見出し画像

パターソン 2020.4.12, 2020.4.18, 2020.6.8

外出自粛の毎日。外には出られないので、
己の四畳半で自己研鑽という名のグウタラライフを送る。

忙しくて見れなかった映画、聞けなかったラジオ、見れなかったライブ映像、
読めなかった本、整理できなかった旅の記録など、大忙しである。

最近見た映画がとても良くて、1週間で二度も見てしまった。

最近の私は、1時間30分以上の映画は大体寝てしまう。
映画館での上映ならその確率はさらに高まる。
映画館の絶妙な空調が眠気を加速させる。

それでも映画館で映画をみるのが好きで、
特にミニシアターが好きで、いろいろな映画館に足を運んだ。
時には仕事帰りに全速力で走って映画館にむかったり、
仕事を休んでまで映画を見に行ったり、
2本連続の映画を見に行き、1本目の途中で寝てしまい、
2本目の途中で起きて、大混乱したこともあった。

パターソン。
その映画の存在は知っていたが、ストーリーまでは知らなかった。
かわいらしいポスターにひかれ、映画を見始めた。

Mondayの朝、パターソンの目が覚めるところから始まる。
マッチ箱を眺めながら、朝ごはんを食べる。
パターソンはつなぎに着替えて歩いて仕事に向かう、
そして詩を書きき始める、さっきまで眺めていたマッチ箱のことを。
このマッチ箱のデザインが1番だと綴る。

同僚に挨拶し、仕事が始まる。パターソンはバスドライバー。
バスを運転しながら、窓には街並みが映る、
そしてバスに乗る乗客の姿も。
その乗客の会話に耳を傾けるパターソン。
時おり、乗客の会話に軽く微笑んだりする。

お昼休みには、奥さんの手作りで時には個性的なランチを食べながら、
詩の続きを書く。
前回まで書いた部分を読みながら少しずつ進み、詩が作られていく。

このパターソンが作る詩がなんとも言えず、よい。
パターソン フォントとも言えるスクリーンに映し出される
手書きの文字もかわいらしい。

終業後、歩いて、家に帰り、ポストの郵便物を確認して、曲がったポストを直す。
家には奥さんと愛犬がまっていて、手作りの夕飯を食べる。

この奥さんが物静かなパターソンとは対照的で、
とても活動的で、毎日創作活動に励んでいる。
カーテンに柄を描いたり、壁を塗ったり、個性的なカップケーキを焼いたり。

愛犬のマーヴィンは、ブルドック。
絶妙な表情と泣き声で映画の中に登場する。
主演犬優賞を受賞すること間違いない。
奥さんが描いたマーヴィンの絵がたまらなくかわいい。

夕飯の後は、犬の散歩。途中でマーヴィンを外につないで、
パターソンだけがバーによって、マスターと顔見知り達と会話を楽しみ、
ビールを飲む。
ここで、いつも画面がブラックアウト。
こうしてパターソンの1日が終わっていく。

そして、次の日の朝の場面。Tuesday。
パターソンが目を覚ますところから、1日が始まる。
また一日が始まり、バーで1日が終わっていく。

Wednesday, Thursday, Friday・・・と続いていく。

同じように見える毎日でも毎日起きる時間が異なったり、
街中で詩人達に出会ったり、ちょっとした事件が起きたりする。

パターソン は、悟りを開いたブッダのような人間で、
物静かだけど観察力に優れ、優しくて、強い。

その日着る服を畳んでいたり、とても几帳面で、
一つ一つの動作が丁寧。

何が起きても動じず、文句を言わず、否定せず、
怒ったりもしない。

そんなパターソンの毎日を見ていると、全然飽きないし、
毎日の生活の中でたくさんのことを見落としていたのではないか
という感覚になる。
そして、平凡な毎日でも愛おしく感じてくる。

映画の中でも好きだったシーンは、
コインランドリーでラップしている場面
(ラップしているのは、Method Man!)。
(この部分だけ、字幕がなかったのがとても残念。)
母親を待っている少女が詩を朗読するシーン。
金曜日にバスの事故で疲れて帰ってきても、
奥さんのギター演奏を聴いて、褒めるシーン。
斬新はパイに驚きながらも否定せずに、
文句を言わず食べ、絶妙な表情のまま水をごくごくと飲み干すシーン。
様々な双子の登場。
パターソン が「This is Just to say」を読み上げるシーン。
永瀬正敏演じる日本の詩人が放つ、「A-Ha」。
ノートをもらったパターソンが詩を再び書き始めるシーン。

映画を見終わった後は、パターソン のようにとても穏やかな気分になり、
自分の普段の行動の一つ一つが
パターソンの映画の中に出てくるシーンのように感じる。
一人一人の生活そのものが詩そのものであり、とても芸術的なものではないか。

ラジオで聞いたセリフを借りるなら、
「幸せに出会うのではなく、幸せをじっくり感じる」映画だった。

Sun rises every morning and sets every evening. Always it’s another day.

Sometimes an empty page presents more possibilities.

今後どうなるか不安一杯の日々だけど、毎日を丁寧に送り、
希望を失わずに生きて行こう。
そう思える映画。

今日のこの状況を想定して作られた映画ではないと思うけど、
2020年の今観ることができてよかった。

自分のメール上の表示が「NJ」で、
パターソン の運転するバスに表示される「NJ」と同じ。
パターソン だったらこれも詩にするだろうかと考えたりした。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?