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砂のお団子、角砂糖

決まって、というほどではないけれど、シティやビジネス以外のホテルで眠ると度々見る夢がある。それは夢というかほとんど思い出で、幼稚園時代のものだ。 私が通っていた園には砂場があって、自由時間には常に何人かが遊んでいた。それまで園では折り紙をしたり絵を描いたりして過ごしていた私は、ある日初めて、砂遊びをしていた輪に入ろうと思った。たしか、昼にした鬼ごっこの興奮が冷めやらず、誰かと遊びたい気分だったように記憶している。 「入れて」 歩み寄って小さく呟いた私を、先に居た4人は仲間

    • 20190323-B

      「『ときめかなくなった』ってなんだよー。それは安定とは違うのかよー」 彼は何も答えない。 ここでの“彼”とは、晴れて「元」が付くことになった今日までの恋人のことではない。……テッペン越えたから昨日までの、か。 ともかく、あのゲーム大好き高級シャンプー男のことではない。目の前の彼だ。 私を好きでなきゃもっと楽で、幸せになれるだろうに。 傷が痛む今、彼の気持ちが分かる。彼はこれを抱えて4年、私といる。 「はぁ……。まぁいい、いいでしょう。ときめきしか見てないような、恋

      • 20190323-A

        「あー」 彼女は背もたれに仰け反ると、グラスの底で瞼を冷やした。 「『ときめかなくなった』ってなんだよー。それは安定とは違うのかよー」 無防備に曝された白い喉から、掠れた恨みが溢れる。僕の返事を求めない問いが、宙を漂って天井に消える。彼女の手の中で、カラン、と氷がひっくり返った。 僕を好きになれれば、きっと幸せになれるだろうに。求めるものが僕であれば、彼女はその全てを手に入れられるのに。 「はぁ……。まぁいい、いいでしょう。ときめきしか見てないような、恋に恋してるやつ

      砂のお団子、角砂糖