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AIが大学と社会人の距離感を変える?関西学院の「AI活用人材教育プログラム」に感じる、新たな大学教育の可能性

AIやデータサイエンス関連の教育プログラムは、いまや雨後の筍のようにいろいろな大学で開設されています。社会ニーズがそうさせているのでしょうが、ある種のブームのように見えないこともありません。今回、見つけた取り組みも、そんなAIの教育プログラムの一つですが、展開の仕方がちょっとユニークです。とはいえこういうやり方のほうが、社会としては喜ばしいのかもしれませんね。

取り上げるのは、関西学院大学の「AI活用人材プログラム」です。このプログラムはIBMと共同開発した、完全オンラインの教育プログラムです。これまでに100を超える企業・官公庁等で利用されており、今年4月からは一般個人向けにも販売をはじめるようです。

思えば、AIやデータサイエンスが重要という情報は、ニュースや雑誌なんかを見ていると嫌というほど目にするのですが、じゃあどうしたらいいの?というところに対するアンサーはあまり用意されていませんでした。

高校生や大学生であれば、これから需要が高まることがわかっているので、進学先の選択肢に入れたり、関連する科目を学んでみたりと比較的簡単に取り入れることができます。でも、すでに社会に出てしまった人は、AIやデータサイエンスを学ぶ機会がそう多くないわけです。

AIやデータサイエンスの知識がビジネスに必要ならば、まず学ぶべきは、いま、現役で働いている社会人たちです。現役世代に理解がないと、今後、これらリテラシーを身に付けた人材が入ってきても、その評価を正しくできません。場合によっては、AIやデータサイエンスの活用そのものを否定する立場にまわってしまう可能性だってあります。

また、本人視点に立って考えるなら、自分はわからないけどビジネスの根幹に関わる重要スキルを持った若者がじゃんじゃん社会に押し寄せてくるなんて恐怖でしかありません。いまはまだ何かやばそうだ……ぐらいの状況ですが、AI・データサイエンス系の教育プログラムが山のように開設されているわけで、5年後、10年後には、めちゃやばい!といった状況になっている可能性だって十分にありえます。

まぁ実際はそんな極端なことにはならず、社員研修などの社会人向け教育プログラムがほどよく充実していくんだと思います。ですが、現時点で社員研修プログラムの提供元は企業が中心で、大学発のものはそう多くありません。せっかく多くの大学がAIやデータサイエンスの教育に取り組むのであれば、学生だけでなく、もっと積極的に社会に向けて提供していってもいいのではないでしょうか。今回の関西学院の取り組みは、まず学生向けに開発し、それを企業や自治体等に売って実績をつくり、さらに個人に販売していくわけで、展開方法として非常に上手いように思いました。

多くの社会人がAIやデータサイエンスの知識やスキルを求め、大学にはそれに応えられるノウハウやリソースが貯まっている。そんな状況ができあがりつつあります。これを好機ととらえ積極的に社会に知を提供できれば、大学と社会の距離はもっと縮まるでしょうし、”大学の学びは学生のもの”という固定観念から解放されるかもしれません。関西学院の取り組みが、そんな動きの先鞭になりそうだとリリースを読んで感じました。

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