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縁と涙のネックレス

【旅する飾り屋の話 ―縁の結び目の話―】

人と人が出会うことは縁と言う名の糸が結びあうような物だと話していた旅人がいた。
私が子供頃その旅人に会い、彼の語る旅話を聞くことで
これまでにないような感動と興奮を体験したことを覚えている。
彼が私の人生において鍵となる人だったことは間違いないだろう。

しかし出会いがあるという事は別れもあるという事。
旅人はある日突然、次の街へ行くと言った。
私はそれを聞いた時自分でも驚くほど大粒の涙を流しながら行かないでと言っていた。
きっと体中の水が無くなるほど泣いたと思う。

そんな私を見て彼は困ったように笑い、
しゃがみ込んで私の涙を拭い去りながら言った言葉は――。


***

『その旅人がきっかけで飾り屋は旅する飾り屋になったんだ。』
とある真夜中の宿屋。珍しく寝付けなかった飾り屋は夜にも関わらず
飾りを作りながら相棒のトランクと昔話をしていた。
『いつかまたその旅人と会えるかな?あ、でも難しいかなあ。
 これまで寄った街でもそんな旅人の話聞いたこと無かったし…。』
トランクがそう言う隣で飾り屋は工具を持ちつつ飾りを組み立てながらそうだねと言った。
そしていくつかの工程を終わらせた飾り屋は工具を置いて作り終えた首飾りを手に取った。

あの日流した大粒の涙と縁の糸を模した結び目の首飾り。
それを見ながらふと旅人が最後に残した言葉を思い出す。

《君との縁の糸がまた結ばれることを、僕も心から願うから――》

その言葉を思い出しながら飾り屋はふと笑みを浮かべた。
『……また会えると良いね。』
そんな飾り屋の様子を見ながら語るトランクの言葉はとても温かだった。


そんな旅する飾り屋と相棒のトランクの話。


minne

Creema


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