見出し画像

『デジモンアドベンチャー』のココがヘンだよ!ダークマスターズ編反省会

『新テニスの王子様』の感想記事をアップしようと思ったのですが、どうしてもこっちの方を先に書いておきたいと私の仙骨がビンビンに反応しているのでこちらを先に書いておきます。
漫画の「Vテイマー01」と比べてアニメのアドベンチャーシリーズは人間ドラマ偏重でバトル軽視の傾向が強いのでパワーバランスが滅茶苦茶であるというようなことを何度か書いてきました。
今回はその中でも特にパワーバランスがおかしかった無印のダークマスターズ編について、改めて原作の流れとともに振り返っていきますが、私が無印をバトル物として「駄作」だと思った最大の理由がダークマスターズ編です。

これは「02」で更に誤魔化しようがない形で露呈してしまうアニメのデジアドシリーズの問題点が以前にも書いたように「その場の脚本や演出の流れでいくらでも強さが変わってしまうこと」にありました。
そしてそれが私のような数多くのバトル物を見てきた私からするとごまかせなかったところであり、漫画「Vテイマー01」のしっかりしたバトルの構成に比べるとアニメ版は明らかに強さの演出に一貫性がなく杜撰です。
例えば40話でピエモンが「同じ究極体といっても、あなたがたは進化できるようになってから間がない…勝てると考えるのは大きな間違いです」と言っていて、実際に40話だけを見るとダークマスターズの実力はなかなかのものでした。
まあとはいえ、個人的には「Vテイマー」のタイチとゼロマルの圧倒的な強さや同じピエモンでもシグマのピエモンの方が圧倒的に強いのを知っていたので、タイチとゼロマルなら全員初見でエアロナックル一発で仕留められると思いますが(笑)

また、明らかに「いやこれはおかしいだろ」という展開もいくつかあって、最たるものが41話の海の家であり、明らかに罠だとわかっていながら太一を筆頭に全員が突っ込んでいこうとするのは「待て」と言いたくなります
そもそもダークマスターズが戦争を起こしてる非常時に出店なんかやってる余裕はありませんし、ヤマトと丈に至っては23話のデジタマモンのレストランで痛い目に遭っているのだから警戒するのが当たり前です。
まあダークマスターズがあまりにもトラウマだったから正常な判断力を失っていたとも考えられなくもないですが、問題はその後42話でメタルシードラモンをブレイブトルネードであっさりやっつけた時でした。
ホエーモンの犠牲があったとはいえあっさり片付いてしまったのを見ると「え?ダークマスターズ弱くね?」ってなってしまいましたし、それはピノッキモン・ムゲンドラモン・ピエモンも同じです。

まあ唯一脚本と演出の双方において信頼できたのはシリーズ構成の西園悟さんがお書きになった40話と48話ですが、西園さんは実は大のミリタリーマニアで「戦争」という空気や緊張感を出すのがうまい脚本家です。
48話は特に芝田浩樹さんの第二次世界大戦の東京大空襲を彷彿させる演出が凝っていて、しかもドラマ的にも太一とヒカリの過去のトラウマが出るなど、お話的にも戦争体験世代が描いた感が出ていました
しかし、他の浦沢義雄・大和屋暁・まさきひろ・前川淳・吉村元希・吉田玲子辺りはそういう世代ではないし人間ドラマ重視なので、バトルシーンの緊張感とかパワーバランスとかがいい加減なんですよね。
だから、最初の危機感を煽って追い詰める辺りはそこそこなんですが、問題はそこから逆転する時の持っていき方であり、「え?よくもまあこんないい加減な方法で勝てたなあ」と思えてなりません。

まあメタルシードラモンとムゲンドラモンはウォーグレイモンのドラモンキラーがあったこと、またピノッキモンに関してはヤマトとメタルガルルモンが闇落ち寸前だったので操り人形にならず逆転できたということで納得できなくはありません。
問題はピエモンであり、40話で出てきた時はガイアフォースとコキュートスブレスをそれぞれかわしトランプソードで無効化するくらい強く、51話でもその強さは変わらなかったのに52話で突然ホーリーエンジェモンやガルダモンら完全体の攻撃が通用しているのです。
これは明らかにおかしいですよね、例えばピエモンのHPがだいぶ削られていたとか、完全体デジモンが何かしらのパワーアップを遂げて強くなったとかいう理屈があれば納得できますが、そういう最低限の根拠すら示されないままなあなあで逆転してしまっています
しかもあそこで太一たちが「そうさ。選ばれし子供たちとそのデジモンたちが力を合わせたらこんな奴ら」とか言ってましたけど、その根拠が果たしてどこにあるのか私には皆目検討がつきませんでした

だってそうじゃないですか、40話の段階では8人がかりで揃ってもダークマスターズ相手に全く歯が立たず、その後も物語終盤だというのに仲間割れを繰り返したり窮地に陥ったりしているのに、なんで50〜52話になって太一が妙に強気になっているのか?
8人がかりでも敵わない」のがダークマスターズだったわけで、これが例えば「Vテイマー」だったら「一対一でも歯が立たない相手に対して集団で立ち向かったって敵わない」で、きっちり逆転のための明確なロジックを用意するはずです。
これは私が「ドラゴンボール」を始めジャンプ漫画の様々なバトルを見てきたからこそ余計にそう思うのかもしれませんが、「束になっても敵わない」のがわかっているのになぜ「選ばれし子供たちとそのデジモンたちが力を合わせたら」とか言えるのかが不思議でなりません
それこそダークマスターズ編に近い状況といえば「ドラゴンボール」のナメック星編のギニュー特戦隊がそうでしたが、ギニュー特戦隊は当時のベジータ・悟飯・クリリンの戦闘力で到底太刀打ちできる相手ではなく、瀕死の重傷を追いました。

逆転の突破口となったのは100倍の重力トレーニングを済ませて見違えるほどに強くなった孫悟空の登場であり、ベジータがあれだけ苦戦したリクームを無傷のまま肘打ちで仕留め、さらにバータとジースすら余裕で圧倒して仕留めています。
まあその後ベジータも仙豆をもらって超回復したことでギニュー特戦隊と対等に戦える力を手にしたわけですが、「ドラゴンボール」の場合はサイヤ人の超回復理論や重力トレーニングのような強くなるための理屈がしっかりしているのです。
だからVジャンプに掲載されていた「Vテイマー01」もこの原則をしっかり継承してうまくタイチとゼロマルが格上の相手を倒すのに納得いく流れをタイチの戦術・戦略とゼロマルのスペックの両方から示しています。
大輔がマグナモンを召喚してパラレルモンを倒した時だってその辺りの強さの格はしっかり担保されていたので、私は「Vテイマー」こそが真の「デジモンアドベンチャー」だと今でもずっと思っているのです。

しかし、アニメの「デジモンアドベンチャー」では「戦闘経験値をもっとつんで大幅強化」とか「足りない部分を訓練を積んで完全体でも究極体を相手できるほどに強くなる」とかいった技術面の向上を図る努力はしていません
少なくとも「ドラゴンボール」のような「修行」「潜在能力アップ」といった明確な強化手段が示されているわけではなく、また例えば「戦闘経験値を積めば積むほど戦闘力が向上する」という生粋の戦闘種族でもないのです。
その代わりに何を入れたかって45話が典型的ですが仲間割れからの闇落ちといった、なんの意味があるのかわからないメソメソウジウジさせて視聴者の共感を誘おうとする「お気持ちーず(笑)」でした。
だから無駄な人間ドラマに尺を割くくらいなら、「どうやったらダークマスターズを倒せるか?」に意識を集中させて全員でがっつり戦闘力も含めた全体的なスキルやチームワークの強化を図るべきだったのです。

それすらせずにその場のノリで誤魔化すように「選ばれし子供たちとそのデジモンたちが力を合わせたらこんな奴ら」だの「一人の紋章はみんなのために、みんなの紋章は一人のために」だのと空疎な抽象論ばかり宣うから説得力がありません
昨日紹介した矛さんのコラムでは「デジモンアドベンチャーはキャラの描写が丁寧な作品だった」と言っていますが、確かに「キャラの描写」は丁寧ですが「バトルの理屈・パワーバランス」に関しては演出も含めて無茶苦茶です。
何だったらバトルシーンの見せ方に関してはリメイクの「アドコロ」の方が全然マシなくらいで、あちらは形成逆転するときに「なぜそれで逆転できるのか?」の理屈がそれなりに用意されていましたからね
無印はあれだけの脚本家・演出家を揃えておきながら「セーラームーン」もびっくりなレベルのしょぼいバトルしか描けておらず、特にそれが純粋な「強敵を打ち倒す」ことが目的のダークマスターズ編で顕著に露呈したという感じです。

だから私はリアルタイム当時から無印を信者が評するような名作なんて思ったことは一回もないんですよね、なぜかってバトルものとして見たら明らかにパワーバランスその他がめちゃくちゃだからに他なりません。
もちろんこれは無印だけじゃなく「02」「テイマーズ」と続いていくシリーズ物の欠点になっているのですが……分けても無印のダークマスターズ編は今見直すとまともに見られたものじゃないですね。
作画も動きも低レベルな回だって多いし、結局のところは信者が思い出補正で過大評価してるだけで、こういう厳密なバトルのルールやパワーバランスを突き詰めていったら当然ボロが出てきます。
ただ、無印信者にこういう話をすると無駄な感情論に走って見苦しい擁護をしてくるのでまともな議論にならない、というのがあるわけですけど。

別に人間ドラマ重視の作品が悪いとは言いませんが、それ以前にまずデジモンは「モンスター育成バトルゲーム」なのだから、その枠を遵守した上で作れよという話です。
そしてそれを完璧に満たせていた作品は私の知る限りではやはり漫画の「Vテイマー01」のみであって、アニメシリーズの特に無印は信者が思い出補正で脳が錯覚して目が曇ってるだけではないでしょうか。

この記事が参加している募集

アニメ感想文

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?