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点滴なしの家路ブルース

 明後日、息子の退院が決まった。約1ヶ月半もの病院生活がようやく終わる。妻と共に、彼は一生懸命に頑張った。僕も、できることはやってきたつもりだが、やはり家族が一緒にいる時間は何にも代えられないものがある。

 退院する日は僕が仕事の予定であるが、そんなのはさっさと変更する。仕事はその後も続いていくが、息子の退院は一度きり。まあ、二度と繰り返したくない事態だが、それでもこの瞬間は特別だ。

 家に帰ったら、盛大に労いたい。もちろん、妻と息子が主役で、僕はその脇役として。何をするかはまだ考えていない。でも、たぶんピザでも頼んで、家族三人で、平凡ながらも特別な夕食を楽しみたい。それが僕らの小さな「楽園」なのだから。

 ミルクの濃度も上がり、点滴なしでいけるというのは、進展としては大きい。まるでジャズのように、困難を乗り越えて少しずつ即興で進んでいく感じがする。ミルク一杯で喜ぶ我が子を見て、大きなステージに立ったジャズミュージシャンのように感じることだろう。

 そう、人生は即興だ。プランはあっても、予想外の出来事が多い。でもその即興性が、逆に人生のスパイスとなる。息子の退院はその最良の証で、家族全員がそのスパイスを全身で感じられる瞬間だ。

 だから明後日、病院の扉が開いて息子が家に帰るその瞬間は、即興のジャズが最高潮に達する瞬間だろう。その音楽を家族全員で楽しみたい。そして、そのメロディーがこれからの人生の多くを彩っていくことを期待して。

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