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陽海



春のことも
想って、高く
掲げた手から零れたものが最後まで
片方の手に
握られていた種に降る雨と共に流れる、きょう
選んだ言葉の さびしさに触れた
その眼で、あした描くことになる
花が
寝息を立てている、
満たすための夜を両翼にうずめて、
滅びた言葉が包み込んでいた、人の
痕跡に耳をあてている、ここに生きた人の
思い描いた人は、人だったのか、
目的を
伏せて乗り込んでいる、同じ言葉に、
人に、
立ち止まる、幻の風が
擦り抜けて、
集まろうとする光の、一点が
希望のように見えるとき、どこを
見ていたのか、本当は分からない あの瞳の
みなもに 真っ直ぐに沈んで行ける
予感が生きて、唇から昇る泡沫、僕は
見送る静かな体温で思い出す、
冷たい
汗になるまで待った朝の
声に隠れて回る鍵の音、殻の中から
聞こえてくる花の羽音がもう
飛んでいる空の
色が毀れて はるかな未来は
この海に降る      






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