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著…中野京子『中野京子の西洋奇譚』

 西洋で脈々と語り継がれる、今も多くの謎を残す奇怪なエピソードについてまとめた本。


 たとえば、

 ●ハーメルンの笛吹き男
 ●ジェヴォーダンの獣
 ●幽霊城
 ●ゴーレム
 ●ドラキュラ
 ●エクソシスト

 といった伝承のあらまし、関連する絵画や文学作品、有力とされるいくつかの説といったことが紹介されています。

 今の世の中、なんでもかんでもネットで検索すれば分かるかのように多くの人が錯覚しがちですよね?

 しかし、この本を読むと、「人間には、まだ誰にも分かっていないことや、ごく限られた人たちは真相を知っているのに秘匿していることがあるのかも…」とゾクゾクしてきます。

 オカルトちっくで不思議な世界って、どうしてこうも好奇心を刺激するのでしょう。

 さて、わたしがこの本の中で最も関心を寄せるのは、冒頭の「ハーメルンの笛吹き男」。

 13世紀末、ドイツの小さな町ハーメルンに奇妙な男が現れて、たった半日で130人もの子どもたちを連れ去ってしまったとされる事件。

 概要を知れば知るほど謎が深まるばかりです。

 諸説ありますが、「いなくなった130人もの子どものうち、なぜ1人として遺体すら見つかっていないのか?」という疑問にはっきりと答えてくれる説が一つも見当たらないことが、よりこの事件を不気味にしています。

 まさに「消えてしまった」子どもたち。

 一体どこへ…?

 まず同時代人による市の公文書だが、あまり詳しくはない。「今後は子どもたちがいなくなった1284年を起点にして(まるでイエス誕生を西暦1年と定めたように)市の年代記を記す」という程度である。つまり、今年は我らの子どもらが連れ去られて何年目、というように数えようと言うのだ。

(著…中野京子『中野京子の西洋奇譚』P16から引用)


 という記述を読んだ時、わたしの背筋は凍りそうになりました。

 思わずこう想像したからです。

 実はその正体不明の男は異星人であり、「地球時間で今からあと〇〇〇〇年経ったら子どもたちを必ず地球に連れて帰る」とハーメルンの人々に告げて子どもたちを連れ去ったのでは?

 だから、子どもたちがいなくなった1284年を起点にして、今年は我らの子どもらが連れ去られて何年目、と数えるのではないか?

 …と。

 荒唐無稽ではありますが、そう考えるとなんだか全ての辻褄が合ってしまう気がして、余計に怖いです。

 きっと異星人にも何らかの目的があってのことなのでしょうが。

 もし本当にその通りだとしたら、非常に残酷な話です。

 だって、子どもたちが地球に帰って来た時、懐かしい家族はもう誰一人として生きてはいないのですから…。



 〈こういう方におすすめ〉
 都市伝説やオカルトといったものに興味がある方。

 〈読書所要時間の目安〉
 一時間半〜二時間くらい。

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