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【ココロコラム】ダイエットの心理学

ダイエットの本は毎年、手を替え品を替え出版されます。需要が大きいのに、失敗する人が多いからです。食べたいものを食べられないで我慢する辛さを克服するには、相当な意志力を必要とします。挫折するのも無理もないことです。

かくいう私も、何度か挫折しています(成功したこともありますが、リバウンドしました)。しかし、そろそろ見た目よりも健康のためにダイエットが必要な感じになってきました。

そこで、安易な方法ではなく、心理学的に根拠があるダイエットの方法をとりあげます。

食べる量を減らすためには、おいしいものを視野から遠ざけるのが有効です。チョコレートを透明な容器と不透明な容器に入れた場合では、透明な容器に入れた方が、つい安直に手にとってしまい、消費量が6倍も増えたというデータがあります。目に見えるものは手が出やすい。

こたつの上のみかんと一緒です。たいして食べたくもないのに、つい何となく手を出してカロリーを摂取してしまう。かなりバカバカしいことです。食べ物はなるべく目にみえないところに置いておくのがよさそうです。

ついなんとなく食べてしまうのを減らすには、食事の最中に他のことをしないのも大原則です。面白い話を聞きながら食事をすると、15%食べる量が増えるというデータがあります。雑誌を読みながら、テレビを見ながら食事をするのもやめたほうがよさそうです。

また、食べるスピードも大事。人間の満腹感が脳に行くには、ある程度時間がかかります。ゆっくり食べて、食べたというシグナルが脳の満腹中枢に伝わるのを待つと、食事量が抑えられます。食べる量が多い人ほど、早食いの傾向があります。ふだんの倍ぐらいの時間をかけて食べてもよいのではないかと思います。

以前にレコーディングダイエットが爆発的に流行りました。日々の食事を記録していくのが方法の骨子です。これは、ある程度、科学的根拠があります。アメリカの調査機関の研究によれば、食事日記をつけた人は、つけない人の2倍体重が減ったそうです。カロリーまで計算すると、めんどうでやる気をなくすので、食べたものをこまめに記録していくだけで効果があるようです。

食事を取る場所やキッチンに鏡をおくのも効果的なようです。目の前に鏡があると、健康によくない食品を無意識に避ける効果が生まれます。ちなみに、常時鏡を見ていると逆効果になります。意志をかきたてる前に、現実の自分の肉体に落胆してしまい、やる気をそいでしまう結果になることのほうが多いという結果が出ています。

目標は大々的に人に話してしまった方がよいというのは、以前にコラムでも扱いました。その方が「失敗した場合みっともない」という強制力が働き、知らず知らずのうちに実行力が上がるからです。

そこで私も、マイナス10キロを目標にすると宣言しましょう。途中経過も週一回ぐらいのペースで記録につけます。

ダイエットは「目の前の楽しみより、将来の価値のほうを重く見る」という社会的にきわめて大切な能力のトレーニングになります。仮に挫折したとしても、そのような大切な力を得る努力をしたことは、決して無駄にはならず、のちのち役に立ちます。

私はひとまず今回扱ったような心理学のトピックスを駆使しつつ、なんとか減量に取り組んでいきます。どうなるのか自分でも楽しみです。読者でダイエットに成功した方の経験談や、一緒に取り組んでみる方の声をお待ちしております。

(精神科医・西村鋭介)


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