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著…森下典子『好日日記 季節のように生きる』

 この本を読んでいると、まるで自分が今この瞬間に茶道のお稽古をしているかのような、或いはお茶席にいるかのような…、そんな贅沢な気分に浸れます。

 「贅沢」と言うのは、高価なお茶碗や着物に囲まれているという意味ではありません。

 今しかない季節の美しさを愛で、あっという間に過ぎ去っていくその儚さに名残を覚える、その瞬間がとても贅沢なのです。

 目の前に置かれた菓子器の中に並んだ小さな宇宙に息を飲む。(中略)葉を濡らす朝露。水面に映る月。花びらや氷のかけら……。手のひらに包めるほどの小さなお菓子が、季節の細部を思い出させてくれる。

(著…森下典子『好日日記 季節のように生きる』 P7から引用)

 お点前に集中する時、私はさらに濃い時間に入っていく。指先の小さな動きにも注意を払い、(おいしくなれ、おいしくなれ)と、一碗の抹茶に心を込める。すると、内側で不思議なことが起こるのだ。いかなる脳のメカニズムがそうさせるのか、遠い子供時代の思い出や、すっかり忘れていた日々の小さな記憶が、ひょいと脳裏によみがえる。それは、できごとというよりも、感覚の断片だ。

(著…森下典子『好日日記 季節のように生きる』 P8から引用)


 という著者の感性に憧れます。

 つい、人は「きっと自分は明日も生きていられる」と思いがちだけれど、今日しかない命を、今しかない今を、大切に大切に生きていきたいですね。



 〈こういう方におすすめ〉
 この世の美しい瞬間の一つ一つを感じ取る感性を磨きたい方。

 〈読書所要時間の目安〉
 2時間くらい。

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