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化学反応の良し悪しは。

「ファーストラヴ」
(監督: 堤幸彦、2021年)

直木賞を受賞した島本理生さんの同名小説を、堤幸彦さんが映画化。

幼い頃にあるトラウマを抱えていた主人公・真壁由紀(公認心理師)が、父親を殺害した容疑で勾留された聖山環菜を取材することに。国選弁護人に選ばれたのは、由紀の元恋人であり、夫の弟の迦葉。ふたりで協力しながら事件の真相に迫っていく中で、環菜がひた隠しにしていた秘密に気付いていく……という物語だ。

意識的に張られた伏線があるわけでなく、話が進んでいく中で「あ、そういうことなのね」と主人公と共に気付いていく。そういう意味で、夜21時台のサスペンスというような感じ。

憑依的な演技が見事だった芳根京子さん、ほぼ一瞬しか登場しなかったにも関わらず存在感が光った高岡早紀さんなど、俳優陣の演技が光る作品だった。

人によっては、裁判シーンの芳根さんの独白は冗長に感じるかもしれない。僕は冗長を感じたというよりも、裁判シーンに限らず、「被害者」である環菜が二次被害を被るシーンが多すぎて目が眩んでしまった。小説よりも、映画が伝達できる情報量は圧倒的に多い。制作側の判断として、「エンターテイメントとしてのサスペンス」に振るという判断だったろうが、鑑賞する人にとっては注意が必要だ。

島本理生さん原作の映画化は、これまで女性監督が務めてきたことが多い。「Red」は三島有紀子さんが、「よだかの片想い」は安川有果さんが、島本さんの世界観を監督自らの大胆なアレンジによって魅惑的に変えていったように感じている。

今回の「ファーストラヴ」を手掛けた堤幸彦さんは、「トリック」シリーズを始め、多くのファンのいるレジェンド的な演出家だ。その化学反応の良し悪しは鑑賞した人によって分かれると思うが、僕は堤さんの「反省」のようなものを部分的に感じた。

見られること、晒されることによって強いプレッシャーを感じてきた環菜。堤さんはどちらかといえば、プレッシャーを与える立場にいた人間だ。(もちろん過度なプレッシャーを与えてきたわけではないだろうが、立場的に)

そんな反省の罪滅ぼしとして結実しているかといえば、そんなことはない。が、齢70を目前にして、新しいタイプの作品を手掛けることを決断した堤さんのチャレンジには、どこか決意のようなものがあったように思うのだ。

──

映画鑑賞後に知ったことを。

窪塚洋介さん演じたのは写真家の真壁我聞。彼が個展で掲示している写真は、フォトジャーナリストの安田菜津紀さん、佐藤慧さんが提供されたものだそうだ。

個展のシーンは、窪塚さんの優しげなまなざしと共に、どこか温かさを感じることができたのだが、それは安田さん、佐藤さんの思いが込もっている写真のおかげでもあるのだなと納得した。

また、『ファーストラヴ』というタイトルができた経緯は、短いながら島本理生さんがインタビューに答えている。正直よく分からない回答ではあるけれど、参考までに。

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