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ノック3本目:DNAワーク ~尖った企画を尖ったまま形に~

<プログラム概要>
自社の「DNA」とは何かというテーマで、調査検討を行いプレゼンテーションするグループワーク。長期間にわたる新人研修プロジェクトで活用される


プロフェッショナルスタンス100本ノックの開発からさかのぼること約1年前のことです。


2005年秋、大手メーカー様への2006年4月の新入社員研修の大型提案の機会を得ることができました。創業メンバーで営業担当取締役の高橋浩一さん(2009年末退任)、当時在籍された営業担当のSさんが提案を繰り返す中、私は二人から企画検討・プログラム開発の協力を依頼されました。


聞けば、現在のアルーでもなかなか珍しいレベルでの大規模な金額の案件でした。この提案の背景には、お客様が新卒採用社員数の急激な拡大に伴い、新入社員導入研修全体の大きな見直しを図ろうとしていたということがありました。


ちょうどそのタイミングで「習うより慣れろ!」というアルーの100本ノックのコンセプトでお客様の関心を得て企画提案をすることができたという状況でした。

<すごい開発バイブル まとめて読まれる際はこちら↓>

すごい開発バイブル


①DNAワークの与件

高橋浩一さんの提案の最大のポイントは、3ヶ月間の新入社員研修全体を貫くものとして「DNAワーク」というプログラムを提案していたことでした。


DNAワークは、お客様の会社に存在する「DNA」(=会社の中に根付く、有形・無形の「その会社らしさ」を形成する核となるもの)を新入社員の方に探索・検討をするグループワークを実施するというものです。
しかしながら、その時点においてアルーには「DNAワーク」という研修プログラムは存在していませんでした。


私の記憶が確かであれば、「2枚の企画書」のみでお客様と握っていました。「高揚感」「挫折感」「達成感」と書かれたN字カーブの紙が1枚目。そして、DNAワークと他の新入社員向け研修プログラムとの関係性が書いてあった2枚目。以上のみでした。

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(※上記スライドは、高橋さん作成のオリジナルを参考に後年作り直されたものです。)

他のプログラムとは、ビジネスマナー100本ノック(現在のマナー研修の土台となっているもの)、ビジネススタンス100本ノック(プロフェッショナルスタンス100本ノックとは全く異なる、モラル的研修)、ロジカルシンキング100本ノック、問題解決思考100本ノック、プレゼンテーション100本ノックでした。


高橋さんから私が受けた相談はDNAワークを創ってほしいというものでした。


お客様と握っているのは2枚の企画書。そこに書かれているのは高揚感、挫折感、達成感という受講者の気持ちの変化と、DNAを探せというお題、受講者が自分達で進めるグループワーク、DNAワークブックというものがあるということでした。


正直なことを申し上げると、「これはどうすればいいのだろうか・・・・」というのが最初の感想でした。当時のアルー/私の経験や技術、知識からすると全く未知の領域でした。研修プログラム開発の経験は、この時点では片手で数えるほどしかなく、3か月間にわたる長期間のグループワークというものの企画経験等はありませんでした。特に、受講生の方が3ヶ月と期間が長くある中で、講師の管理がない中で自主的にワークに取り組むということがリスクだらけに感じました・・・。


途方に暮れる中で「せっかくのチャンスなので、やるしかない!」という思いでアイデアを考え始めました。


現在になって考えてみれば、高橋さんのように「尖った企画」を考える人がいなければ、このDNAワークという研修プログラムは生まれていなかったでしょう。
私の役割は、尖った企画を「丸くせずに」現実の形に落とし込むことです。尖りをなくしてしまっては、商品サービスとしての輝きがなくなってしまうことは開発者は忘れてはならないと考えます。

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②開発スタート。構造を整理する

さて、具体的に開発に着手をするにあたり、どう取り組むべきか・・・。


「研修の構造全体を設計しよう!」まずは設計が重要だろうと考えました。
このプログラムのラーニングポイントは、突き詰めれば二つだけと考えました。
1つはお客様の「DNA」を見つけること、2つ目はDNA検討の過程を通じて「プロフェッショナルとしての仕事の進め方」を身につけることです。そのために大きな一つの演習を行うのである、と私は考えをまとめました。


ノック演習1本を約1時間で行うところを、3ヶ月かけて1本のノックをやると同じです。


1つのノック演習を開発際に重要となるのは、受講生が作るアウトプットと、研修課題の提示側が提供するインプットを明確に定義することです。


DNAワークで言えばアウトプットは、最終報告プレゼンテーションでした。その要件を定めることにまず取り組むべきでした。またインプットはお客様に関する各種の情報だす。インプットをどのように収集するべきかを定義するガイドラインを作ることが必要でした。


ここまで整理をしてしまえば、実際に開発することはそこまで難しいものではありませんでした。


しかし実際にお客様を交えた開発プロジェクトの段取りには苦労しました。お客様も初めての取り組みです。本プログラム導入初年度においては、DNAワークのための受講生の作業時間は正規の研修時間内に取ることができませんでした。そのため受講生は研修時間外を調査検討を進めるという、かなり「荒っぽいやり方」で研修進める形になってしまいました。


長期間グループワークの開発においては、受講者が何を行うことができて、何をすることはできないのかという制約条件を固めることが重要です。


初年度はそのあたりの定義が甘かったため、中にはお客様の社長様や役員全員に「DNAとは何だと思いますか?」というメールを送りつけた強者の新入社員の方もいらっしゃいました・・・・。

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DNAワークは設計さえ固まってしまえば、実際にアルーが手を動かして開発する資料類多くありませんでした。準備は苦労をしながらも進んでいきました。


③納品をしながらの継続開発

2006年4月2日。DNAワーク初日。お客様の新入社員約300名の前で私がDNAワークの説明を行いました。こうして3ヶ月に及ぶDNAワークの納品がスタートしました。受講者の皆さんが真摯に取り組んでいただけたことは本当に感謝しております。


3ヶ月間に及ぶ長期間の研修のため、実施をしながら次のコンテンツ(中間発表、最終発表)を創っていきました。お客様の声を反映しながら開発をすることで、結果としてお客様と一体感が生まれていきました。


中間レビューでは「プロフェッショナルの仕事の基本を伝える」というコンセプトで、受講生のアウトプットとワークの進め方について、フィードバック(指摘)をするという場です。300名の新入社員の方が参加されていますので、クラスを8つ程度に分けて実施しましたので、8人の講師の方とDNAワークのフィードバックの観点を直前まですり合わせ、フィードバックの伝え方自体は各講師にお任せするという方法でした。


翌年(2007年)からは、2006年に行った中間レビューでよいやり方や観点を集約し改善をしました。そのことにより最終発表のクオリティを更に高めることができました。


また、受講者チーム間でのレベルの差も懸念されましたが、お客様の新入社員の方々は本当に一生懸命取り組んでくれました。研修期間中の昼休みや研修終了後も残り、積極的にチームで課題に取組む姿が見られました。


2006年6月末、最終発表会。中間レビューでのフィードバックを活かし、それぞれにお客様の「DNA」について深く考えた結果が見えました。進め方に対して悩んでいる受講者の方もいましたが、それを乗り越えて最終的なアウトプットをチームで創り上げることを体験していただきました。


私は受講者の素晴らしい発表に感動しました。アルーとして初めての大きな場を持てたことによる嬉しい気持ちもありました。お客様、受講者、講師、アルーと関係者全員で創り上げた大きな研修プロジェクトでした。


DNAワークという研修プログラムは、その後2009年にはバージョン3へ改定されました。不明確だった研修日数が固められ、よりオペレーションが洗練されたものに改善されました。


DNAワークは、長期間にわたるグループワークを行う際の基本となるアーキテクチャとなりました。アルーの研修プログラムの中でも一つの礎を担う重要なものと考えています。


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DNAワーク 開発における教訓

DNA11:尖った企画を発想する人物と、尖りを丸めず形にする人物でチームを組む
尖った企画でなければお客様に刺さらない。
企画段階での尖りは開発を困難なものにするが、無くしてはいけない


DNA12:ノック演習の基本構造を踏まえて、応用を常に考える
演習1本を60分でやるのか、3ヶ月でやるのかの違いと認識する
実は基本構造は同じだと考えて応用をする


DNA13:演習のインプットとアウトプットを明確にする
長期間ワークの最終アウトプットを定義し、最終アウトプットを受講者が作るためのインプット情報を定義する


DNA14:受講者の制約条件を明確にする
長期間ワーク中に受講者がやっていいこと、やってはいけないことを明確に定義する
お客様と認識をすり合わせる


DNA15:お客様と一緒に改善をして一体感を創り上げる
お客様の意見を取り入れて一緒にプログラムを完成させていく

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よろしければ、続きの記事もご覧ください!

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本noteでは別途アルーの創業からの歴史をまとめた「スタートアップ企業としての営業組織づくりノウハウ」を公開しています。ぜひご覧ください。

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