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自作短歌

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スチール缶(2首)

スチール缶(2首)

 缶けりはスチール缶の方がいい 秋/00年代/低燃費

 誰にでも明けない夜はいつか来てとびきり重いブルース一つ

かまわずにいけ なぜ俺が合っていてお前が違うと思ってるのか

バニラ(2句、川柳)

バニラ(2句、川柳)

 人一人死んでもなり止まないバニラ

 凶弾に倒れた都営大江戸線

関節(2首)

関節(2首)

 飛んでいく第二グラウンド 知らない物まねを見て笑う物まね

 関節をひとつひとつ確かめるように始発駅を出ていく列車たち

ばかと新幹線(2首)

ばかと新幹線(2首)

 ばかなやつらによってこの世は終わった、終わっていくばかと新幹線

 日本と同じかたちの天国で早稲田通りを左に曲がる

フィルター(2首)

フィルター(2首)

息をするように雲間が太陽を隠して見せている月曜日

キス顔でフィルターを噛む 明日会ったとき横顔がよぎるだろうか

アメショー(2首)

アメショー(2首)

 こうやって月を見上げているときもなんて素晴らしいんだ権力

 A whole new world 1才上のアメショーは700W5分で死んだ

サンジャポ(2首)

サンジャポ(2首)

 宮沢りえに似てるなって二〇二一年になってから言われても

 サンジャポに田中みな実はもういない あるいは冬の公園の杉

稜線(2首)

稜線(2首)

 ジープラングラー/東京タワーから続いてく道/五千点棒

 稜線の浮かび上がった夕焼けを入道雲が背景にする

花びら(2首)

花びら(2首)

 秒速5センチメートル マスクなしでマグロのすじ覗き込んでた時代

 卒業生は土に汚れた花びらを掃かずに散っていくからいいね

フローリング(2首)

フローリング(2首)

 マイバッグに背負った野菜をかき消した川べりの匂いは慣れている

 この国はフローリングに布団を敷く 午前三時の名神高速

妃(2首)

妃(2首)

 妃 冬走ってくる朝の光 白い煙にまかれてる冬

 人生のほとんどは小さいものをデッカいものにしまってく作業

ペパーミントブルー(2首)

ペパーミントブルー(2首)

 ペパーミントブルー・テルズ・ユー・ワイ・アイム・スタンディング・ヒア 喉がかわいた

 打ち上がり爆ぜる花火を知っていてレフトフライが捕れるわけない