見出し画像

「お盆」 本多裕樹 詩

「お盆」



夏の暑さも死にいたる熱射

海の中で溺れ

女にも溺れる

悦楽の生命の中で私たちは生まれた

海の中から我らは出た

生命の味は海の味、

時の中で育まれて一つの生命が生成される

幻想の夢もまた消えて、

生命の生きる喜びが心みたす

夏の風をうけ

夏の日の影はまた美しき河川の流れに

日々の安逸な喜びを優雅にただよい流れる人生の一場面

人の踏み込むこともできない闇に

赤く染まった大地に夏の輝きもまた裏の輝きで

日々、知れし

日々、知っていて

日々、忘れていく

そして、心に刻まれていく思い出に

なっていくこともあろう

日頃、夢に見る太陽の光が

君たちに生命の可能性を与えてくれる

時のひずみもまたあろう

死者の世界の旅人もこの世に来ては

思い出話に華咲かせる様子もある

死者たちは夏に帰り

花々見ては喜んでいる

生と死の行き来が太陽の扉をひらき

私たちもその世界を旅するだろう

はるか死の世界も冥府の旅も

また、夢の中で

そうして、また、現世にもどれば

旅もさながら風に消えていく

思い出だけが残って

それも忘れて

無意識に広がる世界に

その世界があったことをいつか思い出すだろう

輝きの太陽もまた日々の生命の喜びとなって

夏はジリジリと太陽の季節

太陽の季節

ライオンのように

勇ましく

燦然と輝くのであった

夕闇もまた涼みに光降り注ぐ

そうして月の世もやってきたのだった




令和5年7月24日本多裕樹

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?