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清水尋也が、「嫌なやつ」を演じたからこそ。(映画「ちはやふる 上の句」を観て)

2022年10月21日に公開された映画「線は、僕を描く」が好評のようだ。

監督を務めるのは、小泉徳宏さん。「タイヨウのうた」「ガチ☆ボーイ」「カノジョは嘘を愛しすぎてる」など、青春映画のディレクションを多く行なってきた。

中でも代表作は「ちはやふる」。上の句、下の句、結びと3作品あるが、まずは上の句の感想を記してみたい。

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スローモーションの広瀬すず

もはや誰もが俳優としての実力を認める、広瀬すずさん。この映画でも彼女の瑞々しさは光るが、中でも驚くのは、スローモーション時の「画力」だ。

スローモーションは、使い方を間違えると大袈裟というか、仰々しい演出になってしまうもの。しかし広瀬さんの「ずっと観ていられる」感は、なかなか並の俳優では成立しない。「ちはやふる 上の句」では、クライマックスシーンにおいて、髪の一本一本まで動的に魅せるスローモーションの演出には、度肝を抜いた

これから観る方は、ぜひクライマックスシーンの広瀬さんに注目してほしい。

コントロールできない「神様」を、気合でねじ伏せた野村周平

この映画は、広瀬すずさん演じる千早、野村周平さん演じる太一、真剣佑さん演じる新の3名が主要登場人物だ。

上の句では、千早と新が突出した才能の持ち主として描かれる一方で、太一は、「競技かるたに長く励んできたものの、至って凡庸な才能の持ち主」として描かれている。

小学生のとき、新と対決するシーンが象徴的だ。

恋心を抱く千早の前で情けない姿を見せたくないと、対戦前に親友・新のメガネを隠してしまう。それでも結局負けてしまうのだが、それ以来、勝負どころで「勝てない」ことが続いてしまう。実力も中途半端で、しかもとことん運が悪い。劇中では「かるたの神様に見放された」と言われるほどだ。

こういった状況で凡人がコントロールができない神様に対峙する場合、何らかの詫びを入れることで、許しを乞うのが定石だ。

だが予想に反して、太一はコントロールができない神様を、気合でねじ伏せる道を選ぶ。

ずーーーーーっと、どこか情けない太一だったが、ここでようやく「主役」然とする。振り返ってみれば、青春映画のありがちなシーンではあるのだが、それでも太一のギャップには心躍るものがあった。

唯一「嫌なやつ」を演じた清水尋也

隠れた好演として光っていたのは、映画「さがす」にも出演した清水尋也さんだ。千早が在籍する瑞沢高校の、ライバル高校の主将・須藤を演じているのだが、とにかく嫌なやつだった。

何せ少しぶつかっただけで「『ごめんなさい』と言え」を執拗に繰り返すのだ。千早もその執着ぶりに引きつつ、一度は完敗を喫してしまう。完勝したときの須藤の捨て台詞も嫌味たっぷり。

「さがす」の場合は、常軌を逸したシリアルキラーだったが、いわゆる悪役をやらせると最高に映えるなあと再認識した。

今回の映画では、清水さん演じた須藤が、唯一の「嫌なやつ」だった。この作品が、よくある凡庸な青春映画にならなかったのは、彼の存在が結構大きかったと僕は思う。彼がいることによって、映画がほどよく締まったんじゃないか。

どんな時代にも、ちゃんとした「悪役」というのは大事なのだ。

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「線は、僕を描く」を鑑賞する前に、下の句、結びもチェックする予定です。

このnoteでも感想を書こうと思いますので、良ければコメントなどリアクションいただけると嬉しいです。

(Amazon Prime Videoレンタルで観ました)

*追記*

「下の句」の感想も書きました。

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