ちて、ささくれたフローリングに染み込んだ。


それから、私は手術とリハビリが済み次第夜逃げできるように、内定を取れそうな職場を探り、物件を探し、特売の小型家電などを買っては隠し持ち、こっそり荷造りならぬ荷捨てをして身軽になっていった。

そんなある日、職員を募集している施設の下見をしに車を走らせていたら背中に鋭い痛みが走った。

高速を走っていたから車は止められない。

が、かなりマズイ事が起こっているとは分かった。

すぐに整形外科へ行き、ブロック注射を何本も打ってもらった。

「ガチガチだもの
そりゃ立っていられないよ
〇〇さん、背中も腰も肉離れ起こしてる」

…え。




今日は今のクリニックに移ってから4回目のカウンセリングの日だった。

腰にはこっそりコルセット。

電車に揺られながら思っていた。

「自分が置かれている環境の異常さに気づいたとき…やっと痛みを認識できるようになったんだろうな…私は」

正直、筋肉の張り具合は飲食チェーンの頃と大差はなかったから、もしかしたら肉離れにすら気づけていなかったのかもしれない。

「……紆余曲折あったけど、なんだかんだ良いタイミングで逃げ出せたのかも」


肉離れだけじゃない。
子供の頃の骨折だって痛くてたまらなかったはずだ。

「痛みを感じることすら許されない環境に居たんだ…
たぶん大丈夫、診てくれるクリニックが見つかったんだから!」

電車の扉が開く。

私は都会の駅のホームに降り立った。




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