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20190323-B
「『ときめかなくなった』ってなんだよー。それは安定とは違うのかよー」
彼は何も答えない。
ここでの“彼”とは、晴れて「元」が付くことになった今日までの恋人のことではない。……テッペン越えたから昨日までの、か。
ともかく、あのゲーム大好き高級シャンプー男のことではない。目の前の彼だ。
私を好きでなきゃもっと楽で、幸せになれるだろうに。
傷が痛む今、彼の気持ちが分かる。彼はこれを抱えて4年
20190323-A
「あー」
彼女は背もたれに仰け反ると、グラスの底で瞼を冷やした。
「『ときめかなくなった』ってなんだよー。それは安定とは違うのかよー」
無防備に曝された白い喉から、掠れた恨みが溢れる。僕の返事を求めない問いが、宙を漂って天井に消える。彼女の手の中で、カラン、と氷がひっくり返った。
僕を好きになれれば、きっと幸せになれるだろうに。求めるものが僕であれば、彼女はその全てを手に入れられるのに。