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舟を編む 三浦しをん


今回は私の大好きな三浦しをんさんの本を紹介したいと思います。三浦ファンになったきっかけがこの本でした。自分の備忘録としてあらすじと感想を書き止めておこうと思います。

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『舟を編む』
発行所 光文社文庫
著者:三浦しをん
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【あらすじ】
荒木公平の人生は、辞書に捧げられてきたと言っても過言ではない。
しかし、家庭の事情で仕事を辞めることに。
そこで、辞書を作る後継者を探すために噂の人材を見に行くことにした。
例の男は、大小のさまざまな箱を整理していた。複雑なジグソーパズルのピースをはめこむような見事な手際。
あれこそは辞書づくりにおいて求められる、重要な才能のひとつではないか!
しかし、問題にすべきは男が「まじめさん」と呼ばれた点だ。いったいどれだけ真面目だったら、あだ名が「真面目」になるのか。
「はい、まじめですが」
な、なにーっ。まさか本人も真面目を自認しているとは!
名刺を見ると【馬締光也】と書かれてあった。
馬締は微笑んだ。
「勘違いなさったでしょう」 
「いや、すまん」荒木は言った。
この2人の出会いから、辞書づくりへの一歩が踏み出される。


【感想】
私が初めて国語辞典を買ってもらったときは、優越感に浸ったものだ。文字がぎっしりと詰まっていて、大人が読む書籍と同じ分厚い冊子。
まるで偉い人になったかのようにパラパラめくり、知らない単語を調べるとちゃんとそこに意味が載っている。
これさえあれば無敵じゃないか。
どれだけ知ってる言葉があるか、「あ」行から順に蛍光ペンでチェックしてみたこともある。そして、言葉が多すぎて「さ」行あたりで確認を諦めたっけ。
しかし、この時、辞書が全能でないことも知ってしまったのである。
例えば、知らない単語を調べて、その説明でさらに分からない単語が出てきた時。
単語を調べる、、を繰り返しても、ある時に行き止まりとなり、いまいち単語の意味がイメージできない。
この歯痒いところに手が届かない感じが、
舟を編むの冒頭で書かれていて、読み手である私は共感しまくったのである。

(抜粋概要)
「こえ【声】」人や動物が、のどにある特殊器官を使って出す音ー。
「のどにある特殊器官」とは?

ここで、さらに調べてみる。
「とくしゅ【特殊】」①普通とは質的に違うことー。
「きかん【器官】」生物体を構成し、一定の形態をし、特定の生理機能をいとなむ部分。

「のどにある特殊器官」とは「声帯」を指すのだろうと見当がついたが、声帯を知らない人が辞典を引いたら謎のままである。

(抜粋終わり)

「わかる!わかる!その歯痒い感じ!」
辞書のあるあるを見事に書かれているあたりから、どんどん物語にのめり込んでいった。  
ちなみに、登場人物の荒木は辞書を引いて、完全無欠ではない辞書に対して落胆するどころか、ますます愛着を深めている。
まったくの変人であると思った。

その他に「あがる」と「のぼる」のちがいをもっと端的に表現するには?と議論する場面があり、一つずつそんな細いことを考えながら、地道に辞典を作成していることに驚き、終わりの見えない果てしない作業に気が遠のいた。一つの辞典を完成させるために、どれだけの月日と労力がかかるのだろう・・・。

この物語は、ざっくり言うと主人公の真締(まじめ)さんが職場の個性ある仲間と協力して一冊の辞典を完成させる物語である。ここに出てくる登場人物はみんなクセがあってなかなか面白い。個人的には、無神経に見える西岡の信念を貫く様が気に入っている。



余談だが、最後の馬締の恋文も見どころである。
全文公開をみると、まるで読者自身が仲間と「大渡海」の制作に関わったかのような錯覚に陥る。付録のおまけのようについていた恋文は、この本を開けば「不器用な仲間達にいつでも会える」
そう教えられているようだった。

やっぱり、三浦しをんさんの本、好きだなぁ。

3回目の読後感想である。








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