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伝えたいことと、伝わることは違うかも。

こんにちは。

お店のない間借り手廻しロースター
イマフクコーヒーの中の人、イマフクです。

普段は大阪市阿倍野区、文の里商店街のなかにある
シェアキッチン&スペースbotanで月に数回コーヒー屋さんをやっています。


去年の5月からbotanでの出店を始めるようになり、
もうすぐ10ヶ月。あともうちょっとで1年というところ。

いままで"お客さん"として
いろんなお店に通っていたころとは違い

今はカウンターの中から"お店"側として、
来店してくださる方や商店街を行き交う街の方々と接することが増え

2つの目線を持つ中で感じることがありました。

受け取られて初めて、伝えたことは発動する。ってな!

思い出のお店で飲むコーヒー

「利他」は、受け取られたときに発動する。

中島岳志著.「思いがけず利他」.ミシマ社,2021,p129より

最近読んだ本の好きな1節。

この部分は、「利他的行為」は本人がそう思って行っていなくても、
受け取り手が「利他」を感じ取ることで、それが機能する。というはなし。

つまり、受け取り手がどう感じるかが最も大切で
こちらが思っている通り、
その通りに伝わることもなかなか難しいということ。

逆を返せば、思わぬ受け取り方をされる事もあるということ。

利他を例にとれば、相手のためを思ってやったことが
相手にとっては実は迷惑極まりないことであったり。
そんな感じ。

今まで僕はお店にお客さんとして存在してたので
受け取り手として、勝手にいろんな事を考えてたわけです。

お店にとっては当たり前だと思ってやっている冬の暖房設備も、
1日中飲まず食わずで腹を空かせ、寒さに凍えた人にとっては
物理的な温かさだけでなく、何か温情のようなあたたかさを感じると思います。

都会の若者が地方へ旅行した時に、
老舗の喫茶店や定食屋でご飯を食べることに、
ご飯を食べる以外のノスタルジーを感じることも、
ただ昔からお店をやっているだけの側からすれば想定外だと思います。


自分が伝えたいことがどう受け取られるかだけでなく、
自分が意図していないようなことでも

受け取り手がどう感じるかによって
その人にとっての価値やよろこびやかなしみが生まれ、
それこそが伝える側、
つまりお店を形作るのではないかと
出店している中で気づきました。


イマフクなりの伝え方:コーヒーの種類のこととか。

メニュー表
コーヒーの説明はいつも悩みます。

つまり、
「伝えたい!と思ったこと全然伝わらんわ!」
ということです。

僕がコーヒー屋をやる中で伝えるのに特に苦労することは
用意しているコーヒーの種類の味。

スペシャリティコーヒーにはワインに似た表現がたくさんあり
普段のコーヒーとはかけ離れた様々なフレーバーを用いて説明することも多いです。
※いちごとか、紅茶とか、レモンとか。

飲み慣れているわけではない方にとっては
それを見ただけでは判断基準にはなり得ないから
「酸っぱいの以外で!」とか「苦いの以外で!」と
オーダーいただく事も多く、
それも全然いいなと本当に思ってるんですが

どうやったら、わかりやすく、
でもちゃんと丁寧に
スペシャリティコーヒーの味や楽しみ方の提案をできるかな。
とプチ葛藤と自問自答を続ける日々です。

おいしい!も人それぞれ。



そんな僕は、今のところ下記のことを意識してみています。

・自分が好きなポイントやいいところをシェアするように伝える
・どこでどうやって伝わるかわからないので、可能な限りかけらを散りばめる

ありものの情報や、産地情報だけお伝えしても
「だからなに?」となりますし、
僕がお店をやっている以上、僕が大好きなものを出すのは
僕にとっては当たり前のことです。

だからこそ、自分が好きなところを
皆さんとシェアしたくて、
「気分がリフレッシュできるさわやかさ」とか
「ひとりの夜にしっぽりしけこみてえ落ち着き(日本酒みたいやないか)」とか
色んな状況や場面、例えを出すようにしています。

それを聞いてコーヒーを飲み、伝わったイメージに近いおいしさなら
いつものコーヒーより更に、とびきりおいしい楽しみ方だなと思います。
皆さんそれぞれのコーヒーにしてもらえるというかんじ。

あとは、「思いがけず利他」と本当に同じ。
どこでどうやって受け取り手が感じ取るかわからないからこそ、
出店の時には自分が伝えたいことを限界まで散りばめています。

コーヒーに興味を持ってもらえるように
ドリップやミルで挽く様子、豆を見える位置にディスプレイしたり

店内BGMは自分が提供したいイメージや空間に合うものを、
座席のディスプレイの位置、POPのこと。
実は、最近始めたトーストメニューも
色んなきもちがあります。
こうやってnoteに明け透けに書いてみたりするのもそうです。

現段階ではうまく言語化できないのですが
決して自分の伝えたいことを
押し付けたくはなくて、
ちりばめること。

つまり自分の好きなことを信じて
独りよがりにならず
伝える努力ささやかに続けることで

受け取り手がいつしかそれを受信してくれることを信じているのです。

いつも来店してくださって、「おいしい」「たのしい」、
色んなことを受信してくれて、本当にありがとうございます。

理想は、伝えたいことが伝わるようになりたい。

伝えたい事は伝わらない、ということに気づいてから
あらゆる可能性を楽しむようになりました。
やっぱり、どう伝わったかが本当にだいじ。

でも、理想は
自分の伝えたいことがちゃんと伝わったら、
すてきだなあと思います。

それは、生真面目にただ伝えるということより
自然と受け取り手が感じて、
共感して下さるようなこと。
そして僕も皆さんから受け取るということ。


出店していく中で、自分が伝えたいことやイメージも移ろいでいます。
そしてそもそも伝えたいことなんて伝わらなくてもいいんだという
シンプルな気持ちに還る時も全然あります。

なにかの着地点(なくてもいいかもしれない)にたどり着くには
小さなことにただただ丁寧に向き合っていくだけだなぁ。

このnoteでも、
そんなごろごろ転がるおむすび状態なイマフクの、
どんな一面のどんなことでも、
何かを感じていただけたらうれしいです。



ひー!意識したのに
今回も文章がながーーい!

ではまた!

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