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絵本で解く、家族のXファイル

 追加の血液検査の結果が来た。肝臓の数値がさらに悪化している。肝臓が何を企んでいるのか、何か大きなプロジェクトでも進行中なのかと心配になるが、医師は「ウイルス感染だろう」と言ってくれた。そうなのか、肝臓よ。他の臓器は皆、順調に働いているのに、お前だけ何をやってるんだ。

 このスピードで悪化するのはアレルギーが原因ではない、と言われた。アレルギーが原因だったらまた逆戻りになるので、そうじゃないのであれば僕はどんとこいだ。もしこれがミステリー小説だったら、肝臓は怪しいキャラクターであり、最後には無実だったというオチがつくのだろう。

 そして、医者からはまた新たな“謎”が。息子の「追視」が弱いとのこと。追視とは、目で何かを追う行為だ。弱視なのか、それとも何も見えていないのか、という疑問が投げかけられた。ちょっと待てよ、これはミステリー小説か?

 妻は報告してくれた。息子はしっかりと絵本を見ているし、ちゃんと妻や僕を見てくれる。どこが問題なのか。もしかすると、彼はその目で「何を見るべきか」をじっくり選んでいるのかもしれない。選ばれし者にしか見えない何かを見ているのだろう。医者よ、それは君ではないのだよ。

 絵本をいっぱい見せてあげることにした。これが彼の「見る練習」だ。誰もが読書の練習や運転の練習をするが、見る練習っていうのもなかなか面白い。
妻からの報告によると、絵本を開くと息子はすごく集中して絵を見る。見ているその瞳はキラキラと輝いている。なんだ、全く心配ないじゃないか。もしかしたら、将来は美術評論家か何かになるのかもしれない。

 それにしても、人生は未知なる疑問とその解明の連続だ。一つ解決してもまた次が出てくる。でもそれが人生の面白さでもある。何も問題がないと、それはそれでつまらない。

 肝臓よ、もう少し頑張ってくれ。息子よ、見たいものを見つけてくれ。そして僕たちは、このミステリー小説のような人生を、一緒に楽しんでいこう。それが家族だから。

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