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【フレームワーク】5Fや3Cの不完全さ 経営01

企業には、考慮すべき外部のステークホルダーがさまざまある。
企業行動に影響を与える、そういった外生的な要因を考えるときに、5 Force分析や3C分析がよく用いられるが、どちらを用いてもすべての要因をモレなく拾い上げることはできず、網羅性に欠ける。

そのため、

  • 一度すべての外部主体を洗い出し

  • それと比較して5Fや3Cの欠けるパートを抽出

  • 取り扱う要因の取捨から特徴を見出し、フレームワークの使い方を再確認

していきたい。

※2024/01/10追記
この記事のスライドを含めた内容を下記記事に含めています


外的要因の網羅

僕のまとめはこうだ。

※2024年1月25日追記
以下のように変更を加えた。特に、投融資者らはマストかと。

左図の網羅図について。
5Fをベースにしながら、いくつか変更を加えた。

  1. 産業の外部に「PEST」を追加した

  2. 「買い手」について、呼称に「顧客」を併記した

  3. 競合パート⑴「自社」を「競合他社」と区別した

  4. 競合パート⑵「代替品」「新規参入」を「競合」に含めた

  5. 競合パート⑶「競合」を「直接競合」と「間接競合」に分け、直接競合内に「(既存の)競合他社」と「新規参入」を、間接競合内に「代替品」を振り分けた

  6. 競合パート⑷「競合」内で、下から順に、既存の直接競合、既存業界に加わる新規参入、間接競合の代替品、の順にした

1について。いわずもがな。
2について、3Cでは顧客/Customorと呼称されていることから。
「買い手」という表現は、売り手・買い手のセットを前提にしており、サプライチェーン・垂直方向における網羅性の担保を意識した表現。一方、「顧客」という表現は、ビジネスの一大主体である顧客への意識がより強い表現。それぞれの表現に妥当性があり、両者ともに必要と判断。
3について。後述。
4・5について。いわずもがな。
6について。下にある競合が、それより上の競合の脅威を受けるため。上から下に向かって脅威が加わる順番にした。

5F・3Cの特徴分析

共通した欠陥・PESTについて

5F・3Cもともに、PESTが欠けていた。

  • おそらく、実務で使う際は、⑴PESTの影響を受けた結果、階層が一段下の各5F主体がどんな動きがみられるか、という5F主体に従属する形でPESTを考慮する、もしくは、⑵5F主体とは独立に、PESTを付加して考慮する、という具合に拾い上げているはずだ。

  • また、スライド内にも記載したが、PESTについてトレンドとは表記しなかった。PEST/マクロトレンドもあれば、例えば顧客のみに特有のセミマクロなトレンドもあるためだ。例えば、20-30代でフィットネスが流行っている、一部で健康意識が高まっているというのは、顧客規模のセミマクロなトレンドといった方がよかろう。もちろん、Societyに分類できなくもないが。。とにかく言いたいのは、トレンドには5F主体との距離が近く規模が小さいものと、距離が遠いマクロなものがあるということだ。あと、PESTって呼んだ方が考慮すべき対象が明確ぢゃん。

3Cについて

  • 顧客志向
    単純計算で、5Fだと買い手は1/5の比重だが、3Cだと顧客は1/3の比重だ。
    顧客インサイトへの深堀りを促すマーケティング的なフレームワークといえるだろう。

  • 「市場」というタームの曖昧さ・広範さ
    ときおり、顧客/Customorについて、市場環境と呼称しているのを見かける。これはおそらく、PESTや売り手への考慮が欠けていることへの無意識の補正から、自社・競合の二つ以外をひとくくりにしているのだと思う。

  • 超簡易キット
    3Cは、比較的顧客志向とはいっても、顧客分析について何か意味のあるインサイトは提供していないし、そのわり、外的環境の枚挙も不十分だ。外的環境の分析にも使えないし、マーケにも使えない。簡易キットに過ぎない。

5Fについて

なぜ、5Fにおいて、「自社」を抽出していないのか?
理由①自社が生存する上での「脅威」に主眼があり、脅威を生む外部の主体の羅列をしているから。
理由②競合は自社と同質という仮定があり、競合との競争という要素の中に自社を含んだ気になっているから。

理由②について。
SCPの言う、「完全競争↔独占を両極におき、独占に近づくほど収益性が高い」⇔「競合の数が少ないほど望ましい。」という原則は有名だ。しかし、これは、「質は定数↔量は変数」つまり、「競合企業同士の質は変わらないものと固定した前提」をもとにすると、「企業の数だけを増やしたり減らしたりしたときには、数量が少ない方がいいよね」、だから、「質で差別化して、同質の競合の数量が少ない場所に行こうね」と言っているのである。
(とダラダラ書き終えたあと本を読み直して気づいたPSだが、経済学における完全競争の条件3に企業の同質性がありましたね。なぜこの条件が必要かを書き下してしまった)
だから、自社と既存の競合他社(僕の図でいう直接競合内の「既存」)を実質的に同質的なものとみなしている。

一応、5Fの背景をおさらいする。
企業の外部環境をマクロに見て、その中でどうサバイブするか、という観点からSCP理論が生まれた。
「独占しろ」「差別化しろ」という主張の源泉がこのSCPだ。
ベインがまず経済学ベースのSCPを立ち上げた後にポーターが経営学のSCPへと昇華。
その中で、彼の競争戦略論の一環として5F分析やジェネリック戦略(差別化、コスト、集中、のアレ)が生まれた。

また、別記事にまとめるつもりだが、SCP理論の示唆は、

・SCP:独占しろ
・ベイン:複数の産業や企業グループを見比べて、他産業・他企業グループとの、産業の違いによる収益性の違い→参入障壁を築いて違うポジションを取ろう、そこを独占しよう
・ポーター:イチ産業内を見て、競合との、競争による収益性の違い→差別化をして違うポジションを取ろう、そこを独占しよう
・ポーター:イチ産業内を見て、競合以外の5F主体との、交渉力による収益性の違い→戦略への具体的な示唆はなし
・総じて、企業は、外部環境の中でサバイブするために、独占志向のポジショニングを取るように推奨している

※厳密には、「企業グループ」に言及したのはポーターの功績。
※本当は、「産業」は「構造」と書きたかった。「構造」はSCP理論の語源だが、日常的な用法と違うことで文章が読みづらくなるからだ。ここでいう構造とは、産業構造ないしイチ産業単位のことを指す。が、そのニュアンスで、平文で構造構造と書くとなじまない人には理解しづらいので、産業と書いた。だが、SCPはStructure-Conduct-Perform/構造-遂行-業績の略だ。社会にうごめく企業の群れを俯瞰し、それらを構造化している。

※2024/01/10追記
SCP理論についてのまとめ記事はこちら

まとめ

以上まとめて、
・外部環境=5F + PEST +競合の構造化、で一般論としては満足できそう
・3Cは使えない
・実務では、各業界への深い理解が必要で、その上でその業界特性を反映したより複雑な構図になるはず。フレームワークはそのための足がかり

かなと。

とはいえ、フレームワークもたかがされど。より良質なフレームワークを提示できていれば幸いです。

それではまた。

2023/12/21

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