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幸せの形は無限にある(映画「いろとりどりの親子」を観て)

友人に薦められたドキュメンタリー。

原作となったのは『FAR FROM THE TREE』。原作者のアンドリュー・ソロモンさんは、プロデュース&出演として本作に関わっている。

「障がい」についてのドキュメンタリーではない

この作品には、自閉症、ダウン症、低身長症、LGBTといった、いわゆる「普通ではない」人たちが出てくる。

なので「障がい」に関するドキュメンタリーだと誤解されることもあるが、これは「家族の在り方」がテーマだ。ソロモンさん自身も映画の中で「『FAR FROM THE TREE』のテーマは“普通”と違う子に家族がどう向き合うかです」と語っている。

彼らの親や兄弟が、「障がい」を持つ家族とどう向き合っているか / きたかが描かれる。子どもが「障がい」を抱えていることを認められず、少しでも「普通」に近付けようともがく。その試みが行き過ぎることで、子どもは癇癪を起こすことも。

普通を望むことは、交流のかたちを規定すること」「治療すべきものと祝福すべきものとの境目は?」などの言葉に、ハッとさせられる。いかにマジョリティが、マジョリティであるという「特権(のようなもの)」を無意識に行使しようとしていることの表れだろう。

複数のレイヤー

「いろとりどりの親子」は、様々なレイヤーのメッセージが込められている。「映画としてのドキュメンタリー」の意義を強く感じるような作品だ。

様々なレイヤーのメッセージがあるということは、観る人によって様々な解釈があり得る。それが映画の作品性を高めるのは言うまでもない。

・障がいとは何か?
・家族とは何か?
・子どもを育てるとは何か?(親の義務について)
・自分自身の中に潜む「シンキング・エラー」や他者への加害性について
・そもそも「ふつう」とは何か?
・家族としての「幸せのかたち」について

こういった作品を観て「ああ、良い作品だなあ」と感想を持つのは、もちろん素晴らしいこと。

でも可能であれば、2人以上で観てほしい。それぞれが感想を語り合い、それぞれの着眼点を学び合ってほしい。性別、年代、住んでいる地域、国籍、職業の違い……。

どの映画にも共通するが、表面的な見方に留まらず「深く読む」ような鑑賞に、とりわけ意義のある類の作品だといえる。

トルストイへの挑戦

この映画をひとことで表現するとしたら、「トルストイへの挑戦」だと僕は思う。ロシアで最も有名な小説家のひとりであり、彼の功績は言うまでもない。だがソロモンさんは、トルストイの有名な名言を覆してみせた。

(トルストイは)『幸せな家庭は似ている、だが不幸な家庭の形は様々だ』と言った。私もそう思っていた。だが今は不幸こそ似通っていると感じる。一方で幸せの形は無限にあるんだ

ソロモンさんは、原作を書く以前に、ろう者の家族をたくさん取材してきたという。ろう者たちが持つ「文化」の豊かさに気付き、社会が「障がい」や「欠陥」として見なす風潮に異議を唱えてきた。

また、ソロモンさん自身もゲイであり、ずっと「子どもを持つこと」は諦めてきたそうだ。(いまは同性愛のパートナーと結婚、代理母の制度を利用して子どもと共に暮らしている)

当事者として、自らの幸せを強く実感しているからこそ、「幸せの形は無限にある」と言い切れるのだ。

誰もがマイノリティになり得る世の中で、ソロモンさんの言葉は力強い。同時に優しくもある。

未来への希望を感じる映画だと、僕は太鼓判を押す。

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いまのところ、主要サブスクリプションサービスでは鑑賞できません。とはいえ、150円という低価格でAmazonレンタルできるので、ぜひ観てもらえたらと思います。

(Amazon Prime Videoレンタルにて鑑賞しました)

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