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人事で活躍する「データ活用人材」のイメージ

こんにちは。WorkTech研究所の友部です。人事でデータ活用を行いたい、と思ったとき、必要となるのはデータを効果的に扱える「データ活用人材」です。

データ活用人材のイメージは、事業で活躍するデータサイエンティストの要件など参考になるでしょう。育成に当たっては、データサイエンティスト育成の講座など、材料となるものはいろいろあるかと思います。

では、「人事で」データ活用ができる人材はそのイメージと同じなのか、それとも違うのでしょうか。これまで事業におけるデータ分析と人事におけるデータ分析両方の経験からすると、共通のところもあれば、異なるところもあると感じています。今回のnoteでは、人事でデータ活用ができる人材のイメージについて書きたいと思います。

人事でデータ人材として活躍している人の特徴

これまでいくつかの会社で人事部門で一緒に働いたり、ディスカッションを行ってたりしてきた中で、人事のデータ人材として活躍している人たちがいました。その人達には、共通して以下の特徴がありました。

  • 技術に関するキャッチアップ能力・興味

  • 人事データとの距離感

  • 几帳面さ・真面目さ

もちろん、データ人材としてのスキルや素養などもあるかとおもいますが、「人事で」という観点だと上記の3つが共通の特徴と感じました。以下では、それぞれの特徴について説明いたします。

データ活用の技術に関するキャッチアップ能力・興味

人事でデータ人材として活躍していた人たちの特徴として挙げられるのは、データそのものを扱う能力です。ただ、多くの人事では部門内にデータサイエンティストを抱えていたり、データの扱いに長けているメンバーがいたりすることは稀有かと思います。

そのため、人事部門でこれからデータ活用をスタートさせようとすると、アサインされた担当者は独学でなんとかする、という状況が多くなります。そもそもデータ活用系人材は人材市場でも希少ですので、もし社内にいる場合でも事業へ優先的にアサインされ、人事部門にアサインされることは難しいと思います。

このような背景もあり、データそのものを扱う技術については担当者自身で身につける必要があります。データを活用することそのものに対する興味や、データハンドリングに関する技術のキャッチアップを自走してできる、というのが現状ではとても重要な要素になっていると感じます。

人事データと適切な距離感が取れる

データを扱うためにどういった技術が必要か、については事業でも人事でも大きく変わりません。一方で、扱うデータについての向かい方は大きく異なります。特に「データ分析の対象」「データ分析する人」の距離の距離感が事業と人事では異なるケースが多いです。

人事では当たり前ですが扱う多くのデータは自社の従業員についてのものです。ということは、顔のわかる誰かのデータを扱うことになります。「対象」と「分析する人」の距離が非常に近いので、人事が蓄積しているデータ以外の情報も分析者の頭の中にあるでしょう。データ分析していると、ついつい人の顔が見えてしまう。これが分析においてバイアスになり、客観的な判断を下すことが難しい、ということが起こります。

給与データなどがわかりやすい例です。同期の給与が見えてしまったりするので、その中に自分をおいてしまうと、具体的なイメージで比較できてしまう。前々職でデータ分析チームのマネジメントをやっていたときは、部下に「友部さんて思ったよりも給料高いんですね」と言われたりもしました。どういう意味なのか若干引っかかりますが、これもデータと適切な距離を置けていない悪い例でしょう。

人事データも十分に揃っているわけではないので、ある程度仮説を立てながら議論を進めなければなりません。そうした時にこういったバイアスはネガティブに作用することが多いです。自分を切り離して人事データと距離を置いた上で向かい合える、というのはデータ人材として重要な要素になります。

こういった状況を作らないために、誰のデータかわからないようにする処理を加えること、例えばダミーIDなどを用いて処理する、という方法もあります。一方で、データ分析で客観的な結果を判断しつつ、仮説を深ぼるために足りない情報を補う、といったことも必要な場面もあります。データと客観的に距離を取る、というのはシステム面でもマインド面でも対応方法はありそうです。

いずれにしても誰のデータかわかった上で、客観的にデータを捉えようとする、という能力は必要となりますが、その人の性質にもよるのでなかなか難しいかな、とも感じているポイントです。

几帳面さ・真面目さ

人事では「従業員のデータ」という非常にセンシティブなデータを取り扱っています。データを扱う、という中に「集めて、蓄積する」というデータの守護神的な仕事も含んでいます。その役割を全うするために、性質として几帳面さ・真面目さのようなものも大事です。

人事データを集めるのは大変です。ログデータのように自動で集まるような仕組みがあればいいですが、人事データの場合業務フローに合わせて人がデータを入力する、という場面もたくさんあります。人がデータを入力する場合、意図的ではなくても、データの欠損や表記ゆれ、のようなエラーを含んでしまうことがあります

集めるべきデータがちゃんと集められていなければデータの欠損が起きます。データが入力されていても、システムや入力規則が整備されていないと、表記ゆれが置きます。人によって半角でいれたり全角で入れたり、正式名称を使ったり略称を使ったり、データとして同じものを同じと判断できない状況になってしまいます。

これらを放置していると、いざデータを活用したい、分析したい、となった時に利用することができません。そのため、常にデータの状況に気を配り、データの表記ゆれが起こっていればそれを修正し、データの欠損が起こっていれば担当部門にワーニングを上げる、といった動きが必要です。

私のような適当な人間な場合、いざ分析する、という場面で非常に困るので、こういったデータを「生きた状態」にキープできる、というのは非常に重要です。そういったことに気づく、というのも人事で活躍されているデータ人材の素養だと思っています。

人事のデータ分析人材のイメージ

これまで一緒に仕事をしてきたデータ人材の方々の特徴を書いてきましたが、もうちょっと一般性のある話をしたいと思います。

データ分析人材ですが、人事で活躍するからといって、純粋にデータを扱うスキル・マインドなどは、いわゆるビジネスにおけるデータ分析人材とは大きく変わらないと思います。

データ分析人材に必要なスキル

スキルについては、ビジネスによけるデータ分析と共通なのは以下のようなものが求められるでしょう。

  • データハンドリングスキル:データを収集・加工・分析・可視化できる

  • 統計的知識:データの特徴や傾向を把握できる

  • ビジネススキル:目的や成果を適切にコミュニケーションできる

これらを下支えするため、ロジカルシンキングや数字に強い、というようなことも必要です。強いて言えば、AIや機械学習を取り扱うためのデータサイエンススキルもあると良いですが、人事領域でそこまで必要になる場面はあまり多くありません。また、データ基盤を構築できるデータエンジニアリングスキルもあるとよいですが、ゼロから基盤を構築する場合にはIT部門の力などを借りることになると思われますし、HRSaaSなどを導入するといった手段もあるので、必ず必要というわけではありません。とはいえ、データ人材のキャリア、という観点では、人事以外に進むのであればこれらのスキルを身につけることはキャリアにポジティブに働くでしょう。

これらに加え、人事のデータ分析人材としては「人事に関する知識」が必要となります。とはいえ、これはビジネスでも必要な対象領域に関する「ドメイン知識」ですので、スキルとしては共通です。

データ分析人材に必要なマインド

マインドに関して、ビジネスにおけるデータ分析とも共通で必要なものは以下のようになります。

  • ビジネスマインド:目標を設定し、それを達成するために他のスキルを活用する

  • 目的意識:データ活用の目的は何なのか、アクションは何なのか、設定できる

  • 変化志向:変化する社内の状況や新しい技術や手法に対して、柔軟に向かい合う

  • オープンマインド:他者の意見や視点を尊重し、多様性や協働を重視する

  • 試行錯誤を厭わない:きれいに仮説を出すことは難しいので、粘り強く何度も試行錯誤しながら確からしい仮説を見つける

  • 学び続ける:知識や技術をキャッチアップし続ける

これに加え、活躍している人の特徴で述べたような人事データとの距離感や人事独自の几帳面さ・真面目さが必要になるかな、と思っています。

これから人事でデータ活用をはじめよう、としたとき、こういった素養を持った従業員を探してみる、というのも第一歩になるかなと思います。また、現時点でデータ活用に関するスキルがなくても、人事に関して興味があり、さらにこういったことをやっていきたい、と思う方がいらっしゃたら手を挙げるのも良いと思います。

今回のnoteでは人事でデータ人材として活躍する人の人材像についてお話しました。活用するためには担当者を決める必要があるかと思いますが、その際に参考にしていただければと思います。また、こういった人を人事で増やすために、WorkTech研究所としてどういったサポートができるか考えていきたいと思っています。

人事データの活用や、人事関連の指標の開発、分析の考え方などWorkTech研究所へのご相談やnoteへのリクエスト等ございましたら、引き続きお気軽にお申し付けください!
最後までお読みいただき、ありがとうございました。


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