見出し画像

今さら聞けない、体組成計のあれこれ : 正しい測定方法

新年あけましておめでとうございます!
あっという間に2023年を迎えましたが、いかがお過ごしでしょうか。

年が明け、心機一転してジムに入会したり、ウォーキングやランニングを始めたりする方も多いでしょう。運動を習慣づけるとき、体成分を測定して自分の努力を確認するのはモチベーション維持に役立ちます。最近は、体組成計が一家に1台あることも珍しくなく、自宅で気軽に筋肉量や体脂肪量を測定することができるようになりました。
 
業務用InBodyも家庭用体組成計も、測定方法は同じ生体電気インピーダンス分析(BIA)法を採用しており、体内に微弱な電流を流すことで体成分を求めています。そのため、測定方法が正しくないと、体成分の変化を正確に追うことは難しくなります。今回はInBodyを含む全ての体組成計で共通する、測定に関する注意事項をお話しします。ご自身の体の変化を正しく確認するために、是非参考にしてください。

測定してはいけない方

心臓ペースメーカーのような植え込み型医療機器、もしくは生体情報モニタのような生命維持に必要な医療機器を装着されている方は測定しないでください。BIA法を用いる体組成計は測定中に微弱な電流を体内に流しているため、体内の機器が何らかの影響を受ける恐れがあります。また、心電図など生体情報のモニタリング中に測定すると、電流が生体信号と一緒に拾われるのでモニタの波形が一時的に乱れてしまいます。BIA法で使用する電流は人体に対する安全性が証明されており、長年活用されているにも関わらず全世界で1件の医療事故も報告されていない極めて安全な測定方法です。そのため、間違って上記のような方を測定してしまったとしても慌てることはなく、様子を見ていただき次回からは測定しないようにしてください。

測定前の注意事項

InBodyをはじめとする全ての体組成計は最初に体水分量を測定し、それを基に筋肉量や体脂肪量を算出しています。そのため、常に体内で循環している体水分量を正確に測定することが、他の測定値の精度に直結します。正確に測定するためには、測定前の注意事項を守っていただくことがとても重要で、InBodyの公式YouTubeチャンネル内の動画でもご紹介しています。

ここでは、動画内で挙げている注意事項をいくつかピックアップしてご紹介します。
立位で測定する場合は5分くらい起立してください
長時間横になっていたり、座ったりした状態から測定を行う直前に立ち上がると、体内の水分が重力の影響で下半身に移動します。姿勢を変えた直後の水分移動は平常時よりも激しく、測定値に影響を及ぼしてしまうため、水分の移動が落ち着くまで5~10分ほどの安静時間を取ってから測定します。
 
運動後・シャワーや風呂後の測定を控えてください
運動や風呂などで体温が上がると血流が良くなり、安静状態の体水分に比べて体水分の移動が激しくなり、測定値に影響を及ぼします。正確な測定結果を得るためには、血流が落ち着いた状態(運動前・シャワーや風呂前)での測定を心がけましょう。
 
測定前は食事を控えて、トイレを済ませてください
電流が流れない位置に存在する水分は、水分として測定されないため筋肉量には影響しませんが、重さは体重に影響を及ぼすので、体脂肪量として測定されます。消化器官に残っている飲食物、体内に残っている便や尿、妊婦さんのお腹の中の胎児や羊水などがこれに該当します。そのため、測定前はできる限り胃腸や膀胱内を空っぽの状態にすることで体脂肪量をより正確に把握できます。また、食事直後は消化器官の動きが活発になることで測定値が影響を受ける可能性があるため、食後に測定する際は消化器官の動きが安定するまで最低2~3時間空けて測定するようにしましょう。
※妊婦さんの測定データについてはトピック「妊娠中の体成分モニタリング」をご参照ください。
 
皮膚が乾燥している場合はウェットティッシュで拭いてください
電極と接触する掌や足裏などが乾燥していると、体内に電流がうまく流れず、測定が正しく行われない可能性があります。その場合、ウェットティッシュで電極が触れる部分の肌を十分に湿らせてください。使用するウェットティッシュはアルコール成分を含まないものを選んでください。アルコール成分は揮発性が高いので、かえって皮膚を乾燥させてしまいます。

測定中の注意事項

今まで測定前の注意事項についてご説明しましたが、測定中にもいくつか注意すべき点があります。ここからは測定時及び測定中に注意する内容をご紹介します。
 
正確な身長を入力してください
身長は体水分の算出に必要不可欠な情報です。BIA法では体内に電流を流した際に発生する電気抵抗値(インピーダンス)と入力した身長から体水分を算出するため、正しい身長を入力しないと全ての測定値が不正確になります。
 
正しい測定姿勢を取ってください
測定中は下図のような姿勢を維持してください(機種によって測定姿勢は異なります)。特に、腕と体幹、太もも同士が接しないように気を付けてください。電流は短い距離を流れようとする性質があるため、接触している部分があると電流の経路が変わってしまい、測定値が影響を受ける可能性があります。筋肉がとても発達している方でどうしても太もも同士が触れ合う場合は、厚手のタオルのような絶縁体を挟むことで接触による影響を防止することができます。
 
測定中に動いたり、喋ったり、笑わないでください
測定中はほんの僅かな体の動きが電流の流れを乱し、測定値に影響を及ぼす可能性があります。しかし、喋らない・笑わないは意識できますが、くしゃみや咳を我慢することは難しいため、もし測定中に起こってしまった場合は再測定することをお勧めします。

普段の測定で注意していただいている項目もあったかと思いますが、今回のトピックを機にこれらの注意事項を守れていたか是非見直してみてください。実際に全ての注意事項を守ることは難しいかもしれませんが、できるだけ多くの項目を守ることで測定の精度を高めることができます。

今さら聞けない、体組成計のあれこれ
     : 測定値への理解を深めるためのQ&A


測定時の注意事項を守って測定しても、得られた測定結果に疑問を抱くこともあるかと思います。今回は、測定結果に関するよくある質問をまとめてご説明します。

Q. InBodyと他社の体組成計で測った体脂肪率が違います

体脂肪率とは、体脂肪量を体重で割った値で、体重に対して体脂肪量が占める割合を表しています。メーカーによって測定される体脂肪率が異なる理由をお話しする前に、まず体組成計における体脂肪量の求め方について簡単にご説明します。全ての体組成計は手や足の電極から体に微弱な電流を流し、最初に体水分量を求めます。それを基に筋肉量や除脂肪量(体脂肪以外の量)を求め、最後に体重から除脂肪量を差し引いて体脂肪量を求めるため、体脂肪量の変化は「除脂肪量(体水分量)の変化」もしくは「体重の変化」があった時に見られます。[藤原1] これを踏まえて、InBodyと他の体組成計で測定される体脂肪率が異なる理由をご説明します。

 

➀測定タイプの違い

InBodyと比較している体組成計は両脚で乗る測定タイプでしょうか?それとも両脚で乗って、手で電極を握る測定タイプでしょうか?前者の場合、電流は下半身にしか流れず、体幹や腕の筋肉量、全身の体脂肪量などは下半身の結果に基づいて推定されます。例えば、下半身の筋肉量が多い方が脚だけ測定するタイプを使用すると、体幹や腕の筋肉量も脚と同じくらい多いと見積もられ、全身の筋肉量は実際よりも過大評価されます。一方で、下半身と比べて上半身の筋肉量が多い方が同じ測定タイプの体組成計を使用すると、全身の筋肉量は実際よりも過小評価されます。そして、体脂肪量は体重から除脂肪量を差し引いて求めるため、筋肉量(除脂肪量)が正しく測定できないと体脂肪量も正確に求めることができません。

筋肉の発達度合いは部位毎に異なり、更に個人差もあるため、体の一部だけを測定した情報から全身の体成分を推定するのではなく、各部位を個別に測定する必要があります。その点、InBodyは業務用・家庭用共に、全身を四肢と体幹に区分して測定しています(家庭用のInBody Dialの測定結果は、全身情報のみが提供されます)。[金 イスル2] 

※詳しくはInBodyトピック「BIA技術の限界と克服 Part1: 技術の黎明」もご覧ください。

 

②測定値算出方法の違い(統計補正の有無)

測定タイプがInBodyと同じであっても、他の体組成計とInBodyは大きく違う特徴があります。それは統計データで測定値を補正している点です。これを統計補正と呼びます。

統計補正とは、入力した年齢・性別・人種などを考慮した固定値を体成分の算出式に組み込むことです。InBody以外の体組成計は全て、この統計補正を使用しています。例として、若者は高齢者より筋肉量が多い、男性は女性より筋肉量が多いなどの統計データが体成分の算出式に組み込まれているため、同一人物を測定しているにも関わらず、機器に入力する年齢・性別情報を変えたり、測定モードを変えたりするだけで結果が変わってしまいます。このように、統計補正を使うと算出された体成分は一般的な傾向と似たような値として算出され、測定者の本来の体成分が100%反映されなくなってしまいます。統計補正を使用している体組成計かどうか判別する方法は、年齢・性別情報を変えたり、測定モードを変えて連続で測定し、体成分が変化するか確認してください。同一人物で何も変化していないのに筋肉量が増減することに違和感を覚えると思います。
統計補正は一般的な体型の方の測定精度を高めることを目的に取り入れられた技術であるため、一般健常者のデータを用いることが多いです。しかし、同じ年齢・性別の方でも体成分が全く同じ人はおらず、統計データによる補正はかえって誤差として測定結果に影響を及ぼしてしまいます。更に、統計補正は入力した情報によって測定値がある程度固定されてしまうので、筋肉量や体脂肪量の変化を敏感に追うことが難しくなります。
 
一方、InBodyは統計補正を使用しておらず、電流を流した際に測定される電気抵抗値(インピーダンス)・身長・体重の3つの情報のみで測定値を算出しているので、測定者のありのままの体成分を知ることができ、僅かな体成分の変化も敏感に追うことができます。
 
③着衣量の設定
使用された体組成計は着衣量を設定できるものでしょうか?業務用InBodyは事前に着衣量を設定することができ、自動的に測定体重から設定した重さが差し引かれます。しかし、この設定ができない体組成計を使用したり、着衣量以上の上着や装飾品を身に着けていたりすると、その分体重が重くなり、その差は体脂肪量として反映されます。正確に体脂肪量や体脂肪率を測定したい場合は、着衣量を考慮してできるだけ身軽な状態で体重を測定することをお勧めします。

Q. InBodyはメジャーを使わずに、どうやって腹部や腕の周囲長を測定していますか

InBodyは電気抵抗値(インピーダンス)と身長から体水分量を算出しますが、これを詳しく説明すると、入力した身長を基に四肢・体幹の長さを求め、身体の各部位をそれぞれ凹凸のない均等な円柱と見立て、その体積(体水分量)を計算します。この過程で得られた円柱の円周を基に周囲長を算出しています。しかし、各部位のくびれの位置は個人差があり、インピーダンスだけではその位置を特定できないため、メジャーによる実測値とInBodyの推定値が一致しない方もいます。[後藤1] 但し、メジャーによる実測は測る人によってメジャーを当てる位置や力の入れ具合が異なるので、値にバラつきが出る可能性があります(ヒューマンエラー)。しかし、InBodyの周囲長はインピーダンスという人為的に変えられない値から算出しているため、数値の変化をモニタリングする形で活用できます。

Q. 筋力がアップしたのに、筋肉量が増えません

確かに、筋力と筋肉量はある程度の相関がありますが、変化が同時に現れるわけではありません。筋力は比較的短期間の筋トレでも効果が期待できて変化もすぐ現れますが、筋肉量は十分な栄養摂取によって筋肉の重さを増やす必要があるため、どうしても変化が現れるまで時間がかかります。運動を始めて間もない頃は筋力と筋肉量の変化の違いに違和感を覚えるかもしれませんが、運動と食事管理を継続することでどちらも増加させることができます。

Q. 一日のどの時間帯に測定した方がいいですか

体内の水分は常に循環しているため、朝・昼・夜それぞれの測定値が変化するのは当たり前です。また、午後になると体水分は重力の影響で下半身に移動する傾向があるため、測定は比較的水分分布が一様である時間帯の朝~午前中が望ましいです。

最も重要なことは毎回の測定条件をできる限り揃えることです。例えば、初回のInBody測定が夕方だった場合、次回以降も同じ時間帯に測定することで筋肉量や体脂肪量の増減をより正しく確認することができます。もし、次回の測定を午前中や昼食後などに変えてしまった場合、筋肉量や体脂肪量の変化が水分分布の変動や直前の食事の影響によるものか、運動の成果によるものかの判断が難しくなってしまいます。

 何気なく測定することが多い体組成計ですが、普段の運動や食事管理の成果を正しく確認できるよう、今回のトピックを是非参考にしてみてください。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?