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【本紹介】高野 秀行:語学の天才まで1億光年

□紹介する本

語学の天才まで1億光年
高野 秀行 (著), 2022/9/5
集英社インターナショナル

□メモ

時々笑える旅の話。
言語の仕組みから、その学び方まで筆者の体験が散りばめられた本。

初めは、この本では英語力などは高められないなと否定的に思ったが、読んでいくと、なるほど楽に身につけるためにはこういう工夫もあるかなど参考になった。

例えば、ネイティブの真似をすること。
まさに音楽による音真似は有効なリスニング勉強法になりそうだ。
加えて、マンガ学習法。
会話文に関してはネイティブの表現をたくさん吸収できる。

あとは、文化の違いについて。
意外とこんにちは、ありがとう、ごめんなさい、友達などは近代的な言葉で、昔はなかったということ。
昔は誰もが知り合いで親戚だったために、このような表現はなかった。

インドでは、階級制があるので、
高位は下位に恵みを与え、
下位は高位を騙してお金を奪おうとする。
下位まで落ちれば、恵みが与えられる。

南米の言語観、タイの言語観など
日本がいかに特殊な成り立ちの言語かということを知った。

学校は優れた統制、管理システムであり、
そこには優劣や競争が発生する。
つまり学校、学級の崩壊は実は本来の自然な状態であるのだと感じた。
異常なのは現代の学校システムの方なのかも知れない。

筆者の最後に語っていた、今の時代、わざわざ言語の学習が必要か?ということ。
確かに論文もわざわざ英語じゃなくても、これだけ翻訳技術があるのだから、もはやそれぞれの母国語で勝手に書いて、それをどこか一つのプラットフォームで出せば良いのでは?と思ってしまう。
(ただし、実際問題、専門用語の翻訳はたまに誤植が入るのと、1番はサービスに無料版は文字制限などがついているのが、ほとんどということだ)

筆者の言うように、言語は本質的に二つの機能「情報の伝達」と「親近感を深める」があるとすれば、
前者は機械で済むかも知れないが、
後者の機能こそが本当の意味で言語を学ぶ意味かも知れない。

このハードルはとても高く、かつ、
フランス語や、英語などはネイティブと非ネイティブ間の差別が存在しているので、かなり厳しい。
(我々日本人もこの差別をしている。つい、日本語を話す外国人に対して、それはこう言うんだと上から目線になりがちなのだ。)

学校でシステマティックに学ぶこと
(筆者はエンジニアリングと呼んでる)
に対して、ブラコラージュというアドホックにその場その場で学ぶことが語学においては重要だと言うことも筆者は言っており、
確かにその両方のアプローチを行いながら、語学ないし、あらゆる勉学や仕事は進めていくことが大切だと感じた。

ワ族の住む村では、風邪を引いて寝込むと、死ね!死んでしまえ!と声かけして、エネルギーを鼓舞する文化があるらしい。
とても面白い。というか、自分がなんかガッツを入れたいとき死ね、殺す!って思うのととても近しいのかも知れない。

途中、胸が痛くなるような話。
先生に、お前は何がしたいんだ?とか、
やる気がない奴扱いされたりとか、
辛い経験をした話があるが、
自分の信念を貫いて、なんだかんだ上手くやっていけた話が載っている。
往々にしてそのようなことは、本人以外の他人の視点から見た戯言なので、本人がそこまで気に病むほど悩むことはないのだと感じた。
むしろ、何がしたいか決まっていれば恐れることはない。決まっていなければ、また考えれば良いのだ。

#読了日
23/02/08

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