世界のすべてを知ることはできない | 500文字のエッセイ
図書館にある本を読破してやろうと、大学に入学したときに思った。というより、大学生ってそんなもんなんだろうと思っていた。
しかし図書館読破計画は、手塚治虫の全集を読み終えた段階で頓挫。到底読みきれんぞこれは、と諦めてしまった。
あ、それでも手塚治虫の作品をほぼ全て所蔵していてくれた大学図書館には感謝しているし、それだけでも読めてよかったなとは思っている。
知は迷宮のようだとよく言われるが、まさにその通りだ。知れば知るほど、知らないことが出てくるというのは、世界においてもっともたしかなパラドクスである。
最近切に、知らないことに対する貪欲さを意識するようになった。
学校で毎日小テストを課せられていた日々とは違って、知らなくたって生きていくことはできてしまう。
叱ることや諭すことは労力のいることだと皆んな知っているから、わざわざ知らないことを戒めてくれる親切な人はそう多くはない。
「知る」ということに意識的になるだけで、世界がちょっとだけ面白く見えてくるということを、なんとなく感じつつある。
世界の全てを知ることはできないけれど、それはネガティブなことではない。
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