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【おとなの読書感想文】「君たちはどう生きるか」-人としての美しさとは、思想とはどういうものか。

前々から読みたいと思っていた、吉野源三郎著『君たちはどう生きるか』を読みました。
本書の内容に関してはできる限り触れずに書いているので、まだ読んでないよーというあなたもぜひ気軽に目を通してみてください。

宮崎駿監督の映画のタイトルにもなっており、名作として知られる本作。

タイトルからして少し「重め」の本かなーと思いきや、読んでみるとスラスラ読めて、しかもそれでいてしっかりとした問いや教訓を僕らの中に残してくれるような、大満足な本でした。


本作の主人公である中学生の「コペル君」は、学校生活や友人関係の中で色々なことを体験します。起こる出来事は特別なことではなく、誰もが10代で経験するようなことです。

その体験に対して、コペル君の叔父さんである「おじさん」が人生の先輩としての助言やメッセージをまとめた「おじさんのノート」が登場するのですが、これがすこぶる良いんです!

人間の一生や、善悪、幸せ、世の中。大人であれば誰でも、こういうものについて真正面から向き合わなければどうしようもないタイミングが何度もあります。「おじさんのノート」には、そういうものについての考え方や向き合い方について、一つの道しるべが惜しむことなく書き上げられています。


僕は普段、塾講師として小中学生とよく接しているのですが、「子供を導くとはどういうことか」「大人としてどう接するべきか」という視点でも、おじさんのノートはとても参考になります。

子供はまだ視野が狭く、自分中心で、人生については深い洞察は持っていないことがほとんどです。それは全く悪いことではありません。むしろ特定の考えを持たず、ある種本能的に自分のテリトリーを広げられるのは、子供の特権です。

しかし、大学生になったり、会社で働いたりするうちに、僕たちはいつの間にか大人になります。良いことや、悪いことをたくさん経験します。過去の偉い人が残した思想や言葉に、自分のオリジナルな経験や考えを少しだけ加えることで、僕たちは過去の人たちが積み上げてきたモノの上に初めて新しい何かを積み上げることができるのです。

それを次の世代に伝えることが、そして次の世代の子供たちが新しく何かを積み上げる手助けをすることが、人間としての美しさの一つではないでしょうか?


「おじさんのノート」の中には、○○でなくてはうそだ。のような書き方がたまに現れます。『全員が平等にサービスをうけられない世の中でなくてはうそだ』といった具合です。

僕はこの言い回しがなんともお気に入りです。子供が駄々をこねるのとはちがう、重みや決意のようなものを感じるのです。先人たちが積み上げたものを受け取り、さらに自分のオリジナルを積み上げることで生まれた自分の思想への絶対的で妄信的な自信とでも言いましょうか。

そういう思想を自分の中で育てていくことが、当面の僕の人生の目標となりそうです。


本作を読めばあなたも、多かれ少なかれ自分の人生について見つめなおさずにはいられないでしょう。タイトルに違わず、「君たちはどう生きるか?」と問いかけてくるような、そういう力を持った本だと思います。

これから読むあなたも、とっくに読んだよというあなたも、ぜひ感想を教えてください。


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