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言うってもコーヒーの味なんて分からないんだ

バリスタが入れるコーヒー屋さんが増えた。特に売るもののない我が下町でやたらに増えた。
サードウェーブってことば、何年か前に流行ってたけど、すっかり耳にしなくなった今も、コーヒー屋さんはひっそりと生活に溶け込んでいる。いや、潰れた店もあるけど。

コーヒーの歴史は征服の歴史、
植民地の歴史、
プランテーションの歴史、
破壊と搾取の歴史であるが、
コーヒーを飲む身としてはそんなこといちいち気にしていられない。コーヒーを飲まないと禁断症状が出るからだ。

私はコーヒーの味がよく分からない。
酸味が強いか、苦味が強いかぐらいはわかる。
ただそれだけなんだよね。
酸味が強くなければそれで良い。
なんなら牛乳で薄めるので牛乳の味の方が気になる始末。

バリスタの難しい入れ方の違いとか
ネルドリップなのかペーパードリップなのかステンレスのメッシュでドリップしたのか、
コーヒーバッグをヤカンに入れて紅茶の様に煮出したとしてもわかるまい。
ブルーボトルのラテもバイロンベイのフラットホワイトも私には同じである。

ワインにしてもそうだ。
フルボディか酸味が強いかぐらいしか正直わからない。ディスクリプションに書かれている様なシトラスの香りやら、マスカットの風味やら、アルコールに掻き消されて微細なセンサーが反応しない。いや最初から持っていないのかもしれない。

それでも私は人並みに何かを語る。
語るなら大いに得意である。感覚とリンクしなくとも、語彙と文脈を駆使して評価のペン先を急き立てる。お店が書いてくれた評価に沿った描写を別の言葉でそれっぽく言い換えてみる。

家ではドリップ用のおしゃれなガラス瓶と、特殊なドリップペーパー、それから口の細いヤカンも用意してみたけど、コーヒーの土手を崩そうが崩さまいが、雑味が入ろうが入るまいが、舌馬鹿の前では春の夜の夢の如し。

面倒だからタリーズの濃縮コーヒーに全部変えた。全然問題なく日々を過ごせているので舌馬鹿には敵わないと言われそうである。

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