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著…湊かなえ『白ゆき姫殺人事件』

 こんばんは。

 人間心理の恐ろしさや醜さを描いた小説を読みたい方におすすめの本をご紹介します。

 同じ事件であっても、人によって受け止め方が全く異なります。

 その事件とは無関係の人たちが面白がってあることないこと騒ぎ立てて、それが伝言ゲームのように姿を変えながら、「真実」として広がっていきます。

 読後感が良くないので好き嫌いがはっきり分かれそうですが、わたしには勉強になりました。

「頭の中での創作も、誰かに語った瞬間に、真実にすり替わっているんだからな」
(P65から引用)

 という一文がこの小説の世界観を端的に表していると思います。

 噂話。

 新聞や週刊誌の記事。

 インターネット。

 それらによって、無実の人が殺人事件の犯人であるかのように仕立て上げられる。

 本人が犯行を自白したわけでも、物的証拠があるわけでもないのに、実名も経歴も晒しあげられる。

 これは、今まさに日本で起きていることを描いた小説です。

 殺人事件の被害者を、被害者の会社の商品にちなんで「白ゆき姫」と呼ぶことで、少し現実離れしたような雰囲気を出してはいるけれど…、この小説の内容はとてもリアル。

 犯人だと見なされてしまった人、これ以降はネタバレ防止のため仮に「◯◯さん」としますが、この◯◯さんの同僚などが各章に登場します。

 登場人物それぞれが◯◯さんや殺された「白ゆき姫」だけでなく、他の登場人物についても話をします。

 この「白ゆき姫殺人事件」をイメージした新聞や週刊誌の記事、登場人物たちがお互いの正体を知らずにSNSで交わしたやり取りや(面白おかしく週刊誌に記事を書き立てた記者は悪びれた様子なくSNSにも投稿しまくっています)、真犯人のブログまでこの本には掲載されています。

 そのため、この小説は人物相関図を作りながら読むとより楽しめます。

 誰が誰をどう思っているのか、誰が真犯人なのか想像しながら。

 ◯◯さんが犯人に違いないと決めつける人。

 ◯◯さんはそんなことしない、と擁護する人。

 主張は人それぞれ異なります。

 単に同級生だったというだけで特に親しくなかった人も週刊誌の取材に応じます。

 本人のことを全然知らない人まで発言し始めます!

 ◯◯さんの曽祖母は人殺しだから、その曾孫にあたる◯◯さんも人を殺してもおかしくない、あそこはそういう家なんだから、と訳の分からない発言を。

 しかもその発言まで週刊誌に載ってしまう描写も妙にリアル…。

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