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DX戦記

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DX戦記です。
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記事一覧

DX戦記~日本のDXについての試論

日本のDXの遅れ 日本企業が「DX、DX」と盛んに言う一方で、実際の進捗は遅れているという現状があります。これは企業が旧態依然とした情報システムの扱いに囚われているためです。多くの企業が「DX」を掲げているものの、基本的なデジタル化すら十分に達成していない例が多いのです。 コモディティ化していない頃のITシステムの感覚のまま その原因の一つとして、コモディティ化以前のITシステムの感覚のママである事が挙げられます かつてはITシステムは企業の内部で、特殊な専門機械とし

DX戦記~手段の目的化の罠~

手段の目的化はデジタル版ゴミプロセスを生み出す原因の一つ手段の目的化というのは誰にでも起きうる罠です。この罠にはまると、デジタル版ゴミプロセスを作ってしまいます。 ゴミプロセスについては以前、別シリーズで書きました。 手段の目的化は、なんで起きてしまうのか?手段の目的化の原因は、これまでやってきたことが正しいと思い込んでしまうという人間の宿命にあります。 これは多分、生物として、あまりランダムに動くと生存確率が下がるという種の保護的な本能レベルでプログラムされている宿命で

DX戦記~護送船団方式?いや、誰もが取り残されないスピードを!

護送船団方式とは?最近の人(といっても、私くらいのバブルを知らない世代も)は聞きなれない言葉だとお思いますが、一言で表せば 動きの遅い人に合わせて、大掛かりな変化が起きないようにすること という話で、昔々、金融関連で取られた政策ですが、それが転じて、いつしか、 その場から動かない人に合わせて変えない、動かない という残念極まりないことまで含まれるようになって、国運が分岐したり、失われた30年で高笑いする人が出たり、国外から奴隷制度といわれる制度が横行したりしてるわけで

DX戦記~プロセスデザインは何故うまくいかないのか?

「XありのDX」の構成として、ここまで、ビジネスデザインとプロダクト/サービスデザインを語りましたが、次はプロセスデザインです。 プロセスデザインとはこれも数多の書籍や論議がなされているので、それを読んでくださいと放り投げますが、ここでは、ざっくり「ビジネスを構成する、個々のファンクションと、そのプロセスが連なったシステムを創造すること」と定義しておきます。 しかし、プロセスデザインは、日本企業の多くでうまくいっていないように見えます。現場に裁量を与えて一見動いているよう

DX戦記~ユーザー観点の情報システムの導入難易度

この記事は情報システムのユーザーにとっての難易度を分かりやすく説明する試みです。 情報システムの導入の難度は「作り手」観点は多いが、「ユーザー」観点で語られる事がほとんどありません。この原因は単純で、経営者に対する批判になるためです。 メディアに登場するコンサルの人たちは、経営層(決裁者)は無謬で、解決は経営層の交代しかなくとも、横文字を並べてて、従業員の責任にして根性論を述べます。 なお、本業が学者さんのコンサルの人たちは違います。この間、聞いたセミナーでは「なぜか、

DX戦記~経営者がIT音痴を克服するには

ITを活用するには様々な要素がありますが、まずもって経営者がIT音痴を克服しなければなりません。経営者の意思決定がIT抜きで行われていると、国外企業に相対的優位性を取られ、それを取り返すために、現場をブラック労働に陥れていることも気づかないままという、経営の失敗の見本のような状態になります。 はてさて、これをどうやれば克服できるのか、考えてみましょう。 IT音痴の経営者とは「圧倒的にITリテラシーが低いまま意思決定する地位になってしまった人々」まず、IT音痴の経営者とは何

DX戦記~プロダクト/サービスデザインの「X」と持続性の罠、そして社会性の悩み

ここで語る狭義のプロダクト/サービスデザインスキルについてビジネスがトランスフォームする場合、プロダクト/サービスが大きく変化することがあります。 むしろ、最近は情報技術の進展が早すぎるので、それによる市場変化がプロダクト/サービスの「X」を迫り、そのためにビジネスがトランスフォームするパターンの方がおいかもしれません。 情報技術の進展によって、トランスフォームをした例は、Microsoft(ソフト→サービス)、Netflix(媒体→配信)、Apple(思想→インフラ)、D

DX戦記~XありDX要素:ビジネスデザインの注意点

ちょっと前に、XありDXを目指すための能力を「根性論なし」で整理しました、そろそろもう少し深く触れてみたいと思います。 XありのDXの4つの能力とは ビジネスデザイン能力=提供する価値を変え続ける能力 プロダクト/サービスデザイン=商品を変え続ける能力 プロセスデザイン=業務を変え続ける能力 ITリテラシー=情報技術の継続学習能力 詳しくは以下をご参照ください。 お詫び:ビジネスデザイン能力についてはここでは語らないです これは世の中に山ほど理論なりフレームワ

DX戦記~日本のIT文化における「保護主義」の問題

デジタル化の時代になって、ITシステムはみんなの仕事や競争力に大きく関わっています。でも、日本のIT文化には、デジタル化を邪魔している「保護主義」という問題があります。今回は、保護主義って何なのか、どんな悪影響があるのか、どうやって乗り越えるのか、についてお話しします。 保護主義って何?保護主義とは、何かを変えるのがイヤで、今のままでいたいと思う気持ちのことです。日本のIT文化では、保護主義はこんなふうに現れています。 今の仕事を守りたいユーザー 今の仕事を守ってあ

DX戦記~Defiance of X(DX)管理職との闘い

とにかく「X」したくない管理職をどうするか?まぁ、変化に抵抗する人って、ぶっちゃけオジサンの管理職が多いなーという感想です。 とにもかくにも、変わりたくないオジサン管理職は変化に対する拒絶反応が大きく、様々な戦術を用いて「変わらないことを実現」しようとします。 というわけで、その攻略の難易度が低い順に、敵がとる戦術を難易度順に並べてみました。 敵の戦術:ITを批判する(難易度1)これは容易に撃破できます。 「セキュリティが心配」 →よし、説明しよう!覚悟しろ。 「フ

DX戦記9~あきらめを捨てて、逃げる

どうでもよい序文:学習性無力感のある社会ちょっと前に見た動画の中で、ちょっと心に残っているのが「オワコン化した老人が権力を持っているのを諦めている社会」(意訳)という発言があって、まさにそうだなぁと思う今日この頃です。 ”逃走”が必要革新を短期間に繰り返さねばならない「呪縛」を背負った我々 まぁ、ちょっと前の連載で「XありのDX」(DXという単語も違和感しかないですが)じゃなきゃ意味がないというか、情報技術がこんなに早く進展する世界の中で「変革レベルの環境変化」が数年単

DX戦記8~XありDXの王道ルート

敢えて言おう、いわゆるDXの道のりは厳しいとそもそも、日本以外では流行っていない「DX」を目指すのは、日本特有の困難さがあるためです。 私が進路指導を受けたのはウン十年前ですが、IT業界を目指すと言ったら、教師から「ITなんて食えないから考え直せ」と言われました。 正直、いま、日本企業の中堅から経営者に差し掛かる世代は、こんな感覚の中で教育を受けてきた世代なんです。とはいえ、延々とこの状況は続いているようですが。 はい、こんなドラッカーさんが半世紀以上前に指摘した事を認

DX戦記7~D with Xの失敗ルートは明確

50年前のテクノロジーベースのプロセスで勝てるわけがない日本以外の世間的には「DX」とは言わずに、単に「X」なのですが、それを進めるためには、日本はITリテラシーの欠如による旧態依然としたプロセスが立ちはだかります。 下手すると50とか100年前のテクノロジー基準で作られたプロセスです。 例えば、紙に印鑑を押すことで組織内の承認が回るとか。FAXとかですね。 「そんな事無いよ、うちはパソコンもMicrosoft365もあるよ」と言いたくなるもの分かりますが、印刷したものが

DX戦記6~XありDXの道筋を考える

前回、XありDXの構造として「パンテオンモデル」という独自の行動スキルを定義しました。今回はその続き。 パンテオンモデルで表す「いわゆる日本的企業(JTC)」Japan Traditional Companyというネットスラング(日本語)を聞いたとき、ああ上手い事いうねぇ、と思いました。 いい感じに解説していたブログがあったのでリンク貼っておきます。 なお、私はこのブログで指摘されている通り、かつてJTCに務めていて、不思議な力が嫌になって辞めた派です。このあたりの分析も