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雑音

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表題が無いものを投稿してあります。ナンバーのみです。
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記事一覧

【詩】067

揺れる視界には木漏れ日が煌めいて その光は鋭く伸びる私の腕に絡みつく 振り解いても離れないのは過去だと誰かがいう 白昼夢を見ているように色々な記憶が混在しては 私自身の輪郭を曖昧にしている たとえ苦悶するような最中でも 君のその表情には一瞬の陰影が 光を照らしてくれるだろう こんな汚い世界に生まれてきたことも忘れつつ 恍惚の感情が君を襲ってくる それはまるで嵐のように それはまるで静止するかのように この表現すら嘘に塗り替えたまま それでいい それでいいと思った

【詩】083

遠い昔に見たままの景色を いま目の前に再び見ている気がする これは幻想か もしくは果てしのない夢か 公園にあるブランコが赤色 その記憶は秋のなかで紅葉した 溶けるような熱気が充満する部屋の中で 香水を振りかけてみる それはすぐに実体を失って 空気中に逃げ去っていく 夕焼けを見つめていた犬は 自由を疑っていた 道端にある片足だけのスニーカーは まるでシンデレラを探すかのように 紐を投げ出しては魚釣りをしていた

【詩】015

粘ついた熱気と湿気に満たされた空間には 呼応する響きが断続的 あの工場に建っている煙突が 黒く、 一定のリズムをかき消すように踊っては 吸い込まれていく青空 僕の瞳はその瞬間を捉えきれず、 しつこく訴えかける この鼓動は痙攣し、 ひきつった微笑を沼地へと投げ入れる それはデジャブのように、 淀みない感情の奔流は 現実的な規範を逸脱し、 15年前の夏に僕を連れ戻す 記憶は陰り 現在は枝垂れながら その頭をもたげている

【詩】01.

なにもない虚無が 私の身体を囲う 私は空間を見つめるが 時は凍り付いたまま連続しない停滞 この意識は呼吸することを渇望するのか 日常を生きるということがもはや 遠い国の物語のように 神話化する 私は神を信じるか いやもうその存在に関心はなく 私は私という虚像に脅かされる 孤独に嫌気がさして街へ出かける その行為自体が孤独な意味性を帯びている 私は街のノイズを肌で感じながら 煙草に火をつけて下を見つめる