見出し画像

芋煮読書会「女を書けない文豪たち」を振り返る

2023年は ゆっくりしたいな…と思い、自分主催の予定は作らず、いろいろ整理したつもりでした。
でもどうしても気になる本が。しかもこれは1人でなく誰かとじっくり読み進めたい。。
その本とは…イタリア出身の日本文学研究者、我らが「イザベラさん」こと
イザベラ・ディオニシオ著

『女を書けない文豪(オトコ)たち
〜イタリア人が偏愛する日本近現代文学〜』

角川書店

年明けの1月からtwitterスペースにて、毎週土曜日の午後2時〜、1章ずつ感想を述べ合うオンライン読書会を開きました。


そもそも何故この本に惹かれたのか。
それは、私が学生の頃に遡ります。国語の時間が好きでした。文学に憧れていて。でもどうしても“文豪作品”になると違和感を感じていたのです。理由はわかりませんでした。とにかく心から浸れないでいた…引っかかるものを抱えたまま大人になってしまったんです。

この本の存在を知ったのはtwitterのタイムラインでした。書評に目を通す度に興味が湧き、どうしても読書会を開きたくなってしまいました。
いつもSNSでお世話になっている方々に声をかけ、試し試し「芋煮読書会」が始まりました。(これは私のアカウント名から一文字とったのと、「議論を煮詰める」意味を込めたものです)

目次

はじめに
第1部
 恋に恋してるだけ
 泣き止めばケロッとするオトコたち
元カノって、忘れなきゃダメですか
─森鴎外『舞姫』─

ママの呪縛
─徳冨蘆花『不如帰』─

妄想こそはオジサンの生きる道
─田山花袋『蒲団』─

第2部
 結局のところ、俺様が主人公
 意識高い系の憂鬱に悩むオトコたち
大人のこころの謎解き
─夏目漱石『こころ』─

妖婦は男性によって創られた
─谷崎潤一郎『痴人の愛』─

男性重視はどうにも隠せない
─太宰治『ヴィヨンの妻』─

女を・棄てた・遠藤周作
─『わたしが・棄てた・女』─

第3部
 とことんウザい
 いつまでも諦めないオトコたち
ロマンチック・ラブという「病」
─尾崎紅葉『金色夜叉』─

「新しい女」まで後一歩は本当か?
─菊池寛『真珠夫人』─

ほんとうに怖い恋愛の話
─江戸川乱歩『人でなしの恋』─

おわりに

以上の内容を、全10回の読書会として3ヶ月間、がんばりました。
(共同ホストを引き受けてくださったnocoさん、関口さん、ありがとうございました。この場をお借りして心より御礼申し上げます。)


今年も折り返し、半年になろうというのに、1月に始めたことをなぜ今 note にまとめようと思ったのか。それは、録音していた「芋煮読書会」を、アーカイブにアクセスしやすい形にしておきたかったのです。(最近すこし問い合わせがありました)

スタート当初は読書会に名前もなく、打ち合わせもせずに、当日ぶっつけ本番で開催していました。回を重ねるうちに、前もって注意点を確認するミーティングを持ったり、ハッシュタグで探しやすいよう「 #芋煮読書会 」と命名したりして、全て“やりながら”進めていきました。
オーディエンスの皆さまにも支えられ、小規模でしたが、毎回とても温かく深く掘り下げる内容で楽しかったです。


私はやはり、文豪作品の「女性」の扱われ方・描写に“違和感”を感じていたのです。そしてそれは私だけではなかった。読書会での皆様がいろいろな角度から一緒に考えてくださり、私が言葉に表せなかった気持ちを掘り起こしてくださいました。違和感の正体や輪郭が見えてきて、長年、私の心にかかっていた霧はやっと晴れたのでした。

海を越えてやってきた熱烈な「日本文学ファン」、イザベラさん。鋭い分析をユーモアあふれる言葉でくるみ、私たちが気づかなかった「本の楽しみ方」を教えてくれました。日本文学への深い愛があるからこその楽しい本でした。
当時の日本の人々がどんな風にこれらの作品を読んだのか、想像しながら、素直に「おもしろがる」。そして現代の私たちの感覚と対話する。歴史的背景も知りたくなるし、人と話題にしても楽しい。

…直感的に読書会を開いてしまった私でしたが、今振り返っても「やってみて良かった」と思っています。 いつも「“これは”と思う“本ありき”」なので、次に何が自分に訪れるかわかりません(笑)
時にはしんどい思いもします。でも一生懸命に「何か」と(誰かと)向き合う・対話する経験というのは学びがあり意義深く、普段は口にしにくいことも、読書会でなら話し合うことができます。(これはとても貴重で大切なことです)

人と本の話をしていると、沢山の興味深いお話が聴けます。私の中からもいろんな疑問や考えが“芋づる式”に湧き起こってきます。そしてそれを許してくれる、聴いてくれる仲間がいる。。幸せだな…と感じます。


感想が長くなってしまいましたが、下記にアーカイブを載せておきますので、お時間ある際に、どうぞゆっくりお聴きください。なかなかにフリーダムです(笑)1回1回が長尺ですが、この本を知らなくても、そしてそれぞれ原典を読んでいなくても楽しめるように、わかりやすく進めたつもりです。
(twitterスペースがいつまでアーカイブを残してくれるのか心配ですが)

聴いてみての感想などありましたら是非お寄せください。今後の参考にいたします。最後までお読みくださり、ありがとうございました。

🌿imo



アーカイブス】🎧
①はじめに/森鴎外『舞姫』


②徳冨蘆花『不如帰』
※「マンモーネ(母親至上主義)」という言葉を初めて知りました…(´ω`)


③田山花袋『蒲団』
 キーワード:におい
(※この回からキーワードを設定)


④夏目漱石『こころ』
 キーワード:謎の胸キュン


⑤谷崎潤一郎『痴人の愛』
 キーワード:ファンタジー


⑥太宰治『ヴィヨンの妻』
 キーワード:平行線


⑦遠藤周作『わたしが・棄てた・女』
 キーワード:「わたし」は誰?

(この作品に激しく落ち込みましたが後に『沈黙』を読み遠藤周作先生に対する気持ちが何とか修正されました笑)


⑧尾崎紅葉『金色夜叉』
 キーワード:ブレンド


⑨菊池寛『真珠夫人』
キーワード:犠牲
※これ迄も度々、妄想が膨らみ過ぎて「芋づる式○○論」なるものが登場。今回はとうとう「芋づる式“マドンナ”論」に発展(洋楽ポップスターの方)
「芋づるってる」等、造語も後に誕生(笑)


⑩【最終回】
🕊️
江戸川乱歩『人でなしの恋』/おわりに
キーワード:執着
※怖い・・・最終回がこれ?というモヤモヤは「おわりに」を読み大団円

※☘️twitterでは、ハッシュタグ
#芋煮読書会  
#女を書けない文豪たち
で検索してみてください。


【出版社リンク先】
※「はじめに」と「森鴎外/“舞姫”」の試し読みができます!📖



【時代背景の参考になった本】
『生きづらい明治社会〜不安と競争の時代〜』
(松沢裕作/岩波ジュニア新書)

※特に第6章をお勧めいたします!
(第六章〜「家」に働かされる─
─娼妓・女工・農家の女性/売買される女性・非正規雇用の女性/公娼制度/芸娼妓解放令/「自由意志」という建て前/「家」とは何か/「家」のために働く女性/女性の抑圧のさまざまな形)

※コメント欄へ『生きづらい明治社会』について語り合ったtwitterスペースのアーカイブを添付してあります。ご興味ある方はそちらも是非お聴きになってみてください☘️


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?