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[リスト]科学技術のELSIについて考えたくなるアニメ・マンガ

 科学技術の倫理的・法的・社会的課題(ELSI)について、議論のきっかけになったり題材にしたりできそうだな、と思うシーンが好きな作品からしばしば思い浮かぶので、リスト化してみます。※各ネタバレを含みます。


風の谷のナウシカ(原作コミックス)

 バイオテクノロジーといえば、もはやバイオ系のバイブルともいえるかもしれない。ゲノム編集を中心に、分かりやすく生物兵器も登場するので、テクノロジーのデュアルユース性や将来の問題解決手段としての投資についてイメージしやすい。科学技術の進歩はどこに向かっているのか。そういえば火の七日間の前の時代の情報通信技術はどんなものだったんだろう…AIのさらに後ゆえに電子データが墓所以外ほぼ失われているとか?
 特にコミックスのナウシカは、レべチの聖人でありつつも、人間社会丸ごと抱えて虚無や安らぎへの誘惑と闘い葛藤する姿が描かれているのもポイント。必要なことは分かっているのに簡単には実現できない各種社会問題に対して、ネガティブに陥らずに希望もって取り組んでいかなきゃな、という気にもさせてくれる。

PSYCHO-PASS

 超監視社会を舞台にしたSFクライムサスペンス。AIが社会をどう変え得るか、特に刑事司法や法制度そのもの、個人の自己決定・自由意思の感覚にどんな影響を与えるか、辺りをネットワーク社会前提で考えるのにもってこいな色んなテーマがちりばめられている。映画・シリーズ3はグローバル要素が入ってくるのもいち押し。個人的には、シビュラシステムをある意味究極のニューロテクノロジーとみているので、脳神経科学分野の議論でも使いたい。

WOLF'S RAIN

 古めのマイナーなアニメ作品かもしれませんが、ボンズ、信本敬子脚本・岡村天斎監督、宮野真守(初)主演、坂本真綾主題歌、菅野よう子音楽です。どや。核戦争の末路がナウシカの世界なら、気候変動の行く末はこの世界なんじゃないかと。荒廃した土地が広がり、かなりの動物が絶滅しており、人間もわずかな帝国都市を除いてごくまばらにしかいない。植物由来のデザイナーベイビーどころかどうもタイムワープができていそうなテクノロジーレベルがあったとされる。都市は管理体制を敷く一部の富豪(貴族)だけが永遠の若さと豊かな自然環境(ラクエンの物理的な面)を享受できるリソースをもち、その奪い合い(愛憎のもつれ含む)に明け暮れている。現代社会につながっているようなラストも警告のように見える。投資が集まる流行りのテクノロジー、誰の夢をかなえるもの?

キャロル&チューズデイ

 カウボーイビバップのスタッフで、という確か触れ込みがあったボンズオリジナル作品。PSYCO-PASSのスプラッターが苦手な方にお勧めしたい、2人組の女の子が主人公の音楽系やわらかめSF。ChatGPT等生成系AIで盛り上がっているときに見たい、AIと芸術と人間とビジネスの絡み合いで生まれる問題提起から、デザイナーベイビー、土台に宇宙開発と(多分)気候変動、AIビジネスと政治の関係もちらっと。社会問題盛り沢山ながら、音楽を中心にすることで自然に連帯をテーマに持っていったのは、ちょっときれいすぎるな、とも思いつつ、けどこれくらいじゃないと2期のシリアス展開の救いがないか…
 努力・成功・友情!な人間ドラマを期待しがちな絵柄ではあるものの、主人公たちは比較的あっさりしていてさくさく展開していくので、SF、AIの話と割り切ってみた方が楽しめる気がします。

蟲師(原作コミックス・アニメ)

 最後に少し違う角度から。
 主人公蟲師ギンコの村人や環境との関わり方、彼のセリフが考えさせるトピックとして、西洋医学・科学に対する東洋医学的アプローチの特長、医療と科学の関係、精神・神経疾患と病気の定義がある。最近、ワンヘルス(健康問題を人中心でなく動物や環境もつながったものとして解決策を考えるアプローチ)ってこの世界の蟲をイメージするとさらに分かりやすいし、文化にも焦点が当たるので良いかも。


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