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削りきれなかった自分らしさ

新卒で会社員になって数年。嬉しいときも悲しいときも悔しいときもゲッソリなときも。沢山悩んで傷ついて学んできたけれど、会社員としての働き方は、私にとっては自分らしさを見ぬふりする生き方だったかもしれない。

大学3年生の秋頃。所謂意識高い系の学生たちは、企業インターンに行っていて、内定を得ている人もいた。留学から帰ってきたばかりの私は、就活に出遅れた焦りを感じて、冬のインターン選考を受けまくっていた。ある企業のインターンを経て、内定が決まった。ほっと一息ついたときには心が疲れきっていて。内定者研修期間の途中で辞退することにした。
大きな決断だったけれど壊れたくはない、生きたいと思った。
結局4年生の夏に入社することになる企業から内定を貰った。ガツガツと営業するようなことのなさそうな穏やかな環境を選んだつもりだった。

入社して半年後、配属先は労務の仕事。数万人分の給与計算は想像以上に難しかった。現場勤務の人、海外駐在の人、組合専従入りの人…色んなパターンが押し寄せてきた。従業員からは扶養のことなど問い合わせの嵐。早く答えてあげなきゃとプレッシャーに感じる日々。繁忙で周りにもなかなか質問できない雰囲気を感じてしまった。
焦ったり不安になったりするとミスが増える。ミスしないために感情に蓋をして無表情で業務を続けようと心に決めた。

自分の気持ちが抑えきれないところまで溜まったとき。張り詰めていた糸が切れるように目が覚めるのを感じたー自分を殺してまで何してるんだろうー

この時ほど自分らしさや感情に真剣になったことはそれまで無かった。社会に出る時は、なるべく安定していて知名度の高い会社に入り、会社員として卒なくこなすことが良いことなのだと信じていた。だから就活の目標はなるべく安定していて有名なところだったし、会社員としての目標は出る杭にならないように自分をコントロールしながら、穏便に業務にあたることだった。

でも私はわたしを、人間を捨てることができなかったようだ。蓋しても、削り落とそうとしても捨て去れない感情や頑固なじぶん。どこか遠くに忘れたようでいて、一番近くに、どうしようもなく残っているもの、これが私らしさ。

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