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【本の紹介】往復書簡『限界から始まる』(上野千鶴子・ 鈴木涼美 )

昨夜『金スマ』を見てしまいました。
「今は昭和か?」とタイムスリップするような内容でした。
しかし、これが令和の現実なのかも?

「令和の最強ママたれ大集結!ママのお悩み一刀両断SP」と銘打って放送されていたのですが、「ママのお悩み」のひとつにこんなのがありました。

夫に家事を手伝ってもらうにはどうすればよいでしょうか?

もしかすると出演者に「手伝う、というのがそもそもアカンでしょ!」と言わせるために、番組の作成者が意図的に設定したものだったのかもしれません。
けれども、視聴者には「手伝う、ではアカンのだ」という製作者の意図は全然伝わりませんでした。

お口直しに朝ドラの『虎に翼』の轟くんのセリフを再掲。

俺はな…いや 自分でも信じられないがあの人たちのことが好きになってしまった。
あの人たちは漢(おとこ)だ。
俺が漢の美徳だと思っていた強さ 優しさをあの人たちは持っている。
俺が漢らしさと思っていたものはそもそも漢とは無縁のものだったのかもしれんな。

すみません。前置きが長くなり過ぎました。

『限界から始まる』
東京大学名誉教授で女性学、ジェンダー研究の第一人者の上野千鶴子さんと、鈴木涼美さんの往復書簡です。

鈴木涼美さんは、東京大学大学院卒業後、日本経済新聞社で記者となりますが、数年で退職し現在は物書きをしています。
キャバクラのホステスやAV女優などの経験があることで知られているかもしれません。

年齢的には親子ほどの差がありますし、生き方や考え方も随分違っていると思われるこのお二人が、興味深いテーマでもって手紙のやり取りをされます。

・女の身体は資本か? 負債か?
・娘を幸せにするのは知的な母か? 愚かな母か?
・愛とセックスの分離から得たもの、失ったもの
・家族だけが磐石だという価値観は誰に植え付けられたのか?
・人間から卑劣さ、差別心をなくすことはできるのか?

はじめはお互い探り合いのようなやり取りなのですが、次第に情け容赦がなくなります。

上野千鶴子さんという方はすごい。
私は改めてそう思いました。

どんな生き方も考え方も受け止める包容力
時代を読む力
物事の核心を掴む力

そして何より、対話の達人
対話(ここでは往復書簡)によって、自分の考え方や生き方を見直し、深めていかれます。

上野さんがそのような対話に誘導していかれるので、鈴木涼美さんも上野さんと同様に、考えを深めていきます。

見事な往復書簡でした。
後半は一気読みしてしまいました。

「結婚」「子育て」「男女関係」「母と娘の関係」「恋愛」「セックス」について「はて?」が積もっている方に超おススメします。

最後におまけ。
昨日の「金スマ」のモヤモヤを晴らしてくれた上野さんの文章を抜粋します。

ー子どもを産めば、子育てと家族が人生の最優先事項になるのはあたりまえのこと。
生活の大半がそれで占められ、アタマの中はそれでいっぱいでしょう。
父親になった男がそうならずにいられる理由が私にはわかりません。
1日でも放っておけば死んでしまうようなあんなに無力でひ弱な生きものを目の前にして、しかもその生命を生み出す原因の半分を背負いながら、ふたりがかりでもたいへんな子育てを、「キミに任せるよ」と妻の「ワンオペ育児」に委ねてきたのか。
そしてその子どもにトラブルがあると、「子育てはキミの責任だろう」と冷たく言い放つことができたのか。
子どもに障害や難病があると、逃げたり否認したりできるのか…
日本の男たちは子捨てをしてきたのだ、と思わないわけにはいきません。
ですが、そのツケは確実に彼らにまわっています。

「そのツケ」とは何でしょう?
それは本を読んでからのお楽しみということで😁


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