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通勤途中、歩きながらふと見上げると山側に虹が出ていた。見た瞬間、その人のための虹だと思った。その人の誕生日の朝に、私に撮られてアップロードされるための虹。自分が手掛けたわけでもない自然現象を携帯電話で撮影しただけで、私はプレゼントを買ってきれいにラッピングを終えた気分になっていた。 私たちはお互いのハンドルネームぐらいしか知らない。メールアドレスさえ、まだ使えるのかどうかわからない。去年のはじめから停まったままの、その人のSNSをときどき見に行く。作品がアップされている
屋根が雨に打たれる音を聞く。シトシト、でもなくザァァ、でもなく、バケツをひっくり返したような、という状態の擬音が思いつかなくて、やっぱり今日もザァァ、とバカみたいに繰り返す。 もうすぐアジアの各地は雨季に切り替わる季節になる。もう、雨季に入ったところもあるだろう。チェンマイも、つい数日前まで気がおかしくなりそうな暑さだったのに、この2〜3日は過ごしやすく、つい日焼け止めを甘く塗ってしまう時間が続いていた。 夜、雨が降ることが増えた。といっても朝は止むし、「え、ぼく雨なんか
今や、ありとあらゆる下着メーカーがこぞってTVCMを流していることから、男性であっても女性用下着メーカーやブランド名をいくつか挙げられる、という人は少なくないと思う。 AKB48とコラボした下着が某ブランドから発売された時は、下着屋にファンが殺到し本来の客たちを大困惑させた、というニュースはなかなか衝撃的だった。 しかし、下着のCMやポスター、ホームページなどには、たいてい国籍不明のスタイルのいいモデルが起用されている。 日本人の場合は、年齢不詳の、なぜか厚化粧のモデルが多
4年前、正式な離婚届を夫、息子と3人で役所で提出。離婚という言葉を使うのがイヤで私は、 「結婚を卒業した」 と、言った。 24歳で駆け落ちした時は、情熱的で向こう見ず、若かったせいで、世界は自分を中心に回っていると夢見るばかり。入学先にいたのは古参のお義母さん。そのお義母さんの家の一角で、絵ばかり描いて、家にお金を入れない夫に代わってワインバーを始めた。初めての経済活動は楽しかったけど、義母の事業の失敗で店を抵当に取られ、移転の憂き目に。そこから更にもう一店舗、他にも事
今は亡き母方の祖父母が好んで訪れた京都の伏見稲荷神社を母が初詣の場所に選んだのも、何か思うところがあってのことだろう。 大晦日に母より正月を一人で過ごすことになったと連絡があった。 てっきり兄夫婦の元で新年を迎えるものと思っていたのだが、兄も家庭を持つとお相手の実家の事情も出て来る上に、長男長女同士の結婚ともなるとなおさら色々とあるらしい。 「あんたが帰ってきてくれてよかった」 神社の最寄駅からの参道の道すがら、母は笑いながらそう言った。 仲見世では新年の名物であ