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新卒入社1ヶ月以内に退職代行サービスを使う理由とは?

もうすぐ4月も終わり、
昨日からGW初日という方も多いことでしょう。

そんな中、先日入社したばかりの
新卒社員の退職代行サービスが流行っている
と報道が過熱しています。

Xでもトレンドワード入りした
退職代行」について
あなたはどんな感想をお持ちですか?

せっかく入社した会社に対して
退職の意志で自分で伝えないなんて
随分と失礼な奴だ!

新人のくせに直ぐに辞めるなんて
今の若い奴は根性のないな!
自分の若い時は…

こう思った方は
少し見方を変えていく必要が
あるかもしれません。

管理職の世代の方には
とても理解できない辞め方である
退職代行サービスについて
以下の考察をしていきます。

ポイント①
入社1か月もしない間に
なぜ、すぐ辞めてしまうのか?

ポイント②
なぜ、退職の意志を直接伝えずに
「退職代行」を利用するのか?

ポイント③
新卒の退社は今後増えていくのか?

また、退職代行サービスから連絡が入って
実際に困っている人事担当者に向けて、
どうすれば良いかも考察します。


1.利用者から聞く主な声


新卒で入社してまだ1か月も経っていないですが、
退職代行サービスは大忙しのようです。

入社1か月もしない間に
なぜ、すぐ辞めてしまうのか?

この問いの答えは
マスメディアでも大きく取り上げられて
居ますので、一般論として挙がっている
退社理由を以下に列挙します。

①最初に聞いていた内容と実態が異なっていた

 これは休日や仕事内容など多岐に渡ります。
 事前に受けていた説明と違うケース
 説明不足で勘違いしたまま入社したケース
 様々な事情があります。

②配属ガチャ、上司ガチャ

 まるで配属先が確定しているような説明を
 受けていたにも関わらず、辞令交付では、
 希望と違う配属先になっていたケースです。

 また、入社までは人事の人と接してきて、
 「良い会社だ」と思って入社したのに、
 「現場の上司からパワハラを受けた!」
 という声もよく耳にします。

③精神的につらくてやめた

 学生時代と違い、週5日、8時間働くことが
 一般的な企業ではアルバイト時代と違う形
 で様々なストレスが掛かります。

 それでも研修の間は同期との交流もあり、
 同世代の仲間がいて何とか乗り切れたが、
 いざ現場へ配属されると、仕事の日々が
 始まります。そのギャップに耐えられない
 という話をよく聞きます。

 また、そんな新人をフォローする義務がある
 はずの先輩や上司が、「教育」と称して、
 理不尽な指導をしてしまうと、新入社員から
 見たら「もう彼らとは関わりたくない!」と
 感じてしまうのは無理もありません。


どれも会社あるあるですよね?

私自身も新卒入社の時代は理不尽な思いをした
経験がいくつもあります。

「そういう経験を経て一人前になるのでは?」

こう感じてしまう時点で
私も既に考えが古いのかもしれませんね。

ただし、これは昔からよくあった現象です。

当時なら、「バックレ」や「飛んだ」と
言って、急に音信不通になるケースが
退職代行に姿を変えただけに感じます。

連絡をしてくれるだけまだマシ、
貸与物の回収が大変だったから…
そう考える人事担当者も少なくありません。

なお、
この話題をニュースで目にした大抵の人は
「最近の若い人は根性がないなぁ~」
と世代の問題にして片付けてしまいます。

そんな話では全くないのですが…
さらに掘り下げていきたいと思います。


2.退職代行サービスの仕事内容


では次に、退職代行サービスの側へ
目を向けていきましょう!

実際に退職代行の業務とは
どのように進められていくのか?
実際の業務の流れをご紹介します。

【退職代行サービスの流れ】

①顧客からの依頼を受けるシーン
・依頼者の事情を確認する
・(すぐ退職にできるケースの場合)
 料金体系や申し込みの話を進める
・退職届は自分で作成する必要がある旨や
 貸与物の返却等の手順と、代行サービス
 で行う概要の説明をする

(依頼者が納得して申し込みが終わると
 次のフェーズへ移行する)

②企業への連絡するシーン
・電話元の素性(退職代行である旨)を伝える
・依頼人の氏名、退職する旨を伝える
・連絡先は退職代行の会社までと伝え、
 ご本人は連絡を取りたくない旨を伝える
・退職届の手続きに関する確認
 退職届や貸与物の返却などの手続きの
 確認をして終話する

(トラブル防止のため)
※退職届などの書類の送付は書留で送付が基本
※追跡番号を退職代行の会社へ伝える

③アフターフォロー
・企業側が退職を妨害するケースや
 必要な書類を送らないケース等の
 トラブルが発生した場合は間に入って話をする

ざっくり、このような流れとなります。

料金形態も数万円程度なので、
メンタルに負荷をかけるよりも
お金で気軽に片付けてしまえる点が
このサービスの魅力といえます。

なぜ、退職の意志を直接伝えずに
「退職代行」を利用するのか?

この問いの答えは、

辞めさせてくれなくて困って仕方なく…
というケースも勿論ありますが、

新卒1か月以内で早期退職の場合は

後ろめたい思いをしなくて済む

これが実態だと思います。

彼らも普通に非常識だって分かっています。
新卒の社員も申し訳なさで辛いんですよ。

ただ、退職代行が周知されたことで、
今後も利用者は増えていくと予測します。


3.企業側の対抗策


自由な退職が認められている日本では
一見、防ぎようがないように感じますが、
企業側も慰留する以外の手段として、
制度面で対応する企業が出てきました。

それは
「就業規則で退職代行の利用を禁止する」
という方法です。

なぜ、これが有効なのか?
法律面を見ていきましょう。

まず、退職の自由について憲法では、
奴隷的拘束の禁止(憲法18条)
職業選択の自由(憲法22条)
定めれており、法律で保障されています。

次に、退職までの期間は
原則、就業規則で定めれていない場合は
2週間前までに告知するとされており、
就業規則で定めがある場合においても、
やむを得ない事情がある場合は即日も可能です。

【期間の定めのない雇用の解約の申し入れ】

当事者が雇用の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができる。この場合において、雇用は、解約の申入れの日から二週間を経過することによって終了する。

民法627条1項

【やむを得ない事由による雇用の解除】

当事者が雇用の期間を定めた場合であっても、やむを得ない事由があるときは、各当事者は、直ちに契約の解除をすることができる。この場合において、その事由が各当事者の一方の過失によって生じたものであるときは、相手方に対して損害賠償の責任を負う。

民法628条

ここで定義されている「やむを得ない事由」とは、
・会社の賃金不払い
・パワハラやモラハラ
・本人の病気
・家族の介護

等の事情を考慮して判断されます。

2週間を超える解約予告期間の設定は無効
が判例でも認めらているケースがあります。

以下で詳しく解説されていますので
興味のある方はご参照ください。

引用:厚生労働省(7-1「辞職」に関する具体的な裁判例の骨子と基本的な方向性)

最後に、上記を踏まえてた上で話を戻します。

民間業者である「退職代行」サービスは
法律上でいう「代理」ではなく「代行」のため、
法律上では、交渉権を持たない伝言役です。

従って、本人の意思が確認出来ないことを
理由に、就業規則で禁止と定めることが
可能なのです。

たとえ真の目的が、気軽に辞めれないように
抑止することだったとしてもです。

※代理と代行の違い
「代理」は法律面の代理人として交渉する権利(弁護士のみ)
「代行」は退職の意志を伝えるのみ(法的にグレー)

従って、就業規則で期間の定めがあり、
やむ得ない事情に該当しない場合において、

企業側は就業規則を追加して、
民間の代行会社と使っての退職は禁止。
必ず退職面談を経て手続きを行うものとする。

と定めることが可能となる訳です。

これによって、やむを得ない事情がない場合
労働者は正規の手続きを求める形となります。
内容によるが、慰留の機会も失わず済みます。

ただし、この方法にも労働者側は対抗策があり、
弁護士に依頼してきた場合は、これを覆せない
ということも覚えておいてください。

法律>就業規則の関係にあるため

弁護士は「代理」が可能ですから、
正式に本人の代理として交渉する権利
認められているという訳です。

つまり、整理すると…

企業側としては就業規則によって、
労働者が退職の意思表示してきた場合、
民間業者による一方的な通知に対しては
一定の制限が可能です。

しかし、

民間の代行会社が弁護士に変わった時点で、
代理人による手続きが可能であるため、
慰留も選択肢からなくなります。

従って、

実質は制度面を変更しても
結果は覆せないという結論になります。


4.辞めさせないより、辞めたくない企業へ


新卒の退社は今後増えていくのか?

冒頭で立てた問の答えを最後に考察します。

結論から申し上げると、
最近になって3年以内の離職率が上昇したという
データは見つかりませんでした。

厚労省「学歴別就職後3年以内離職率の推移」より一部抜粋


どの時代も大体、3年で3割は辞めており、
今回の一連の報道は、新卒の極稀なケースで
手段が目新しいという理由から、
トレンドとして祭り上げただけに過ぎないと
結論づけて問題ないと私は思います。

しかし、ただのニュースとして
終わらせるのは、待っていただきたい!

今後の採用戦略上、企業側の努力として、
以下のような「誠実さ」が求められる…
そう教訓として活かすべき、と私は主張します!

・雇用のミスマッチを減らすために、
 採用時に企業の情報開示が求められる
・メインとなる仕事の詳細内容、
 直近の数年間で行う勤務内容を開示する
・5年、10年後のキャリアビジョンを明示して、
 会社に長く居続けたいと思ってもらえるように
 努力することが求められる

言いにくいことは言わない。
臭い物には蓋をして見せない。


このような過去の人事における当たり前
SNS炎上というリスクを考えて愚策といえます。

また、転職が当たり前になると
いわゆる新卒カードの有効性も薄れてきます。
若い人材は獲得競争が激化の一途です。

だからこそ、労働者側は入社当初から
数年で辞めるつもりで入社する新入社員
が一定数いることは忘れてはなりません。

以下はマイナビの調査結果になります。

マイナビ2023年卒大学生インターンシップ・就職活動準備実態調査

このデータから読み取れるもねは
不安定な時代だからこそ、
できるなら、定年まで勤めあげたいと
安定を求める人は全体の約3割います。

しかし、一方で
3年以内で辞めるという人は6.1%、
6年以内では28.0%、
9年以内では40.4%となり、

新卒の約4割は10年未満で転職する
ことを前提として入社しています。
これもまた事実なのです。

こうした背景を踏まえ、
各企業の人事は組織や評価を形作っていく
必要があると私は思うのです。

私がこれまで色々調べた中で
一番腹落ちしたものとして、

長く勤めてもらえるために必要なことは
組織効力感」※であると思います。

※組織の一員として自分やチームが
 目標を達成できると信じる感覚

現在は
SNSの発達
働く人の価値観の変化
超売り手市場や労働者不足 等
様々な要因から、

労働者のニーズに企業側が合わせる方向へ

世の中は動いているという事実は
人事担当者の共通認識として持ち、
人事制度の改善や採用施策を立案に
あたっていく必要があります。


如何だったでしょうか?

少し前に流行った自己啓発系の用語として、
以下のような言葉が流行りました。

自己効力感=自分ならできると信じられる力
自己肯定感=ありのままの自分を受け入れる力

年功序列も終身雇用も保障されない
不安定な時代を生きる現代人にとって

組織人としてより、個人に目を向け、
転職でキャリアアップをしていくという
価値観が広まったことは間違いない、
そのように感じています。

だからこそ、
「自分ならできる」
育成と同じくらい大切なものとして
「このチームなら何でもできる」
最強のチーム作りに目を向けていくことが
人事に求められる力ではないでしょうか?


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