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関東大会決勝における越前・不二・赤也・真田の力関係と立海の敗因を考察

今回は関東大会決勝の立海戦の話ですが、メインは越前・不二・赤也・真田の4人の力関係と立海の敗因についてです。
私はリアタイ当時から青学がまさか立海に勝つとは……と思っていたのですが、実際の内容をよくよく見ていくととても納得の行く内容になっていました。
しかし未だにSNSの反響を見ると「なぜ立海が負けた?」だの「関東で青学が勝ったのはリョーマの主人公補正」だのといった声が未だにあちこちから聞こえてきます。
別にその人たちの気持ちがわからないわけではありませんが、なんども言うように「勝ちに不思議の勝ちあり、負けに不思議の負けなし」です。

今回もその観点から原作の(アニメはアニメで全くの別物なので無視)関東立海の流れも踏まえながら考察して行きましょう。
したがって、今回の内容は立海ファンや赤也・真田推しの方々にとってはとても辛辣な批判とも取られるものになることは前書きしておきます。
そういう方々は本記事を読む前にそっとスクリーンを閉じていただくことをお勧めしますので、それでも良いという方だけご覧ください。

越前・不二・赤也・真田の力関係


今回の記事で一番私が注目したいのはS2とS1の4人の力関係なのですが、結論から言えば越前≧真田≧不二>(超えられない壁)>赤也というところでしょうか。
ぶっちゃけ4人の中で一番弱いのは不憫な赤也ですが、それこそ才能やスペック・実力でいえばこの4人は大差がなかったというのが個人的見解です。
許斐先生は初期のインタビューで青学は主人公校だからこそあえてドラマを設けて苦戦させているという旨のことを言っていました。
それこそ越前なんて最初の段階から海外のアメリカジュニアテニス大会4連続優勝していて環境も血筋も抜群と強さの源泉は描かれているのです。

そして青学もまたそんな越前に負けないだけの個性の強い連中が揃っていて、立海も同じように青学に負けないだけの個性強い連中しかいません。
20.5巻や40.5巻を見ても許斐先生の中で立海が関東と全国の双方で青学に勝つというプランは想定されていなかったのではないでしょうか。
しかしそれはあくまでもメタ的な事情であって劇中の関係性としてそれにどの程度納得しうる物語を提示できるかが腕の見せ所ではありました。
だから私は「立海が青学に勝つべきだった」なんてことはみじんも思っていませんし、むしろ物語の背景などを踏まえて見ると、それこそなるべくしてなった結末です。

興味深かったのは立海本戦前に越前が赤也と草試合したところからS2・S1への流れだったのですが、ここで一気に番狂わせが起こったという気がします。
それでは具体的な試合の流れも踏まえつつ、どのようにして上記の力関係が出来上がったのかを見ていきましょう。

越前VS赤也(草試合)


最初の大きなターニングポイントはここですが、初期から貼られていた越前VS赤也という因縁を本戦ではなく草試合で消化するという流れが当時は意外でした。
てっきり真田と試合をするのは不二だと思っていましたからまさかここで来るかと思っていたのですが、まずこの試合を分析すると敗因は「意識の差」です。
越前が赤也と試合するまでの流れを見ているとわかりますが、赤也は完全に青学を舐め切っていて、越前はそんな赤也をはじめとする立海を脅威に感じていました。
実際越前は「このままでは切原(あいつ)に勝てない!」と立海大の恐ろしさを肌で感じ、COOLドライブを完成させようとしていたのです。

これに対して赤也はジャッカルと共に「本当のテニスができんのってあの人くらいでしょ?」と青学を手塚のワンマンチームだと思い込んでいました。
氷帝戦の越前VS日吉まで見ていながら赤也は何をほざいてるんだろうと思っていましたが、案の定その慢心と思い込みによって足を掬われてしまうのです。
無我の境地によってバフがかかった最強モードの越前にあっという間に負けてしまいますが、許斐先生も仰る通り普通に考えればこの草試合は越前が負けるでしょう。
ところが赤目モードのパワーアップに対して越前も無我の境地でパワーアップして赤也はそれに対応できずコテンパンに叩きのめされてしまいました。

では実力差としてはどうだったのかというと、赤目モードがない素の状態ではほぼ互角、どころか越前の方がセンスやメンタルも含めて上です。
しかも赤也は最初に越前のパワーアップしたツイストサーブで弾き飛ばされていますから、この時点で越前が自分を食うだなんて思ってもいなかったでしょう。
実際赤目モードに入ってナックルサーブを打つ際に「正直ここまでやるとは微塵も思っていなかったよ」と言っていましたから、越前を今叩き潰しておこうと思っていました。
しかし、そこでピンチに追い込まれた越前がまさか無我の境地を発動するという想定外を見せるとは微塵も思っていなかったらしく、あっさりやられてしまいます。

じゃあなぜこんなことになったのかというと、赤也がスピード試合に異常なまでにこだわっているのは激昂しやすい性格だけではなく、元々スタミナがないからでしょう。
スタミナ不足をスピードでカバーし、赤目モードで一時的にバフをかけて能力アップさせて倒す、そうしなければ赤也は負けてしまうのです。
実際赤也は新テニに入った今でも短期決戦のスピード型として描かれていて持久戦向けのキャラクターではないので、だからこそ越前のベストテンションの恐ろしさを日吉戦で感じていたのでしょう。
越前はスタートアップよりもむしろ後半に向けて尻上がりに本気を見せていくタイプなので、まんまとそのパターンにハマってしまい叩きのめされたのです。

しかし、この時の赤也は越前に負けたことを単なる偶発的なものと何処かで思い込んでいて、完全に実力で負けたわけではないと何処かで思っていたのでしょう。
真田の鉄拳制裁を食らってもなお自分に敗因があるとは思っていない節があって、それが「先輩たち見せ場作りすぎっすよ」という発言にも繋がっています。
普通人間は一度負けたら認識を変えるものですが、あんだけ無様な負け方をしておきながら赤也はまだ青学を手塚のワンマンチームだと思い込んでいたようです。
そしてこの認識が大間違いであることを思い知らされるのがS2での不二周助戦でした。

不二VS赤也(S2)


この試合に関しても敗因は結局のところ不二周助のことを手塚の格下くらいにしか思っていなかったことが赤也の敗因だったのではないでしょうか。
何せ試合前に「天才ってさ、一度潰れれば案外脆いんだよなあ」と不二相手に命知らずな煽りをしていましたから、もうこの時点で赤也の負けフラグは立っていました。
ところがどっこい蓋を開けてみれば不二は越前の膝を執拗に狙った怒りを自分ごととして捉え「やはり越前の膝、キミか」と越前と同じように赤也の危険性を警戒していたのです。
だからこそ不二は最初から臨戦態勢だったわけであり、普通なら越前と同じように尻上がりにカウンターを出していく不二が最初からかなり好戦的な感じでした。

不二は赤也の赤目モードすらも圧倒していましたが、この時打ち合いの中で勝敗に執着できない自分のことを思いながら手塚との過去のやり取りに浸っていました。
その隙を狙われて不二は目が見えなくなるわけですが、普通ならここで負けてもおかしくないところを「心の瞳(クローズドアイ)」を開いて赤也を再度圧倒するのです。
ここで初めて不二の底知れない才能の片鱗を見せつけられますが、赤也も赤也でこの試合の中でなぜここまで勝ちに執着するのかが描かれます。
赤也が立海大に入った理由はあくまで「全国No.1の学校でビッグ3を倒してNo.1になる」という野望を秘め、それを達成することにあったのです。

しかしその野望は入部当初に無残にも打ち砕かれてしまい、そのことが赤也の焦燥にもなっているわけですが、要するに赤也はビッグ3を倒すことしか視野に入れていません。
「手塚以外は雑魚ばっか」と青学を見下していたのも手塚国光が立海ビッグ3ですら一目置く存在だからであって、赤也の根底にあるものはビッグ3への畏敬の念でありました。
要は視野が狭かったわけであり、限界を超えて越前リョーマと同じ無我の境地へ至ったものの、それでも力不足により反動でラケットが吹き飛ばされ不二に負けたのです。
草試合の越前のみならず本戦の不二にまで負けるという無様な醜態を晒したことによって、ようやく赤也は現実に気づいて目が覚めたのではないでしょうか。

赤也が2回も負けた理由は結局のところ視野の狭さと意識の低さにあったわけで、立海大のビッグ3を倒してNo.1になる=日本でNo.1になるという認識を崩されました。
越前は既に一度手塚に惨敗したことで父親一色の視点から脱却して視野を広げて様々なプレイヤーとの戦いに全力で挑み勝ちを手にするようになっていたのです。
そして不二もまたこの試合で才能のみで戦っていた人間が初めて才能だけでは戦いきれない状況に追い込まれたことで、勝ちへの執着を手にするきっかけをいただきました。
思えば不二も赤也もエースでありながら自己肯定感が低かったのですが、最終的には視野を広げた不二と視野が狭いままだった赤也との違いで決着が着いたように思われます。

越前VS真田(S1)


さて、ファンの間で一番の論争になっているのがこの越前VS真田ですが、結論から言えば真田が越前を心の何処かで甘く見ていて侮っていたことが原因ではないでしょうか。
試合の流れを見ていくと最初は無我の境地で越前が圧倒し、その後真田が風林火山の風を繰り出すも無我でその風が真似されるという流れになっていました。
ここまでは互角でしたが無我の境地には使いすぎると反動で疲労が襲ってくることが判明し、ここから流れは真田が主導権を握って越前を追い詰めます。
風林火山の「火」を繰り出して追い詰めるのですが、越前は一瞬だけ無我の境地を使って風林火山の風を繰り出して火を打ち消して無効化するのです。

ここからは能力バトルではなく普通のテニスで越前がイケイケドンドンで圧倒、しかし真田も負けじとライン上にロブを叩き込みます。
越前も負けじと球威で真田を圧倒してロブをアウトにし、更にツイストサーブ→ボレーという流れで真田を翻弄し、マッチポイントまで追い込みました。
そして最後の一球で何と真田も無我の境地を使えることが判明するのですが、使えることがわかってるんだったらなぜ出し惜しみしたのでしょうか?
まあ体力を無駄にしただけだからいいとしても、それだけじゃなく全国大会で披露した陰と雷すら封印して出し惜しみした挙句に越前に負けているのです。

真田の言動も「お前にはまだ早い」だの「この1年は摘んでおかなければいけない」だのとどこか「手塚の代理」として見ていた側面があるように思われます。
確かに越前の攻撃を高く評価しつつも「爆発的な能力を生かしきれていない」と評したのは間違いないですが、一方で反撃の隙を真田も与えていました。
そして最後に出てきた越前のCOOLドライブ、ドライブショット版の燕返しと言えるこの打球を真田は全く知らなかったのです。
ここで立海はまさかの情報不足によって最後は越前に負けてしまうという現象が起きてしまっています、まあこれは全国決勝のS1でもそうなのですが。

まとめると、実力の上では越前も真田も互角、何なら経験値も含めると真田が上だったのですが、差を分けたのはやはり意識と情報の差でしょうか。
越前はギリギリまでCOOLドライブを伏せながら真田を見下さずに攻め続け、真田は越前を圧倒する力を持ちながらも越前の末恐ろしさを甘く見ていて、またCOOLドライブも知らなかたのです。
皮肉にも真田は全国決勝S3でも零式サーブという手塚の「バウンドしない球」に苦戦することになるのですが、何れにしても負けるべくして負けたという印象です。
結局王者としての誇りが「驕り」につながり、更に試合中に進化してくる青学というチームの意外性や成長をきちんと正しく認識していなかったのがここで出た気がします。

関東大会決勝の立海の敗因は青学の恐ろしさを甘く見ていたこと


こうしてまとめてみると、関東大会で立海が青学に負けたのは別に主人公補正でも才能の差でも御都合主義でも何でもなく、「勝ちに不思議の勝ちあり、負けに不思議の負けなし」でした。
大体において勝負に負けるやつの共通項は「情報不足」「慢心」「思い込み」にあり、やはり立海もこのパターンで負けるべくして青学に負けたという感じです。
まず「慢心」「思い込み」ですが、これはもう端的にわかりやすく赤也の「あとは雑魚ばっか。本当のテニスが出来んのってあの人くらいでしょ?」発言にありました。
青学を手塚のワンマンチームであとは取るに足らない奴らばかりだと思い込み、データは取っていたものの全てのデータを把握できていたわけではありません。

上記したS2とS1以外でも例えば最初のD2はパワーリストを敢えて外さずに試合した結果圧倒したものの1ゲーム落とした挙句に逆転されかねない状況になるという舐めプをかましています。
D1にしても二重のペテンをかけていたというのは確かに良くできていますが、一方で大石の領域に関する情報は掴めていなかったし、S3の幼馴染対決に関しても同じです。
確かに立海は青学のデータのデータをしっかり取っていたものの、それはあくまでも「試合前」のデータであって「本番」のデータではありません
勝負に絶対はなく本番では何が起こるかわからないわけであり、それも含めて想定外の手で来られた時にどう対処するかというアドリブ力がこの当時の立海は低かったのです。

以前も書きましたが、立海が青学に対して脅威に感じていたのはあくまで手塚のみであって、他のメンバーは大したことないという思い込みがありました。
またこれは立海だけではなく氷帝も四天宝寺も一緒であり、白石なんて不二のことを「青学のNo.2やろ?あそこは手塚くんさえ押さえておけば」と鼻持ちならない見下しをしていたのです。
しかもガントレットを外さずに試合するという舐めプまでかましていたことが新テニで判明したわけですから、立海も四天宝寺もイマイチいい印象がないのはこの辺りが大きく影響しています。
要するに関東大会の立海は結局どいつもこいつも青学を甘く見て接待プレイをしていたところ窮鼠猫を嚙むような感じで思わぬ反撃を食らって負けたというわけです。

もっともこの時はまだ幸村精市という立海大の「悪」の象徴がまだ表面化していませんが、ここまで分析してみると彼らは最初から意識の差で青学に負けていたことがわかります。
もし青学を甘く見ずに全力で挑んでいたら結果は違ったのかもしれませんが、ここで個人的に言わせていいただきたいことがあります。

真田さんよ、たるんどるのは青学ではなくお前じゃ!!

はい、リアタイ当時から言いたかったことを今ここで漸く言えてスッキリでいい感じにここで締めとしましょうか。
青学の恐ろしさを甘く見た挙句に墓穴掘って負けたなんて、立海大もまだまだですね。

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