一之瀬なな

物語を書くのが大好き。「自分の書いた文章が、誰かの背中をそっと後押し出来たら」と思って…

一之瀬なな

物語を書くのが大好き。「自分の書いた文章が、誰かの背中をそっと後押し出来たら」と思って物語を綴っています。名言にまつわる短編小説と、自己啓発小説「俺様黒猫シリーズ」、連載小説「彼女が残した僕への手紙」を投稿中。スキ、フォロー、拡散してくれたら喜びます!

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  • 俺様は猫である

    彼氏に浮気され、失恋した主人公。 そんな主人公の前に現れたのは、喋れる俺様猫だった?! 「幸せになりたきゃ、その方法教えてやろうか?」 その言葉を信じて、主人公と俺様猫の同居生活が始まる……。 物語を読みながら、学べる自己啓発小説。 「いいな」と思った方はフォロー、拡散お願いします!

  • 彼女が残した僕への手紙

    高校の時に1ヶ月だけ付き合った彼女。 記憶に残る彼女の姿は、いつだって明るい笑顔で溢れていた。 だから、信じられなかった。 彼女が死んでしまったなんて。 彼女が僕へ残した手紙の意味は何なのか。 その答えを探すために、僕は今日も走り出す。

最近の記事

夏の淡雪が消えるまえに 第4話

朔耶さんと会話できるようになって少し舞い上がっていた僕は、落とした勾玉のことをすっかり忘れていたことに気がついた。それが手元にないと不安で探しにいったのに、「この前はできなかったことができた」という小さな自信をつけた僕は、「また、探しにいけばいいか」と少し楽観的に考えられるようになっていた。 彼女と僕は、あの日から頻繁に顔を合わせるようになった。 散歩が日課になった僕のもとへ、朔耶さんはいつもふらりとやってくる。だいたい僕らが落ち合う場所は、出会いの場でもある小川。雑草がお

    • 夏の淡雪が消えるまえに 第3話

      遠くの方でせみの鳴き声が聞こえる。重いまぶたを開けて起き上がり、一番に聞こえてくるその音に、今日もまた一日が始まったと実感する。 ミーンミーンと鳴きつづけるせみの一生は、長い時間を土の中で過ごすのに、地上に出てからの寿命はわずか1ヶ月らしい(ずっと1週間だと思っていたけど、最近読んだ本に実は1ヶ月くらい生きられると書いていた)。 何年間も土の中にいるのに、地上にでてからの生は短い。オスは何度も交尾ができるけど、メスの交尾は一生に1回。必然的にオスの中には一生に一度も交尾を

      • 夏の淡雪が消えるまえに 第2話

        久しぶりに外を散歩してみよう。そう思ったのは、きっとあの書庫を訪れたせいだろう。毎日、「どんなおもしろいことがあるんだろう」とわくわく胸躍らせて過ごしていた幼いころの自分が懐かしくなり、「なっちゃんには、この辺りを散歩するだけでも楽しいと思うわよ」と笑っていたおばあちゃんのことをふと思い出したのだ。「この辺り、散歩してきてもいい?」と言った僕を、お母さんは「気をつけて、いってらっしゃい」と送り出してくれた。 ぎしっ、ぎしっと田んぼのわき道をゆっくりと歩く。今日も日差しはきつ

        • 夏の淡雪が消えるまえに 第1話

            大嫌いだ、こんなに弱い自分のことなんて。 ここへ引っ越してきてから、もう何度も何度も、そんな言葉が頭の中をかけめぐった。漫画を読んだり、宿題をやろうと机に向かってみたりするけれど、いつの間にか頭の中に浮かぶその言葉にやる気は失せてしまい、ベッドに寝転がってため息をつく。「何とかしなくちゃ」という意識はどこかにあるものの、その何かに取り組むための気力は、なかなか生まれてこない。しまいには、「しんどい、疲れた、何もやりたくない」という状態になり、傍目から見れば怠惰な日常を過

        夏の淡雪が消えるまえに 第4話

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        • 俺様は猫である
          9本
        • 彼女が残した僕への手紙
          8本

        記事

          俺様は猫である 第9話【自分を幸せにしてあげる】

          「い、忙しい……」 月末の事務処理に終われ、ここ数日は目まぐるしい日々が続いていた。 おまけに後輩がミスした仕事の修正作業もあって、仕事が山積み。 家に帰れば、軽くご飯を食べて、シャワーを浴びたらすぐに寝てしまって、以前続けていた読書も、ここ数日は出来ていない。 はっきり言って私のイライラはマックスで、心に余裕がないのは自分でも自覚している。 朝の支度も何だか憂うつだ。 ついこの間まで「毎日が楽しい」と言っていた私は一体どこへ行ったんだ。 はぁ~……。 「オイ」 ど

          俺様は猫である 第9話【自分を幸せにしてあげる】

          彼女が残した僕への手紙 第8話

          ※1話から読みたい人はこちら 彼女のお葬式の翌日。 僕は連絡をとって、田所と会うことになった。 散々泣いてから考えてみても、やっぱりこの手紙の意味は分からなかったし、もしかしたら入れる手紙を間違えたのかという線も考えてみた。 とはいえ、封筒にはしっかりと“浅見隆弘様”と書かれていたし、自分の死後に渡す手紙を間違えたりはしないだろうというのが僕の見解だけれど。 何はともあれ、1人で考えていても埒があかないので、思い切って田所に相談してみることにした。 ワッキーにも

          彼女が残した僕への手紙 第8話

          俺様は猫である 第8話【本をたくさん読む】

          ※1話から読みたい人はこちら 次の日。 定時で仕事が終わった私は、今朝ノーブルから言われた指令を遂行するために駅前の商業施設へ向かっていた。 人通りの多いこの道は、私と同じような仕事帰りのサラリーマンやOL、大笑いしながら並んで歩く高校生、ベビーカーを押したお母さんなどいろんな人が交差する場所でもある。 その表情は様々で、私は人ごみに行くと「きっとみんないろんな思いを抱えて毎日を過ごしているんだろうな」なんて思ってしまう。 ふと振られた日のことを思い出すけど、こういうと

          俺様は猫である 第8話【本をたくさん読む】

          俺様は猫である 第7話【ワクワクすることに飛び込む】

          ※1話から読みたい人はこちら 次の日の朝。 若干2日酔い気味の私を「言わんこっちゃない」という風な目で見た後、ノーブルはまた眠りについてしまった。 朝が苦手なのか、私が出勤する時間は寝ていることが多いのだ。 「それにしても、昨日は飲みすぎちゃったなぁ~……」 なるほど。 何となく参加した飲み会の所為で、こんなイマイチな状態で朝を迎えることも、きっと幸せな人生からは程遠いという訳か……。 軽い頭痛がするこめかみを押さえながら、ミネラルウォーターを一口飲んで、私は重い足取り

          俺様は猫である 第7話【ワクワクすることに飛び込む】

          俺様は猫である 第6話【時間の無駄づかいをやめる】

          ※1話から読みたい人はこちら 「自分の幸せや理想の人生について考える」というお題をもらってから2日が経ったけれど、未だ私の理想を定まっていない。 頭の片隅にはあったものの、ここ2日間は仕事が忙しくてゆっくりとそれについて考える時間がなかったからだ。 「ただいま~」 仕事終わりに同僚から飲んで帰ろうと誘われて、気付けば0時近くになっていた。 一人暮らしだから時間の融通は利くし、誘われる飲み会はほぼ参加している。気乗りしない時もあるけど、まぁ親睦を深めるためにも必要かなって

          俺様は猫である 第6話【時間の無駄づかいをやめる】

          俺様は猫である 第5話【自分のやりたいことは何かを考える】

          ※1話から読みたい人はこちら ノーブルの教え通り、「口ぐせをポジティブなものに変える」を実践中の私。 口ぐせってのは習慣だから無意識なものが多くて、気を抜いてたら、ついついネガティブなことが口にしてしまう。 今までの習慣を変えるのは意識しないとなかなか直らないけど、こういう小さいことを変えることで、大きな差が出てくると思うんだよね。 だから、私もネガティブな発言をしそうになったときは、「いかん、いかん」と自分を戒めて、出来るだけポジティブな言葉を使うように気をつけるように

          俺様は猫である 第5話【自分のやりたいことは何かを考える】

          俺様は猫である 第4話【口ぐせを変えてみる】

          ※1話から読みたい人はこちら 3連休が明け、今日からまた仕事が始まる。 フラれたのが金曜日。 失恋からまだ4日しか経っていないけど、だからっていつまでも部屋に篭りっきりはよくない。 と、思うけれど……。 「しんどい……」 部屋の片付けをしてすっきりした気分も、朝になると様変わり。 昨日は「よっしゃ!」って気持ちになれたんだけど、何となく気が重い。 結局、人のやる気なんてこんなもんだ。 高いテンションは、長続きしない。 長続きというか、私の場合、たった1日だった

          俺様は猫である 第4話【口ぐせを変えてみる】

          彼女が残した僕への手紙 第7話

          ※1話から読みたい人はこちら あれからみんなと別れた後、家に帰ってすぐにスーツを脱ぎ捨てた。 堅苦しいというのもあるけど、何だかこれを1秒でも長く着たまま過ごしていたくなかった。 部屋着に着替えてベッドの縁に座りこむと、僕はテーブルの上に置いた白い封筒を手に取った。 『浅見隆弘様』 癖がなく、整った字が並んでいる。 彼女が書いた字を見たのは、高校以来だろうか。 授業中に先生に当てられて黒板に書く字も、そう言えば綺麗だったなと今更ながら思い出す。 ふーっと深く息を吐い

          彼女が残した僕への手紙 第7話

          彼女が残した僕への手紙 第6話

          ※1話から読みたい人はこちら 翌日、本田さんから聞いた場所に、真っ黒なスーツを着て向かった。 会場に着くと、そこには見知った顔が大勢いた。 高校のクラスメイト全員に連絡が回ったのだろう。 卒業以来会ってなかった連中もちらほらいて、声をかけられた。 「浅見!」 トイレに向かう途中、声のした方を振り返ってみると、田所とワッキーがいた。 当たり前だけど、2人とも僕と同じように黒いスーツ姿だ。 「久しぶり」 僕がそう返すと、2人は心配そうにこちらを見る。

          彼女が残した僕への手紙 第6話

          彼女が残した僕への手紙  第5話

          ※1話から読みたい人はこちら 「浅見くん?聞いてる?」 電話越しに聞こえるそんな声に、止まっていた思考がハッとする。 ぼんやりと話を聞きながら、僕の頭の中には10年前の藤咲さんの姿が浮かび上がっていた。 電話の相手は、同じ高校のクラスメイトだった本田さんだ。 それほど仲がよかった訳でもなかった彼女からの電話にも驚いたけど、それよりもその内容の方が衝撃的すぎて何を言ってるのか信じられなかった。 「あのさ、ホントなの?……藤咲さんが死んだって」 「……うん。私も信

          彼女が残した僕への手紙  第5話

          彼女が残した僕への手紙 第4話

          ※1話から読みたい人はこちら それから僕らが付き合い始めたのは2ヶ月が経ってから。 告白をしたのは、藤咲さんの方だった。 他の男子よりも話す回数は多かったから、もしかしてとは思っていたけど、まさか彼女の口から「好き」なんて言葉が聞けるとは思っていなかったから驚いた。 前日にメールで「放課後に駅の近くでちょっとだけ話せる?」と聞かれた時も、世間話をする程度に思っていたから余計に、だ。 もちろん最初は学校やメールで話すような他愛もないことを話していたけど、途中で会

          彼女が残した僕への手紙 第4話

          彼女が残した僕への手紙 第3話

          ※1話から読みたい人はこちら 藤咲さんとメールをし始めて2週間。 僕らは、放課後になると毎日のようにメールをした。 挨拶を交わす程度の関係が、今では休み時間や放課後の掃除の時によく話す間柄にまで発展した。 話す内容なんて本当に他愛もないことばかりで、中身がない話も多いけど、この時の僕らは“箸が転んでもおかしい年頃”。 何でもないことでも、大笑い出来たっけ。 話しかけてくれるのは、いつも藤咲さんから。 朝、登校していくと、僕の隣の席の友達と話している時に「おはよう」って挨

          彼女が残した僕への手紙 第3話