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#本屋KIBAKOができるまで「ピノキオと父」

私には忘れられない本があります。
何歳だったかも覚えていませんが、小学生でした。
ある日、父が1人で遠くの親戚の法事に行く事に。
お土産は何がいい?と聞かれた私は「本」と答えました。

数日後帰宅した父が買って来てくれたのは「ピノキオ」。
ディズニー版ではありません。
絵本じゃない初めての「本」に私は嬉しくて、毎日枕元に置いていたと記憶しています。
今思うと、父がどうやって「ピノキオ」を選んだのか不思議なのです。

父は田舎の貧しい家庭に生まれ、幼い頃から働いていたそうです。
いまでは耳にすることもない丁稚奉公(でっちぼうこう)
満足に小学校すら通えなかったと聞いています。
当然最低限の読み書きしか出来ない。
そんな父がピノキオという海外のお話を自分で選ぶとは思えないのです。
(生前に聞いておけば良かったと後悔)

ここからは私の勝手な想像です。

ひとり娘に頼まれた本というリクエストに、さて何を買っていけばいいものか?
本屋でしばし一人頭を悩ませる。
どうにも分からず、本屋の店員さんに尋ねてみた。
小学生の女の子が喜ぶ本を教えて下さいと。
なら、これはどうですか?
そこで渡されたのが「ピノキオ」という挿絵が可愛らしい本。
内容は分からないけれど、これなら娘が喜んでくれるはずと。
家に着き娘に渡すと、それはそれは嬉しそうに読み始めた。
ああ、良かった。
店員さん、ありがとう。

実際はどうだったのかは、もはや知り得ません。
でも、そんなやり取りがあったならいいなと思っています。
本と人とを繋ぐ場である本屋をやってみたいと願う私の原点です。