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いつも西陽の風景


西陽が差し込んできている

西陽というのは様々な差し込む光の表現の中で風景を連想させる力が最も大きい様に思える。

空っぽの部屋を思う時、必ず西陽が射している

学生時代の理科室のアルコールランプの匂いに射している

木造建築の古い柱の身長を刻んだナイフのあと

アパートの壁紙に開いた画鋲の穴

燻んだ色の畳

埃っぽい倉庫 

神社の境内

カルキと消毒液の匂いのするタイル床のトイレ

ピアノが作る大きい影

放課後の教室

逆光

そこに一人か、誰かといたりするのだけどその場の主役はいつも西陽だった。

西陽は、喋っていた内容も何をしていたかも、輪郭も全部溶かしてしまって

後の記憶にはその時西陽が射していたことしか残らない。

だからいつも空っぽなのだけれど

私はそれをとても美しいと思う。

2024年1月21日 一井重点

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