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ゴジラ -1.0

たしかに日本版ID4な映画だった。その意味では良かった。また、1作目から続く反戦メッセージを貫きつつGODZILLAを作り直す意味でもよかった。次作を期待させる終わり方もよかった。しかし…


ここから下はネタバレ全開です


時代考証はかなり酷くめちゃくちゃで、セリフとそれを演じる俳優たちの演技にはたびたびの違和感を感じました。マッカーサーが日本任せにするとか、それを刺激しないようにとはいえ、それはどうなんでしょう。あの時代って、そこまで米ソって緊張状態だったんでしょうか?戦地から日本へ帰る船の中でも、悲壮感が薄く、皆健康的で血色もよく、船が狭いし触れるから不快だな…くらいの感情しか受けませんでした。挙げればきりがないんですが、とにかく時代感のなさと、監督の勘違いが著しく、最初の20分ですっかり覚めてしまい、最後の30分になるまでは、比較的ポカンとしてました。

キャスティングは全面的によくないと思いました。演出やセリフも良くないことは後述するのですが、それにしても配役はこれでよかったのだろうか?と思いました。はまり役というものがまったくなかったです。特には佐々木蔵之介の演技のたびに気分が覚めました。「恐れ入谷の鬼子母神だ」など、セリフそのものが全般に相当におかしいのですが、彼の言い回しがなぜあんななのか、マンガっぽくしたいのか?とまったく理解できませんでした。映画の中ではいくつか気になる点はあるものですが、一本の中でこれほどまでにそれが乱発されると、もう作品どころではなく、何を見せられているのかわからないくらいでした。

最終決戦前のシーンもひどかったですね。みんなで集まって、顔が一切重ならないようにキレイに並んだ状態で、「そうだよな!俺たちが貧乏くじ」

浜辺美波は戦前には向かないと思いました笑。御本人も、どれだけ戦前を知っているのかとおもいましたし、せめて化粧をそれなりにするとか、役作りするとか、方法はあったと思うんですが、どうにも浮いてましたね。しかも、中盤以降にアクションシーンまで行ってしまうとは、一体この人はどういう役なんでしょうw

敷島と一緒に数年?は暮らしているのに、子供の1人もできないのはありえないのではないかと思います。当初は「同居しているだけ」で「いついてしまった」というのに、次第に夫婦同様の振る舞いになっていくわけですが、決してそうではないというようなシーンがあります。それなのにお互いにそこまで想いをはせるのは違和感がありすぎました。この点も、戦後の復興時期を勘違いしていないか?というところです。血の繋がっていない3人が家族を形成するはなしかと思いきや、そうはならず、最後には子どもを残して特攻しに出てしまうわけで、「そう見せかけて子どもを大事にするのかな?」と思ったら、「残していくんかーい」ってなりました。家族になってないのに、宴会のようなシーンでは女性は給仕に徹したり、子どもは子どもらしく振る舞うだけで、その扱いは古臭くてびっくり。

吉岡秀隆もないなと思いました。彼以外の演技も全般におかしいので、演出家や監督がぼくには合わないのかも知れません。言い方が思いつかないが、マジメにやって欲しいと思いました。邦画独特の演出やセリフ周りが本当に酷いんですね。

「この国は変われないんだ」「いつものこの国のやつだよ」みたいなセリフがあったが、あれは完全に現代から遡行的にみた戦前から続く日本の姿であって、戦後すぐにあれはないだろう…ここはかなり引いた。他にもおかしなセリフは随所にあった。この国って言わんでしょ、伏せ字にする必要あるのかな?庶民が?

時代考証のところは各所に違和感があった。この監督は歴史を知らないか、別のれ式を信じてるんだなとしか思えなかった。「アメリカはちゃんと占領しろや笑」はほんとそう。マッカーサー仕事しなさすぎでウケました笑

敷島(特攻と言えば敷島隊)という名も直球すぎる気はしました。反戦というメッセージも、生きてこそと繰り返されるセリフも、もはや戦後生まれしかいない現代においてどこまで興味を持たれるのか疑問は感じました。戦前には興味がある人でなければ、単に家族が生きてたという感動話でしかないのでは?と。

まあ、シンプルに楽しめるのもGODZILLAのいいところなのかな?というわけで、キャスティング、セリフ、演出や時代考証がマシなら4.25くらいは上げられたけど、そこでの減点が響いての3.5/5点でした。これでもだいぶ甘い加点してます。正直に言えば2点ですね。

ぼくは庵野さんの意見に近いです。なお、シン・ゴジラは大好きですね。ツッコミどころをもうちょい詰められたらよかったのねえ…
「ツッコミどころは満載だけど、おもしろい」
「これでゴジラは続く」

ぼくはゴジラに表情があるのは嫌なんですよ。シンや54年のように無表情だから怖いのであって、ギロなんて睨むのは冷めちゃうのです。ゴジラは神っぽいからいいのであって、動物っぽいのは違うなと思います。キャラはあまりいらない。

「ゴジラ映画」が続くために仕事してくれたのはよかったけれど、ぼくがみたいのは人によるゴジラ退治であり人間ドラマじゃないんです。

やっぱりいちばんのマイナスは監督自身ですね。泣かせようとする演出が薄っぺらく、セリフが酷く、没入しかけたところをイチイチ引き戻す。そのせいで役者も生きない。戦前を描くなら戦前を知ってる人を入れるべきだったと思います。戦前テイストの現代劇にしか見えなかったです。はじめて観た山崎貴作品だったのですが、他の作品を観る意欲が完全に失せました。


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